銀行口座からPC、スマホやタブレットなどのデバイスだけでなく、各アプリケーションへのログインや自宅のホームキーまで、デジタル時代を生きる私たちはさまざまなパスワードを持つ必要があります。もちろん、生年月日や名前など安直なものではない難解なパスワードを設定しなければならないだけでなく、同じパスワードを設定すれば危険もともないます。しかし、それらをすべて自分の脳内という少し不安定な場所だけに置いておくには心細く、どこかにメモを残しているという方も少なくないでしょう。

 今回は、そんなパスワードによって人生を大きく左右されてしまったサンフランシスコに住む、ドイツ人プログラマーのステファン・トーマスさんのお話をご紹介します。きっと皆さんはこの話を読み終わった頃には、自身のパスワード管理について改めることでしょう。

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 トーマスさんはおよそ10年前に、「ビットコイン(仮想通貨)とは何か?」を説明した簡単なビデオを作成し、その見返りに7002ビットコインを受け取りました。当時、ビットコインはほとんど価値はありませんでした。そのためトーマスさんは、それを最高クラスの安全性を誇ると言われている暗号化USBデバイスの「IRONKEY(アイアンキー)」に入れ、保管することにしました。

 そして忘れることのないよう、そのパスワードを一枚のポストイットに書いておきました。しかし…、これこそが最大の過ちでした。彼はその紙を失くしてしまったのです。

 まずは5年間ほど、彼はそのポストイットをオーブンに貼り付けていました。そして次の後の3年間は場所を変え、冷蔵庫に貼り付けておいたそうです。そうして次第に、そのポストイットに何が書かれているかも忘れるほど、どうでもいい存在になっていました。

 そしてあるとき、そのビットコインが当時2億7000万ユーロもの価値へと上昇したことに気づいたときには…。もう皆さんは、この話の続きは容易に想像つきましたね。気づいたときには、もうメモは行方不明。そして彼は思いつく限りのパスワードを8回試しました。しかしどれも一致しません。その「アイアンキー」のパスワード入力失敗回数は10回まで…。最後の10回目まで間違えた場合には、この「アイアンキー」内のデータには永遠にアクセスできないようになってしまします。

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 トーマス氏は、いまでこそ「痛い思い出だよ」と語っていますが、このことに気がついたときには痛く後悔したことを、「ニューヨーク・タイムズ」紙に話しています。

 「…銀行が存在している理由を改めて再確認できました。銀行が行うすべてのことを(自分の力だけで)行うことなんてできないし、したくはないことだということを身に染みて感じました」と語っています。そして現在では、Facebookの元最高セキュリティ責任者であるアレックス・ステイモスを含む多くの人物が、このビッドコインの10%を報酬に支援を申し出ているそうです。

 7002ビットコインを2021年1月26日21時のレートで日本円に換算すれば、およそ225億8710 万円という額が額だけに、この話は衝撃的にも聞こえます。ですが実際は、皆さんが思っているよりもずっと頻繁に、このような出来事は起こっているようです。

 暗号通貨データ会社Chainanalysisによると、2021年1月現在約1400億ドル相当のビットコインが失われるか、アクセスできない状態のままデジタルウォレットに残されているそうです。2013年、ウェールズに住む男性は7500ビットコインを入れたハードドライブを捨ててしまい、その後、必死に埋め立て地を探しまわったそうです。その価値を2021年1月26日21時のレートで日本円に換算すれば、およそ242億円に達しています。

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 トーマスさんは自身のツイッターで、 「私の過ちから、他の方が何かを学びとっていただければ幸いです。バックアップを定期的に確認すること、またそれが、機能しているかどうかを定期的に確認することをおすすめします」と話しています。 

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Source / ESQUIRE IT