テロワールへの情熱と
蒸留所の歴史への敬意が
表現されたウイスキー

スコッチウイスキーの聖地と言われるスコットランドのアイラ島に、1881年に創業したシングルモルトウイスキーの蒸留所ブルックラディ。1994年に一時閉鎖されましたが2001年より再開され、今も創業当時の設備を使った伝統的なウイスキー造りが行われています。アイラ島で造られるウイスキーと言えば通常はピートが使用され、ピート香と呼ばれるスモーキーな香りが特徴。ですが、ブルックラディではピートを使わないウイスキーも造るといった、革新的な一面も持っている蒸留所です。

ウイスキー造りにおいてブルックラディが重要視しているのは、ウイスキーが造られる場所や原材料といったテロワール*⁴。そのため、大麦はスコットランド産のものを100%使用し、ボトリングに至るまでアイラ島で行われます。貯蔵やボトリングを島外でする蒸留所もある中、ブルックラディがそれを行わないのは「人を大切にする」という考えの現れでもあり、雇用の機会を創出することにもつながっているそうです。こうした取り組みや環境に配慮したウイスキー造りが評価を得て、2020年には(環境や社会への配慮が認められた公益性の高い企業に与えられる認証)Bコーポレーション認証*⁵も受けています。

現在、ノンピートの「ブルックラディ」、ヘビーピートの「ポートシャーロット」、非常にピーティーな「オクトモア」の3種類が展開されていますが、4月15日(月)より新たに長期熟成の新商品が登場します。それが「ブルックラディ 18年」「ブルックラディ 30年」です。

ブルックラディ 18年
Bruichladdich
「ブルックラディ 18年」
ブルックラディ 30年
Bruichladdich
「ブルックラディ 30年」

「ブルックラディ 18年」は主に、蒸留所復興後にバーボン樽で熟成されたストックの原酒を使用した、ブルックラディ初となる18年熟成のシングルモルトウイスキーです。原産地を徹底して追求しており、具体的な大麦品種から熟成樽の正確な情報に至るまでが追跡可能になっています。

アイラ島産、有機栽培、スコットランドのメインランド産の大麦を使用し、前出の元バーボン樽で熟成された原酒に少数のソーテルヌ樽とポート樽熟成の原酒とヴァッティング*⁶し、ボトリング前の9カ月間マリッジ*⁷させるとのこと。ブルックラディのシングルモルトが持つ繊細な果実味と、フローラルの特徴も見事に表現できたということ。

一方の「ブルックラディ 30年」は、1989年、1991年、1992年に蒸留された原酒を100%バーボン樽で熟成。つまり、蒸留所の閉鎖中も2名のスタッフに見守られながら、静かに熟成を続けられていたウイスキーになります。リフィルホグスヘッド*⁸で50%の満期熟成がなされ、それを20年後に新鮮なバーボン樽へと移し替えられます。これら全ての樽の原酒を、ボトリング前の3カ月間リフィルバーボン樽でマリッジさせるというもの。世代を超え受け継がれてきた伝統的な製法を使用し、100%バーボン樽で熟成…その仕上がりは繊細かつ洗練を極め、ブルックラディならではと言える「新鮮なアイラ海の空気感」が感じられるということです。

さらに、ボトルとパッケージにも特筆すべき点が…。ボトルはリサイクルガラスが平均60%含まれる新しいガラスボトルを採用。そして、パッケージ(カートン)はボックス状ではなく、まさに革新的。ボトルの形状に沿って、ぐるりと巻かれています。その素材はグリーンエネルギーを使って造られた紙製のもので、木材パルプはFSCまたはPEFC基準の認証を受けた持続可能な森林経営を行っている森林から調達しているそうです。もちろんラベルも実にモダンでスタイリッシュなデザインで、同日リリースされる2本は色違いで表現されています。

このようにブルックラディが目指し続ける伝統と革新の融合、その新境地へと絶妙なバランスでいざなわれた「ブルックラディ 18年」と「ブルックラディ 30年」。これを機会に、この稀有なる長期熟成ウイスキーを手に取って飲み比べてみてはいかがでしょうか。

ブルックラディのカバー
Bruichladdich
外装カバーには、独自の加工でロゴや文字をあしらっています。

◇「ブルックラディ 18年」商品概要
価格/2万円(希望小売価格)
アルコール度数/50度
容量/700ml

◇「ブルックラディ 30年」商品概要
価格/
25万円(希望小売価格)
アルコール度数/43度
容量/700ml

[脚注]

*1:Islay スコットランド西部ヘブリディーズ諸島の一部をなす島で、特にシングルモルトスコッチウイスキーの生産で世界的に有名。島は強烈なピート香と海の塩味が特徴的なウイスキーで知られており、多くのウイスキー愛好家から高く評価されている。Google Earthで見る。

*2:Single Malt Whisky 麦芽大麦を原料とし、一つの蒸留所で生産されたウイスキー。この定義は特にスコットランド産のウイスキーに適用され、"Single"は一つの蒸留所からのウイスキーを意味し、"Malt"は麦芽(特に大麦の麦芽)を使用することを指す。

シングルモルトウイスキーは、その蒸留所ごとに独自の特徴や風味プロファイルを持っており、地理的な位置(例えばこの「アイラ島」、地域を流れるスペイ川(River Spey)に由来する「スペイサイド」、さらに北部から南部、東海岸から西海岸にかけての広大なエリアを指す「ハイランド」など)によっても風味が大きく異なる。味の違いに関してはご自身でぜひお調べを。

*3:Peat 長い年月をかけて湿地帯に蓄積された植物質の残骸からなる有機物で、日本語では「泥炭」とも呼んでいる。これらの植物質は水分によって酸素が遮断され、完全には分解されずに蓄積されていく。ピートは主にエネルギー源として利用されることが多く、特にスコットランドやアイルランドでは伝統的に暖房や調理に使用されてきた。

ウイスキー製造においては、ピートは麦芽を乾燥させる際の燃料として用いる。ピートを燃焼させることで発生する煙によって、乾燥過程で麦芽に独特のスモーキーな風味が付加される。ピートの風味はその原料となる植物質の種類や採取地域によっても異なり、ウイスキーに地域特有の味わいを加える要素となる。例えば、海岸近くで採取されたピートは塩味やヨードのニュアンスをウイスキーに加えることがある。毎年5月の第3土曜日に開催される「WORLD WHISKY DAY」の当該ページを参照(2024年は5月18日)

*4:Terroir もともとは「土地」を意味するフランス語「terre」から派生した言葉で、ある特定の地域の土地、気候、土壌、栽培方法などの総合的な環境が、その地域で生産される農産物や飲料の独特の風味や特性にどのように影響を与えるかを指す概念。もともとはワイン業界で使用されることが多かった用語だが、現在ではコーヒー、チョコレート、チーズ、ウイスキーなど他の多くの農産物や飲料においても重要視されている。

*5:B Corp Certification アメリカの非営利団体「B Lab」による国際認証制度。厳格な評価のもと、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる。公式サイトを参照

*6:Vatting 異なる原酒を混合して新たなウイスキーをつくり出すプロセス。この用語は、主にシングルモルトウイスキーの複数の樽を混ぜ合わせる際、または異なる蒸留所からのシングルモルトを組み合わせてブレンドモルトウイスキーつくる際に使用されり。その目的は、樽ごとの微妙な味の違いを組み合わせることで、より複雑でバランスの取れた風味プロファイルを持つウイスキーを生み出すこと。 MASTER of MALTの当該ページを参照

*7:Marriage 異なる樽の中で熟成されたワインやウイスキーを混ぜ合わせることで、一貫した風味や特定の風味プロファイルをつくり出すプロセスを指す。このプロセスは、特にウイスキー製造において一般的で、複数のバッチや異なる年代、時には異なる蒸留所のウイスキーをブレンドして、望ましい風味や特性を持つ最終製品をつくり出すために行われる。WHISKY Magazineの当該ページを参照

*8:Refill Hogshead “refill(リフィル)”とは日本語で「詰め替え」を意味し、前に1度または複数回ウイスキーまたは他の酒類(例えば、シェリー、ポートワインなど)を熟成させたことのあるホグスヘッド樽のこと。リフィル樽を使用することで、新樽に比べて木材からの風味が控えめとなり、ウイスキーにより繊細な味わいや複雑性をもたらすことが可能とされる。また“hogshead(ホグスヘッド)”とは液量単位のことで、アメリカでは63ガロン(238.48リットル)になる。その容量が約225リットルから250リットルの樽を「ホグスヘッド樽」と言い、スコッチウイスキーの熟成に最も一般的に使用される樽の一つ。