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※本記事は、アメリカ人のライターが寄稿しているため、彼の視点で日本のウイスキーについて述べています。また、一部のウイスキーは日本で販売されていないため、ご了承ください。
最近では、優れたジャパニーズウイスキーを手に入れることは驚くほど困難になっており、高価になることもあります。例えば「山崎12年」は、以前ならそこまで高くない値段で入手できました。が現在では、在庫を持つあらゆる酒屋で少なくとも3倍以上の値段です。
では、ジャパニーズウイスキーはなぜこれほど高いのでしょうか? そして本当に、それほどの価値はあるのでしょうか?
後者の疑問への答えは、「イエス」です。ジャパニーズウイスキーはたいてい美味しく、ウイスキーづくりの精神という面で近いシングルモルトスコッチとは、全く違う味わいになります。しかしながら前者の疑問に答えるは…いくらかの説明が必要となります。
米カリフォルニア州サンディエゴに先日オープンした、バーのハントレス(Huntress)とルミ・バイ・アキラ・バック(Lumi by Akira Back)でバーテンダーを務めるショーン・ワード氏は、両店の棚に相当な数の希少なジャパニーズウイスキーを並べてきました。ワード氏によれば、ジャパニーズウイスキーは深刻な供給不足にあり、ここ数年で価格は倍になったと言います。ただし日本産のブレンデッドウイスキー(複数のシングルモルトにグレーンウイスキーを加え、より味の調和を図ったウイスキー)については入手しやすくなっており、この多くが素晴らしいものだと言います。
数年前、ジャパニーズウイスキーは海外で爆発的な人気となり、蒸留所はこのブームに不意をつかれることになりました。熟成させたジャパニーズウイスキーの在庫は激減しており、サントリーのような企業は需要に対応するために若い原酒も活用したノンエイジ・ウイスキー(熟成年数のはっきりしないウイスキー)の発売を余儀なくされています。
もちろん、ここにはご都合主義的な狙いも大いにありそうです。と言うのも、自社のウイスキーがどれほど希少かという話は、腹立たしいほど最高のマーケティングツールにもなり得るからです(ウイスキーで言えば、「パピーヴァンウィンクル」が良い例です)。いずれにしても供給不足は本当のことであり、ジャパニーズウイスキーは現在、間違いなく希少で高価になっています。
ジャパニーズウイスキーの特別さについて、ワード氏はいくつかの重要な要因を指摘しています。
「水と気候、そして職人です。はじめに蒸留所によって異なるどの水も非常に良質です。つぎに日本の気候はスコットランドより夏が暖かく、ウイスキーに異なるフレーバープロファイルをもたらしています。最後に、誇り高き職人たちの存在です。彼らはウイスキーづくりというアートを極め、完璧なウイスキーをつくり上げるために生涯を費やしているんです」とワード氏は語ります。
というわけで、ジャパニーズウイスキー探しを諦めてはいけません。
十分な資金と忍耐力があれば、今でもエイジステートメント(熟成年数表記のある)・ボトルは見つかりますし、より新しく手に入りやすいブレンデッドウイスキーも豊富ですので…。
今回は、入手が容易なものから不可能に近いものまで、1度は飲んでみるべきジャパニーズウイスキーを11銘柄紹介します。
サントリーウイスキー「季(Toki)」
まずは最近、最も入手しやすいジャパニーズウイスキーから紹介しましょう。そのウイスキーとは、サントリーの「山崎」と「白州」、「知多」の蒸留所のモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドした「季(とき)」になります。
サントリーによれば、このウイスキーは「白州」のホワイトオーク樽のモルトウイスキーと「知多」のグレーンウイスキーを主な「柱」としており、「山崎」のホワイトオーク樽およびスパニッシュオーク樽のウイスキーを加えていると言います。このようにしてできたのが、極めてライトな味わいのウイスキーなのです。日本で非常に人気のあるハイボールで飲むべきウイスキーながら、ストレートで飲んでも悪くはありません。もちろん、「白州12年」に匹敵するようなものではありませんが、時代が変わった今、私たちは新たな現実に向き合う必要があります。
1万3946円(アマゾン販売価格/税込)、amazon.co.jp
※日本未発売
ニッカウヰスキー 「カフェモルト」
ウイスキーにあまり詳しくない人にこの銘柄のことを言及すると、昼飲みのためのコーヒーフレーバーのウイスキーについて話していると思われるかもしれません。そこで、事実関係をはっきりしておきましょう。「カフェモルト」(サントリーに並ぶ日本の大手ウイスキーメーカーのニッカがつくっています)は1830年に、非常に効率的な蒸留機を発明したアイルランドのイーニアス・カフェの名にちなんでつけられています。
「カフェモルト」は大麦麦芽100%を原料に、カフェ式蒸留機(通常はトウモロコシ、小麦などの穀類と麦芽を原料として発酵させ、連続式の蒸溜機で蒸溜するグレーンウイスキーに使用されます)で蒸留することでバーボンのような味わいが加わっているのです。
さらにバーボン樽で熟成されたこのウイスキーは、キャラメルとバニラの豊かな香りといったスムーズな口当たりが特徴となっています。
このウイスキーには姉妹品のグレーンウイスキーもありますが、どちらか選ぶなら「カフェモルト」がおすすめです。
6480円(税込価格)、nikka.com
サントリーウイスキー「白州18年」
サントリーの白州蒸留所は、東京から数時間の南アルプスの森の中という非常に美しい場所にあります。
「白州」のラインナップの中でも、熟成年数18年のシングルモルトは極めて優れたウイスキーであり、果実やモルトの新鮮な香りに加え、ほのかにスモークとドライチェリーの香りも漂います。
運良く手に入ったのなら、独り占めしたいと思うほどの最高のウイスキーです。12年、25年ものの「白州」も間違いなく素晴らしいものですが、18年ものは熟成過程の中でベストなものと言えるでしょう。
2万7000円(希望小売価格、税込)、suntory.co.jp
大石「Ohishi Whisky」 シングル シェリーカスク
米を原料にしたウイスキーには尻込みする人もいますが、日本のいくつかの蒸留所では、まさにそんなウイスキーがつくられています。
こういったウイスキーを「単なる度数の高い焼酎」と否定する声もありますが、日本のライスウイスキーは実際、とても手間のかかるお酒であり、特に熟成過程には様々な配慮が必要です。
球磨川沿いに位置する大石酒造場は2種類の米(五百万石ともち米)を原料にウイスキーをつくっています。この原酒はシェリー樽で長期間(具体的な期間は明かされていません)熟成されることで、最高のジャパニーズウイスキーと呼ぶにふさわしいほど豊かでフルーティーなウイスキーとして誕生しています。
62ドル(約6820円)~、 flaviar.com
※海外での販売のみ
サントリーウイスキー「山崎12年」
「山崎12年」は、米国で手に入るサントリーのウイスキーの中でも一番有名なものかもしれません。とは言え残念ながら、この定番ウイスキーも手ごろな値段で入手することは、ほぼ不可能になってしまいました。
このウイスキーはフルーティーな香りに加えて、ほのかにドライスパイスが感じられ、フィニッシュには樽香の余韻が残ります。
「山崎12年」はさまざまな樽で熟成されており、数々のフレーバーがしっかりとリハーサルをしたオーケストラのように、バランス良くまとまっています。これらのフレーバーがお互いに補完し合うことで、単純な足し算ではなし得ない素晴らしいウイスキーになっているのです。
ジャパニーズウイスキーに関心がある人なら、一度は飲んでみるべき定番の1本です。
8500円(希望小売価格、税込)、suntory.co.jp
ニッカウヰスキー「シングルモルト 余市」
ニッカの「余市」は、北海道沿岸の余市蒸留所でつくられています。
このウイスキーにはライトでフローラルな香りに加え、石炭直火蒸留という手法で加えられたスモーキーさがあります。また、余市蒸留所は潮の香りにも言及しており、これはスコットランド沿岸部の多くの蒸留所と同じです。実際に微かな潮の香りがあり、熟したピーチなどの甘く豊かな香りにうまく調和しています。
基本的にはサントリーの熟成ものウイスキーに比べれば、ニッカのノンエイジ・ウイスキーは入手しやすくなっています。どちらがいいかについては、一度に両方をたくさん飲んで決めるしかありません。
4536円(参考小売価格、税込)、 nikka.com
サントリーウイスキー「響17年」
ジャパニーズウイスキーづくりにおいては、ブレンドこそがもっとも重要な技術かもしれません。フレーバーと全体のバランスには細心の注意が払われ、一部の蒸留所では最終製品にブレンドするための様々なウイスキーがつくられています。
サントリーのブレンデッドウイスキーである「響」は、1989年に生まれたものであり、現在5つのラインナップがあります。ノンエイジの「響 ジャパニーズハーモニー」なら、おそらく入手できることでしょうが、最高なのは17年ものです(また、21年あるいは30年ものの「響」よりもわずかに手ごろです)。
芳醇でクリーミー、さながらバターのようなこのウイスキーには、キャラメルとほのかなピーチの香りがあります。ブレンデッドウイスキーのイメージを変えてくれるような1本です。
販売休止中
ニッカウヰスキー 「フロム・ザ・バレル」
サントリーにばかり、いい思いをさせるわけにはいかないからでしょうか、ニッカもノンエイジのブレンデッドウイスキーづくりに乗り出しました。幸いにしてできたのは、オークとアップルの香り、チェリーとほのかなセイボリースパイスの味わいがある、本当に美味しいウイスキーでした。
このウイスキーは、様々な樽で熟成させた100以上のモルトウイスキーとグレーンウイスキーを原酒に使用しており、ブレンド後に樽詰めしてさらに数カ月間貯蔵することで、原酒同士を馴染ませています。
ジャパニーズウイスキーの未来に希望を与えてくれる、入手しやすい1本です。
2592円(参考小売価格、税込)、nikka.com
イチローズモルト「秩父 ポートパイプ」
秩父蒸留所は2008年、東京から約1時間の場所にあった羽生蒸留所の原酒を引き継いで創業されました。この蒸留所は国内の他の蒸留所に比べれば小規模ですが、そこでつくられるウイスキーは、非常に素晴らしいものです。
歴史の浅い蒸留所であることを考えれば、驚くほどさまざまなウイスキーがつくられています。が、中でも1番は「秩父 ポートパイプ」です。
このノンエイジのシングルモルトウイスキーは、ポートワインの空き樽を熟成に使用しており、甘くなり過ぎることなくキャンディのような風味が加わっています。このウイスキーは間違いなく入手が困難ですが、秩父蒸留所は他にも飲んでみるべき多くのウイスキーを発売しています。
また、東京オリンピックがある2020年には、10年もののウイスキーを発売する準備を進めているそうです。
在庫なし
マルス「岩井トラディション」
マルス信州が誇るのは、標高約800mという日本一の高地にある蒸留所です。米国ではあまり馴染みがない蒸留所かもしれませんが、この地でのウイスキーの蒸留の歴史は1940年代までさかのぼります。
このブレンデッドウイスキーは、シェリーとバーボン、ワインの樽を使用して豊かなスパイスやバニラ、ほのかなピートのバランスの取れたフレーバーをもたらしています。
複雑さや風味の豊かさという意味では、一番と言えるウイスキーではありませんが、入手しやすくリーズナブルなジャパニーズウイスキーです。
2160円(希望小売価格、税込)、hombo.co.jp
ホワイトオーク「あかし シングルモルト」
このシングルモルトウイスキーは、バーボンからシェリー、ブランデー、ワイン、焼酎に至るまで、様々な樽の原酒をブレンドしています。また、海に近いホワイトオーク蒸留所でつくられることもあり、ほのかな潮の香りが加わっているとのこと。
もし、潮の香りが感じられなかったとしても、ウイスキーが熟成された様々な樽に由来するタフィーや核果のフレーバーが混じり合った、興味深い1本であることは間違いありません。
これらのあらゆる香りは、しっかりしたモルト香をベースに絶妙に調和しています。
3900円(税込価格)、amazon.com
From Esquire US
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。