記事のポイント

  • 11月11日(土)からNASAは火星探査機へのコマンド送信を休止。この通信中断は11月25日(土)まで続きました。
  • この2週間の中断の理由は、地球から見て火星の位置が太陽と重なる「合(ごう)」の状態になったため、太陽の荷電粒子によって無線通信が妨害される可能性があるからということ。
  • その間、新たなコマンドは受け取りませんが、火星探査機、探査機、そして1機の小さなヘリコプターは、あらかじめ計画されたToDoリストをもとに、通信中断されていた間も状態チェックを続けていました。

火星探査中止の理由は
太陽との位置関係

11月11日(土)から1週間以上もの間、NASAは火星上の探査車「Perseverance(パーサヴィアランス:通称『パーシー』)」や先輩の(2012年に火星着陸している)「Mars Science Laboratory(通称『Curiosity<キュリオシティ>)」など、火星軌道上にいる全てのロボット・ミッションとの連絡を中断していました。ですが、心配しなくて大丈夫です、これは計画されていたことです。そしてまさにその名のとおり“忍耐強く”、ぼっち探査に励んでいたようです。

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地球と火星はおよそ2年ごとに、短い期間ですが太陽を挟んで一直線に並ぶ「合(ごう=Conjunction)」と呼ばれる状態になります(星空観察サイト「In the sky」によると、2023年11月に太陽と火星は、地球から見て天秤座があるところに並んで位置するとしていました)。すると火星は何週間も太陽のまぶしさに包みこまれることになります。よって火星にいるロボットの友人たちとの交信もとぎれとぎれに可能性大、よくてもアバウトなものになることが予想されていたからなのです。

火星との距離は通常約1億4000万マイル(約2億2500キロメートル)と言われていますが、(地球から見て)太陽と火星の位置が重なるこの時期にはその距離は大きく広がり、地球からおよそ2.5天文単位(約3億7500万キロメートル)まで伸びるとされています。これは地球が火星と太陽の間に挟まれる…火星は外惑星なので、地球から見て太陽とちょうど反対側にくる瞬間であり、「火星の接近」と言われる「衝(しょう=Opposition)」とは逆の状態になります。

ではなぜ、私たちは2週間もロボットの同朋たちとの通信を中断しなければならなかったのでしょうか? それは、太陽による干渉があるから。火星探査車のパーシーや火星探査用へリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」などが地球にデータを送ろうとすると、太陽の荷電粒子によって情報が乱れ、データが損失する可能性が大だからです。

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Mars in a Minute: What Happens When the Sun Blocks our Signal?
Mars in a Minute: What Happens When the Sun Blocks our Signal? thumnail
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またNASAが送信するコマンドも乱れることで、最悪のシナリオ…ミッション壊滅につながることも予想できたため、NASAは11月11日(土)から11月25日(土)まの間はコマンド送信を中断することを予め計画していたのです。

NASAの説明によれば、「今回の中断は、ロボットたちが長期休暇を取るという意味ではない」としていました。探査車「キュリオシティ」と「パーシー」は火星表面の監視をし続けていて、火星の周回軌道から調査・探索を行う多目的探査機(2005年8月、アトラスVロケットによって打ち上げられた)「Mars Reconnaissance Orbiter(マーズ・リコネッサンス・オービター)」と(2001年4月、デルタⅡロケットによって打ち上げられた)「2001 Mars Odyssey(2001マーズ・オデッセイ)」は通常どおり飛行を続けました(もちろん地球へのデータ送信はなしで)。

また、火星の大気を調べる探査機「MAVEN(=Mars Atmosphere and Volatile Evolution)」も大気を調査し、小型ヘリコプター「インジェニュイティ」は地上にいながら火星の砂の動きをモニターしていました。

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南カリフォルニアにあるNASA JPL(ジェット推進研究所)で火星中継ネットワーク「Mars Relay Network」のマネージャーを務めるロイ・グラデン氏は、通信中断前にプレス声明で次のように述べていました。

「私たちのチームは、数カ月かけて全ての火星探査機のToDoリストを作成してきました。今後数週間はロボットたちからの通信を聞き、状態をチェックすることはできるはずです」

火星が太陽の真後ろにあった48時間は、それらの状態チェック信号も途絶えたそうです。ですが通信再開後には、ロボットたちは無事にいつもどおりの働き方に戻ったようです。

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Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

From: Popular Mechanics