現地時間2020年7月26日の朝、ポートランドに拠点を置く制作会Pattern Integrity Filmsが、「#AmericaWakeUp」と題したビデオをアップロードしました(この記事のトップにある動画)。アップされるとたちまちツイッター上で話題となりトレンド入りしました。

 動画は、さまざまなニュースの一部をつなげたモンタージュでめまいがするほどコロコロと切り替わっていきます。過密状態の病院の緊急治療室、「MAGA(Make America Great Again)」と書かれた帽子をかぶったトランプ支持者、完成に近づいている米シェール油産地とメキシコ湾岸を結ぶ「ダコタ・アクセス・パイプライン」、共謀政府の機能不全を象徴するものたちなど…それはまるで、問題の絶えない現代を表しているようにも捉えられます。その動画の上にアメリカ合衆国の政治や社会、教育を痛烈に批判する笑いで人気を博した米国のコメディアンである故ジョージ・カーリン(1937年5月12日生~2008年6月22日没)のかつての録音をのせ、現代のアメリカ人に訴えかけています。

 カーリンの言葉は、2005年のHBOスペシャル「Life Is Worth Losing」で行われた彼のスピーチを抜粋したものです(カーリンは、放送禁止用語を多用して現代社会に物言うことで有名でした)。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Life Is Worth Losing - Dumb Americans - George Carlin
Life Is Worth Losing - Dumb Americans - George Carlin thumnail
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 「#AmericaWakeUp」の動画では、「アメリカに望むものは何か、言ってみてください。それは『自由の地』ですか? 『勇者の地』ですか?」という会話から始まります。そして、こう続きます。

「政治家たちは、『皆さんには選択の自由がある』という考えを植えつけようとしているだけなのです。実際、自由などありません。選択肢というものもないのです。皆さんが所有しているのは、所有者なのです。つまり、皆さんは政治家たちに所有されているのです。そう、彼らはすべてを所有しているわけです。重要なすべての土地だって、彼らの所有物なのです。さらに彼らは企業も所有し、管理までしています。もちろん彼らは上院、議会、州議会議事堂、市庁舎を購入し、支払いをすませて以来ずっと所有しているわけです。なので彼らは、裁判官も思いのままに操れるわけです。おまけに彼らは、すべての大手メディア企業も所有しているので、皆さんが聴くニュースおよびその他の情報はほぼすべて、彼らに管理された内容なわけです」

 カーリンがこのスピーチを行ってから、およそ15年が経ちます。ですが彼のこの言葉は、まるで現在のアメリカの壊滅的な政治を上手く皮肉言っているではありませんか。そして製作したPattern Integrity Filmsは、このYouTubeビデオのクレジットに「ジョージ・カーリンにご冥福をお祈りいたします。あなたの声ほど、現在のアメリカにおいてタイムリーなものは存在しません」と記しています。

 果たして、このバイラルビデオの背景に存在する人物は誰なのでしょうか? Pattern Integrity Filmsは、「レジスタンスによる資金提供によって製作した、オレゴン市に関するドキュメンタリー映画の全編であり、Portland Inc. による提供だ」と主張しています。さらに最後のクレジットに記せられたプロデューサーは、アメリカの辛口な政治志向の短編映画を担当する2人のポートランド原住民が運営する編集会社Eleven Filmsと提携していると主張しています。

 そしてPattern Integrity Filmsは、「私たちは小さなチームであり、この世界をより良くするためにあらゆることを実行できるのです」とツイートしていました

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 世論調査ではアメリカ人の10人に8人が、「国が間違った方向に向かっている」と回答し、民主党の挑戦者(ジョー・バイデン氏)に心強い朗報をもたらしました。2020年の大統領選まで100日を切った現時点で、アメリカ政権に対して逆風を流したこの行動は、「人々の大統領選への関心を高めるために大きく貢献したことは明らか」と言えるでしょう。

 そんなアメリカで、「今後3カ月間における最大の脅威は何か?」と問われれば、こういう答えになるでしょう。「アメリカ国民の中に、現政権下での腐敗・無知・不平等を認識できない者が存在すること」になります。そうです、この動画のクロージングショットが示すように…、いまこそ「#AmericaWakeUp」すべき時期(とき)なのです。

Source / ESQUIRE US