皆さん、こんな人をご存じでしょうか。部屋に入ってくると、コロンの雲(たいていはかなりひどいもの)がたちまち空間を満たし、あなたの息を詰まらせる男性…。こうした状況で意識しないことは不可能であり、極端な場合は彼が去った後もコロンが強く残ります。
皆さんは、そんな男性にはならないように気をつけてください。
ですがきっと、そこで疑問が生じることでしょう。「なら、コロンの正しいつけ方とは?」と。 そう、フレグランスをつける方法はたくさんあります。髪にスプレーする方式やクラウド方式(目の前に香水をスプレーし、その中を歩く方法)、そしてパルスポイント方式(身体の脈拍がとれる箇所にローラーを押し当てて転がす方法)など、どれも間違いではありませんが、万能ではないかもしれません。
そこで私たちは、調香師や香りの専門家にアドバイスを求めました。これをコロンのつけ方ガイドの決定版と思っていただくよう願っています。
[目次]
「ルールがない」と言ってルールのリストを始めるのは、少々不謹慎ですが…フレグランスのように個人的なものに関しては、実際にそのとおりと言えます。「フレグランスは本当に個人的なものであり、香水をつけることに関しては私は教条主義には反対です」と、フレデリック マル(Editions de Parfums Frederic Malle)の創設者であるフレデリック・マルは言います。
フレグランスがひとつのものであるとすれば、「何を身につけるか? どのように身につけるか?」はその人次第だということ。「私は一般的に、ルールが好きではありません」と、調香師でキリアン パリ(Kilian Paris)の創設者であるキリアン・ヘネシーも同様に言います。そして、「個人的には、キスされたいところに香水をつけるべきだと思う」とも…。これはなんだか納得してしまいました。
コロンをつけるときに誰もが抱く最大の疑問は、「どれくらいがつけすぎなのか?」ということではないでしょうか。これは妥当な質問ですが、そう簡単に答えられるものではありません。
「何が多すぎるか少なすぎるかは、もちろん非常に個人的なものですが、私は幸せなちょうどいい量というものがあると思っています」と、フレグランス開発者でアーキスト(Arquiste Parfumeur)の創設者であるカルロス・フーバーは言います。「個人的には首に2回、背中に1回、両腕に1回、最後に胸に1回スプレーします。6回スプレーすることになりますね」と自身の実践法を教えてくれました。
しかし、それが彼にとっては効果があっても、誰にとっても効果があるとは限りません。理想的なスプレーの回数を見つけるには、試行錯誤が必要かもしれません。香りが目立ちつつも、強すぎないようにしたいもの。では結局、どこにスプレーすればいいか? と言えば、「香りを嗅いで楽しめる場所につけてください」と彼は言います。
自分に合ったスプレーの数がわかったら、その数を覚えておいてください(書き留めるのもいいでしょう)。「香水をつけすぎる人がよくいますが、それは数週間香りをつけ続け慣れ親しんだ香りは、次第に感じなくなる傾向があるからです」と、フレデリック・マルは言います。家の中の匂いを鼻で嗅ぐようなもので、しばらくするとあまり(あるいはまったく)気にならなくなるということ。
その解決策は、「自分にとってその香りがまだ強いかどうか? に関係なく、同じ量のスプレーにこだわることだ」と彼は言います。なぜなら、コロンが変わったのではなく、あなたの鼻が変わったのだから…。
問題を複雑にするわけではありませんが、あなたがつけているフレグランスの種類によって、理想的なスプレーの回数が変わることがあります。特に毎日同じコロンではなく、日によって香りを変えたい場合は特に注意が必要です。
フレグランスはその濃さによって、オーデパルファム、オーデトワレ、オーデコロンなどに分類されます。これは、つけたときにどれだけ香りが強くなるかを示します。濃いほうから、オードパルファム⇒オードトワレ⇒オーデコロンになります。 それにより、香りの持続時間も変わります。
※それによって、香りの持続時間も変わることも忘れずに。一般にオードパルファムは4~6時間、 オーデコロンとオードトワレは1~3時間ほど。とは言え、医薬品等の製造や販売などに関する規制を定めた法律「薬機法」での分別はなされていないため、 一括して香水という分類にくくられています。
キリアン・ヘネシーは、次にように言います。
「オーデコロンはエッセンスの濃度が低く、揮発性も高いので、好きなだけスプレーしても香りが強すぎることはあまりないでしょう。オーデトワレはもう少し濃厚で、オーデパルファムはさらに濃厚です。濃度が高いものほど、つける量は少なくて済むでしょう」
手首にコロンを吹きかけて、こすり合わせる人がいます。しかしカルロス・フーバーによれば、「それはやめましょう」とのこと。
「手首から別の手首に香りを移すために軽く撫でるのはいいのですが、決してこすってはいけません。フレグランスの分子を『傷つけ』て『押しつぶす』ことになるからです」
「衣服にスプレーをかけるべきではない」というのは、古い考えかもしれません。「私はなるべく肌の近くところに香りをつけたいほうですが、決して直接はつけません」と、イソップ共同調香師のバルナベ・フィリオンは言います。
「私にとってフレグランスは、服の上から始まります。衣服に香りをつけると、2、3日後に香水が残っていることに気づくことが好きなのです」とも言います。
「目の前に香水をスプレーして、香りの雲の中を歩く『クラウド方式』なる、間違った理論があります」とキリアン・ヘネシーは言います。「私はこれを理解することができません。自分自身と同時にカーペットにも香りをつけたいと思っているのでしょうか。私はやらないほうがいいと思います」とも。
コロンの濃度とともに、その成分によっても、「その香りがどれくらい長持ちするか?」がだいたい予想できます。「柑橘系や軽いフローラル系は長持ちしませんが、ウッド、樹脂、インセンスやバニラのようなバルサム(樹脂)系は長持ちします」と、カルロス・フーバーは言います。ただし、コロンの香りを長持ちさせるため、必ずしもスプレーでかける必要もありません。
加えて、「水分のある肌は香水を長持ちさせます」とフレデリック・マルは言います。ローションやモイスチャライザーなど同じ香りの別製品を使うことで、香りの持続性を高めることができるということになります。また、香りは体温により肌の上でより早く蒸発するので、服にスプレーするのも長持ちさせる秘訣となるでしょう。
ここでは、スプレーについてたくさん話してきました。が、もちろん全てのコロンがスプレータイプというわけではありません。もしあなたがオイルや固形のコロンに興味があるなら、少し違ったつけ方をする準備してください。
「パフュームオイルは成分の濃度が低いことが多く、軽い香りが特定の部分に集中します」と、バルナベ・フィリオンは言います。「肌に直接つけるのが一番効果的です。手首や首筋など、肌が温まっているパルスポイントにつけると香水が蒸発して、香りが適度に放出されます」と、フレデリック・マルはアドバイスをくれました。また、カルロス・フーバーは、「ヒゲがある方の場合はヒゲに。また、ボタンフロントのシャツを着ている場合は、胸元につけることも…」とすすめています。
Translation / Kotato Tsuji
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です