• オーストラリアでは、ソーラーパネルの「大量買い」が起きており、関連企業への問い合わせが4倍に増加しました
  • 再生可能エネルギーの貯蔵システムには、従来のディーゼル発電機を補完したり、これに取って代わる存在となる可能性もあります。

 オーストラリアでは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)を受けて、ソーラーパネルの買い込みが行われています。ニューサウスウェールズ州の太陽光発電企業「スマート・エナジー」は新たなプレスリリースの中で、同社への問い合わせが過去2週間で4倍になったことを言及しました。世界的危機の中での電力不足やインフラの緊急事態などを懸念した、大量買いが起こっていることが示されています。

 この現象は、これまでになかったものなのでしょうか? スマート・エナジー社は再生可能エネルギー向けの貯蔵ソリューションを販売している企業なので、通常は電力網からの独立を目指している人、あるいはその準備をしたがっている人が顧客になっていることでしょう。

 その意味では、一般大衆が慌ててソーラーパネルを購入していることは、今までにないことです。とは言え、自分たちの電力網にもしものことが起こることを恐れている人々なら、このような準備はしたくなるはず。彼らは、通常の電力網に何かが起こったときでも電気を使えるようにしておきたい…ただそれだけなのです。

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オーストラリア・メルボルンのスーパー「Super AIG」の屋根には、ソーラーパネルが設置されています。

 非常用電源として、ソーラーエネルギーを選択する方が増加している…という事実は新しいことです。一部の民間人や病院などの重要な施設はこれまで、ディーゼル発電機やバッテリー発電機を主な非常用電源として保有してきました。ソーラー発電機を現実的な非常用電源として使うためには、安定的に太陽光にアクセスできる環境、あるいは発電したエネルギーを夜間や曇りの日にも使えるよう貯蔵する手段が必要です。

 ちなみに自動車と同じように、ディーゼルとソーラーを組み合わせたハイブリッド発電の仕組みもあります。

 2020年の現在、ディーゼル発電機はあまり見栄えのいいものではありません。ですが、これらは緊急事態における効率的かつ信頼のおける電源であり、数十年にわたって重要な役割を果たしてきました。

 ディーゼルが支配する市場で、太陽光がシェアを伸ばし始めていることは驚きですが、オーストラリアは世界的にも太陽光発電リソースが最も発展した国でもあるのです。

 例えば、スマート・エナジー社があるニューサウスウェールズ州は、ソーラーパネルを導入する住民にインセンティブを提供しています。また、「シドニー・モーニング・ヘラルド」紙によれば、「オーストラリアにある1300万戸の住宅のうち200万戸以上がソーラーパネルを設置している」と言います。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Solar panels on a tile roof - how your roof is sealed
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 ちなみに、米国ではソーラーパネルを設置した世帯数は200万世帯を超えましたが、これは「全体の1億2800万世帯から見ればごくわずか」と言えるでしょう。住宅へのソーラーパネルの設置率はオーストラリアの15%以上に対し、米国ではおよそ1.6%です。

 一方日本では…調査会社である富士経済がまとめた「2018年版住宅エネルギー・サービス・関連機器エリア別普及予測調査」によれば…。太陽光発電システムを設置している住宅数(ストック住宅)は2018年度に322万戸、普及率は6.0%が見込まれるということ。 

 米国には、ソーラーパネルを設置する人々に対する連邦税額控除があります。ですがドナルド・トランプ大統領は2018年1月、業界からの反対の声が強かったにもかかわらず、ソーラーパネルに30%の追加関税を課す輸入制限を4年の期間で発動することを承認。これによって国内のソーラーパネル系の業界は、大打撃を受けていたのです。

 そして今、世界は気象変動による大災害の数々や今回の新型コロナウイルス感染の拡大、さらには政情不安による石油の値上げなどなど、さまざまな困難に対し複合的に直面するようになっています。そんなときだからこそ、真に必要なものが見えてくるとも言えるのかもしれません…。

 このオーストラリアの場合は、極端な例かもしれません。ですが、これはある種の狼煙(のろし)であり、警鐘の初音とも言えるのです。つまり、今後アメリカばかりでなく世界的に、ソーラーパネルの需要はますます増えていくことが予想されます。そうした中、そのソーラーパネルの生産のほとんどは中国に頼らざる負えない現状であること注意すべき点と言えるでしょう…。

Source /Popular Mechanics
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。