Izumi Kimura
木村泉美
1968年、2月2日生まれ。東京都出身。3歳のときに富山の祖母の元に預けられ、この地で育つ。高校卒業後、土木関係など幾つかの職業に就いた後、29歳で鮨の世界へ入る。30歳で独立。2度も店を潰すが、諦めることなく鮨道を邁進。今やミシュランの星を持つ名店に。
文/森脇慶子
[食ジャーナリスト]
今回で8年目を迎えたクリュッグと単一食材とのペアリングプログラム。ぶどう畑の個々の区画を尊重するというクリュッグの哲学から生まれたこの企画、今年のテーマ食材は“ライス”。これが、六本木「リューズ」×富山「鮨し人」のコラボイベントの口火となった。
「今年の食材は米と聞いたときは、正直、戸惑いました。米って私たち日本人にとっては主食というだけでなく、アイデンティティとでもいうべき特別な存在。身近な食べ物なだけに難しい。むしろ、欧米のシェフのほうが野菜の一つとして米をフラットに見られる」とは、クリュッグアンバサダーの一人、飯塚隆太シェフ。
このとき、頭に浮かんだのが同じアンバサダーの木村泉美氏。独学で鮨をマスターし、ミシュランの一つ星を獲得した希代の鮨職人である。
「米といえば、日本料理や鮨の領域でしょう。それで、木村さんに声をかけたわけです。彼とは4年前に一度コラボした経験もあり、とても楽しく仕事ができた。機会があれば、またやりたいと思っていたところ、今回のテーマが米と聞いて、コラボをするなら今しかないと思ったんです」
もとより飯塚シェフの料理の大ファンの木村氏は、即、快諾。そこにクリュッグ側からの協力もあり、かくも贅沢なコラボレーションディナーの実現がかなったわけだ。
8月某日、久しぶりに木村氏を訪ねて富山まで足を向けた飯塚シェフ。だが、コラボの打ち合わせはほどほどにグランド・キュヴェと米の話に花が咲き、ふたりのクリュッグ愛が炸裂した。
Ryuta Iizuka
飯塚隆太
1968年11月20日生まれ。新潟県出身。辻学園日本調理学校を卒業後、「第一ホテル東京ベイ」「ホテルザ・マンハッタン」を経て、1994年、「タイユバン・ロブション」の部門シェフに就く。1997年に渡仏。星付きレストランで修業後、帰国。2004年「ラターブルドゥジョエル・ロブション」のシェフ、2005年「六本木ラトリエドゥジョエル・ロブション」のシェフを歴任後、2011年「レストランリューズ」を開店しオーナーシェフとなる。
「白米にシャンパンってけっこう合わせづらい。酸やうま味を足さないとなかなか寄り添わないんだけど、その点、クリュッグは別。グランド・キュヴェは懐が深いので、炊きたての白飯にミネラルたっぷりの塩をかけただけでも合いますね」と飯塚シェフが言えば、木村氏も「僕にとってクリュッグは気品のある女性のイメージ。そこに、フレッシュな魚を使う鮨って、恋愛関係としては非常に面白い出会いなんだけれど、でも、結婚はできないって感じですね(笑)」と語る。
その木村氏が、今回グランド・キュヴェに合わせたのが天然本鮪の大トロの握りと藁焼き。なかでも脂ののった大トロの藁焼きはSDGsを意識した意欲作だ。
「うちで使う新米は、義父が精魂込めて作ってくれた米。だから、稲藁(いねわら)も無駄にしたくはなかった。そこで、藁焼きをやってみることしたんです」、そう熱く語る木村氏。
あぶったのは、鮪の大トロ。これを冷まして提供するのが木村流だ。それも、しっとりした身を口にした際、冷めた鮪が口中で温められるにつれ香り立つ風味とうま味の余韻を楽しんでほしいから。ボディのあるグランド・キュヴェとも見事に拮抗する。
一方、新潟出身の飯塚シェフも毎年、故郷まで稲刈りに行くほど米への造詣は深い。だが、そこはフレンチの料理人、米を飯として出すのではなく一捻り。炊いた米を乾かして揚げ、鮪のムースをトッピング。お米が軽やかなアミューズに変身した。
「家でよく米を炊くんですが、鍋の底におこげが残る。それを有効活用できないかと思った」
鮪も刺身では使えぬ尾の身をムースにすることで使い切る等々、フードロスへの取り組みは飯塚シェフにとって既に当たり前のこととなっている。フレンチと鮨。ジャンルは違えど、食材に対する思いは同じ。両者をつなぐ懸け橋の一翼を、クリュッグ グランド・キュヴェが担っている。
開催場所/レストランリューズ
東京都港区六本木4‑2‑35
アーバンスタイル六本木 B1
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応方募法/電話予約のみ
TEL 03‑5770‑4236(Ryuzu)
日程/2022年12月1日(木)、
12月2日(金)
時間/12月1日(木)はディナー
18:30開場、19:00スタート
(20名〜22名さま限定)
12月2日(金)はランチ
11:30開場、12:00スタート
(16名さま限定)
料金/ディナー10万円、
ランチ8万円(共に税・サ込み)
料理/
あべこべ寿司
Amuse‑Buche
もち米で作ったお粥を乾燥させ、さらに揚げた煎餅状態にしたライスに鮪の尾の身で作ったムースをのせ、ガリ代わりの赤玉ねぎのピクルスをトッピング。サクサクのライスとフワッととろけるムースの取り合わせも絶妙だ。ほのかなカレーの香りが食欲を刺激する。こちらのアミューズは2022年12月1日(木)、2日(金)に開催されるコラボイベントで実際に食すことができる。
2022年10月15日(土)発売の雑誌『Esquire THE BIG BLACK BOOK FALL / WINTER 2022』に同梱された「Krug × Rice Book」には、このレシピが掲載されているので料理も挑戦してみてほしい。
シャンパーニュ/
クリュッグ グランド・キュヴェ
170 エディション
2014年に収穫された力強いピノ・ノワールを中心に構成されたクリュッグ グランド・キュヴェ170 エディション。従来のエレガントで多様な芳香の中、ナッティでいて雄渾なうま味が広がります。クリュッグ グランド・キュヴェ 170 エディション3万8940円【公式サイト】(MHD モエ ヘネシー ディアジオ TEL 03‑5217‑9736)
KRUG
公式サイト