ソーシャルメディアを頻繁に利用している皆さんなら、このトレンドはもうお気づきでしょう。ここ最近、顔写真変換アプリ「フェイスアップ」を使った投稿が急増しています。ツイッターやインスタグラムは、まるで映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(ブラッド・ピット演じる主人公が80歳の老人の姿でこの世に生まれてくるストーリー)を思い出させるような、「老け顔」投稿であふれているのです。

 このアプリは2年前にローンチされていますが、「老け顔」加工機能が人気を呼んでおり、再びブームになっているわけなのです。ただよくあるように、バイラル(広く拡散された)効果の反動として、このアプリ「フェイスアップ」に警戒する動きも出ています。

 ツイッターでは、このアプリがロシア・サンクトペテルブルクのワイヤレスラボ社が2017年に製作したアプリであること、そして、その利用規約には利用者の写真をその会社が所有することが示唆されているとして問題視する投稿で盛り上がっています。
 
 他のアプリ同様に「フェイスアップ」を利用する際には、アプリが写真へアクセスすることを許可するかどうか聞かれたうえで、その写真が「AIによる最新鋭のフォトエディター」によって加工されるようになっています。現在流行っているのは、このアプリの最新機能による「老け顔」加工です。ですが、このアプリの利用規約の文言とアプリの開発企業の国を不安視する声がメディアでも報じられるようになりました。米『ニューヨーク・ポスト』紙では、「ロシアは今や、あなたの老け顔写真をすべて保持している」との記事を出しています。 
 
 しかし実際には、「フェイスアップ」のプライバシー・ポリシーは特に変わったものではなく、その他の多くの天気予報アプリやヘルスケアアプリと同様のものとなります。デジタルメディア「VICE」は、次のような記事を掲載しています。

「無防備な利用者からデータを収集することや、当人の預かり知らぬ場所でそのデータを販売したり共有したりすること、プライバシー・ポリシーをわかりにくくしてそのような行為を正当化すること、これらの行為はほぼ至るところで行われています。このことは、もはや「冷戦恐怖症」に似た存在とも言えるでしょう。嫌悪の対象はロシアでも米国でもないのです。これは資本主義における基本的な現象なのです。企業は利益も得られないのにアプリを無料配布などしません。利用者としては、データを活用することで利益を得ているのですから…」

 テックメディア「TechCrunch」に対し、このアプリの開発企業は「ほとんどの画像はアップロードの日時から48時間以内に削除される」と説明しています。 
 
 「フェイスアップ」のウェブサイトによると、同アプリの利用者は現在8000万人超ということですが、現在懸念が広がっているのは、いかに企業が私たちのデータを売買しているかということではなく、「ロシア政府がこの老け顔セルフィーを悪用しているのではないか?」という考えが根底にあるからです。 
 
人気アーティスト、ドレイクのフェイスアップ画像:  

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 これはロシアに限りません。あらゆる企業が、個人情報を収集しているのではないかとの懸念も広がっています。そして、その背景には当然理由があるわけです。

 中国は少数民族を監視するために顔認識システムを利用していると言われておりロシアは米大統領選をめぐり英データ分析企業のケンブリッジ・アナリティカやフェイスブック広告と深く関わっていたとの疑いが持たれています。ですので、利用者が企業の情報利用を警戒するのも無理のないことなのですが、問題はもっと複雑です。 
 
 このようにデータが持つ影響力は大きなものですが、情報リテラシーの効果もまた大きなものです。セルフィー不安に駆られる前に、自分のスマホを確認して、自分の情報がどれほど流出しているのかを把握しましょう。

 皆さんのスマートフォン(以下、スマホ)のOS(オペレーティングシステム)がアップルの「iOS」なら簡単です。まず「設定」を開き、ページの下までスクロールすると、スマホに入っているすべてのアプリが表示されるので、気になるアプリをクリックしてください。そして、そのアプリにどのような情報へのアクセスを許可しているかを確認しましょう。それでも不安なら、そのアプリの利用規約を読むことが真相解明の第一歩となります。 
 
 現時点での最大の解決策は、自分の画像や情報をリスクにさらしたくなければ、アプリを使わないことです。さらに、自分のセルフィー(自撮り)や情報が不安な状態であると思ったのなら、ツイッター、インスタグラム、フェイスブック、グーグルのプライバシー設定をすべてチェックすることになるのです。結局、フェイスブックに写真をアップロードしタグ付け機能を使えば、それも顔認識を使っているということなのですから…。これらの巨大IT企業に対し、我々がどれだけの個人情報へのアクセス許可を与えているのか…その実情を知ったら皆さんもきっと驚くことでしょう。 
 
 こうして、この「老け顔」アプリ流行は、私たち利用者に個人情報に関する懸念を喚起してくれたのです。そしてさらに、再確認とも言える「気づき」も与えてくれました。それは…「老化に備えるのなら、毎日の保湿と日焼け対策は大事」ということです。

 

 
 

From Esquire US
Translation / Keiko Tanaka 
※この翻訳は抄訳です。