スキンケアライン『ヒューマンレース』が新しく開設したInstagramのアカウントは、わずか24時間で2万5000人以上のフォロワーを集めました。このことは、音楽プロデューサーやファッションデザイナーなど幅広く活躍するファレル・ウィリアムスが2020年11月25日にローンチした、このユニセックスなスキンケアラインが好調であることを証明する数字でもあります。

 ファレルはコレボレーションやプライベートレーベルに関して、すでに熟知した人物でもあります。自身のアパレルラインも持っており、アディダスとコラボスニーカーをリリースしたりしてきました。つまり彼は、これまでにある程度の知識や経験を持っており、このわずか3種類しか展開していないスキンケアラインが成功するかどうか彼は自信を持っていたはずなのです。

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 ファレルのように、自身の職業とは全く関係のない商品で、ビジネスの多様化をはかったセレブは他にもいます。デビッド・ベッカムが良い例でしょう。ファッションに高い関心を持つベッカムは、自身のメンズビューティーライン「House99」を持っています。

 またクリスティアーノ・ロナウドは、植毛クリニックのおかげで「美容専門家」になったもう一人のサッカー選手と言えます。ロナウドがスペイン(マドリード)にオープンした植毛クリニック「Insparya」は、薄毛に悩む多くの人々を救っています。

 ほぼ50歳で30代のような綺麗な肌を持つファレルのスキンケア事情は、たびたび話題に挙がっていたので、音楽の領域で活躍する彼がスキンケアの秘密を明かす理由はわかります。しかし、薄毛とは程遠そうなサッカー選手のロナウドが植毛クリニックを立ち上げるというのは、少々不自然な気もします。

 それでも、「有名人の名前を使用すればそれなりに成功する」という理論があるとすれば、それがどんなブランドでも通用するのでしょうか?

 ブランド開発戦略に強い、独立コンサルタント会社「Nadie」の創設者であるキコ・ヴィダル(Quico Vidal)氏と話をし、この現象が商品の最終消費にどのような影響を与えるかについて説明していただきました。

 「以前は単なるブランドイメージとして、一時的に働いていた有名人たちでしたが、今度は自分たちが生み出した資本を活用し、それを自分たちで管理・運用することに気づいたと言っていいでしょう。そのメリットを深く理解した有名人たちが、それを最大限活用しようと合理的な構造をつくり上げたのです。そのため今では、独自のビジネスを始めているわけです。クライアント、フォロワー、ファンたちに、いわばアイドルである彼らと直接的なつながりである商品を提供することで、より現実的でより具体的な交流ができているという錯覚とも言える、有名人との疑似的交流によるワクワク感と共に商品およびサービスを提供しているのです」と、ヴィダル氏は解説します。

 クリスティアーノ・ロナウドは、彼自身が販売する商品を欲するユーザーであるという理由からではなく、「需要が高いもの」というマーケットのターゲティング的理由から植毛クリニックの事業を選択しました。さらに、この分野で最も厳しいと言われている国の1つであるスペインを選択したことにも、成功の理由があるとヴィダル氏は言います。

 「クリスティアーノ・ロナウドのような場合は、ビジネスが基本です。私は、最低限のエクスペリエンスデザイン(ユーザーが製品やサービスを利用する過程など)について話しているのですが、これは純粋に戦術的なビジネスと言えるでしょう。その持続可能性、即時性を超えた先を見据えたビジネス能力は、非常に優れたものと言えますね」とヴィダル氏。

 一方、ベッカムの場合についてヴィダル氏は、こう話しています。

 「これはプロ意識と優れたスキルで個人資産を管理するという、非常に特別な例と言えるでしょう。英国のポップカルチャーは多くの商品やサービスに優れており、管理やデザインも稀な品質を備えていますので」とのこと。

 しかしながら、「ユーザーは、セレブが手掛けるすべてのものを信じる傾向が下降傾向にある」と警告もしてます。それらは間違いなく、はじめに「魅惑的」で「盲目的」なものとして注目を浴びるでしょう。ですが今日では、「評判」は非常に強い力を持っており、「魅惑」と「盲目」の目を覚ましてしまうような、執拗で分析的で批判的な声もすぐに現れるからなのです。それはまるで、「ブランドと有名人との関係は常に有益である」ことなど、ヴィダル氏が信じていないことと同じように…です。

 さらにヴィダル氏はこう言っています。

 「しかし評判というものは、とても明確かつ直接的にブランドの個性を構築することにも役立ちます。ほとんど多くの商品やサービスが、社会的およびメディアである程度のイメージが構築されているかわかるでしょう。または、どのようなものか予想ができるものです。なので評判というものは一方的な意見ではありますが、優れたブランドイメージにもなり得るわけです。ですが、それが一挙に悪い方向へとシフトする場合もあります」と、彼は警告します。

 さらにこう説明を加えてくれました。

 「キャラクターの魅力が、商品やサービスを二極化するのです。その魅力が時間とともに衰えたり、もしくはセレブ自身が個人的または専門的な間違いを犯した場合、それは前向きな認識を歪め、それを信用の失墜または拒絶にさえ一変してしまう可能性があるのです」とのこと。

 おそらく、このことを察知しているファレル・ウィリアムズや他の有名人らは、(良い)名声が続く間、このシステムを利用し尽くそうと心に決めているのでしょう。

Source / ESQUIRE ES