書店やAmazonで販売中のブライアン・ウォルシュ著の本『 End Times: A Brief Guide to the End of the World』で描かれているのは、小さな災害などではなく、人類を滅亡させる可能性のあるような大規模なシナリオです。
「人類滅亡や人類の未来に永久的に暗い影を落とすような可能性がある、世界規模のリスクや脅威について書きました」と、著者のウォルシュ氏は『Popular Mechanics』誌に語っています。「これまで私たちは、そのような事態を経験したことがないと言っていいでしょう。第二次世界大戦やペストでさえ、この本に描かれているような規模の危機とはほど遠いと言えるのです」と、ウォルシュ氏は加えています。
これはかなり興味深く、そして恐ろしい内容になっているようです。
15年間科学系記事の記者を務め、『Time』誌の編集者となったこともあるウォルシュ氏にいくつかのシナリオを提案し、「その状況下で人類は生存できる可能性はあるのか?」を聞いてみました。レベルは1から10までとし、1に近ければなんとか生き残れる可能性があり、逆に大きければ…それは人類存続に対しても相当マズい状況であることを意味することになります…どうぞご確認ください。
地球温暖化
世界の終わりレベル:3
地球温暖化は「世界をつくり変える」ことになり、地球はより暑く危険な星となって食料を得ることが困難な状況となるでしょう。ですが、「それでもすべての人類を死に至らしめる可能性は低い」と、ウォルシュ氏は考えています。
「完全に手に負えなくなるレベルで続いていかない限り、人類滅亡の原因になるとは考えられません」と、ウォルシュ氏は話します。
しかし、気候変動が脅威乗数であることは間違いありません。「その他の問題の要因となる可能性があります。例えば、気候変動が原因で世界がカオス状態になれば、紛争が起きる可能性は高まります。気候変動を制御しようとする試みが、裏目に出てしまうこともあり得るでしょう」と、ウォルシュ氏は続けて話しています。
そしてウォルシュ氏は、地球工学を例に挙げています。
これは非常に重要な話でもあります。
「地球に届く太陽光を減らそうとしたり、温度を制御しようとしているときに何か問題がおきた場合(例えば戦争によって中断されてしまうなど)、末端衝撃波を受ける可能性があるでしょう。そしてこれは、かなり悲惨な事態となることを示しています」とのこと…。
時間軸はウォルシュ氏にとって、重要な判断材料です。地球温暖化は何十年もかけてゆっくりと起こります。「人間は適応能力がとても高いので、絶滅の直接的な原因にはならないと思います」と、ウォルシュ氏。
しかし、地球工学に関連する事故は、急激に起こる可能性があります。「物事が急速に変化した場合、私たちにとってかなりまずい状況だと言えるでしょう」 と、ウォルシュ氏は言います。
人工知能の台頭
世界の終わりレベル:6
「人工知能はもっとも予測が難しいカテゴリーでもあります。実現されれば、大きなリスクであることは間違いありませんが…」と、ウォルシュ氏。
2014年に「人工知能は人類生存に対する脅威だ」と発言したイーロン・マスク氏のように、人工知能によって人類に終焉がもたらされることに恐怖を感じる人は少なくないでしょう。
最近もマスク氏は、「人工知能が人間よりもずっと賢くなると、知能差は人間と猫と同じレベル、あるいはそれ以上になるだろう」と話していました。
ウォルシュ氏もマスク氏と同意見で、人工知能には潜在的脅威があると考えていますが、科学者たちがそのレベルまで達することができるかどうかに疑問を持っています。
「私たちが心配しているような種類の人工超知能が実現されない可能性は、十分にあります。生物知能の本質に、機械では複製不可能な何かが隠されているかもしれないのです」と、ウォルシュ氏は言います。
いま、人工知能の開発は、多くの壁にぶつかっています。無人自動車を開発している自動車会社は、人工知能が人間の複雑な運転技術を理解するには、長い時間がかかるという事実を受け入れています。
しかし、もし高度な人工知能が実現されれば、話は違ってきます。
人間よりも賢く、しかも、思考速度が速いものを、どうやって人間が制御できるのでしょう…想像もつきません。そして、人工知能が悪の道へと走り、人類を滅ぼそうと考えたら…。「それは高速発進するでしょう」と、ウォルシュ氏は予想します。
つまり超高速で実行に移され、私たちは対抗する術を考える暇も与えられないことになるでしょう。
もう一つ、人工知能は人間を滅ぼすのではなく、ただ人間を支配したいと考える可能性もあります。人間に反論する術はなく、反抗すれば罰を受けるでしょう。ウォルシュ氏は現在の地球で、多くの動物の個体数が人間の制御下にあることを挙げ、「人間も同じ目に遭う可能性があるのが心配です」と話しています。
病気
世界の終わりレベル:2
「これは自分でも驚きました」と、ウォルシュ氏は自身のつけたレベル数を見て言います。
「病気はこれまで、何よりも多くの人間を死亡させてきた原因です。戦争や自然災害よりも、病死のほうが多い死因なのです。しかし病気の発症には、自然の進化的限界があります。例えばエボラ熱は信じられないほど強力で、感染した人の4分の3以上を急速かつ残酷な死に至らしめるような病気です。しかし、強力が故に広範囲に広がりにくいという特徴もあります。なにせ感染者が多くの人が、それを他者に感染させる前に亡くなってしまう可能性が高いからです。
一方で、麻疹(はしか)のように感染力が非常に強いけれども、命に関わる危険性は低いウイルスがあります。麻疹はとても簡単に感染してしまいますが、感染しても目や耳から出血するようなことはありませんので…」とのこと。
「病気で絶滅するかどうかは、他の動物を考えてみるといい」とウェルシュ氏は言います。特定の地域にのみ生息する動物を除いて、自然の病気が種全体を絶滅させるようなことは滅多には起こらないことが確認できるはずです。
安全でない食事
世界の終わりレベル:3
病気の感染媒体となる食べ物ですが、私たちは毎年より多くの食べ物を口に入れています。米国疾病管理予防センター(CDC)は、毎年約4800万人が食中毒で体調を崩していると推定しています。
2011年のスティーブン・ソダーバーグ監督の映画『コンテイジョン』では、病原菌を持ったコウモリの糞(ふん)をブタが食べ、そのブタが調理される際に衛生管理が行き届いていなかったことが原因で、10人に1人が死亡するというパンデミックが描かれていました。
ある科学者はこれを、「感染症の発生経緯を最も正確に描いた映画のひとつだ」とコメントしています。
ウォルシュ氏もリスクは低いとしながらも、危険であることには同じ意見ではあります。このようにリスクは、私たちが深くつながりあっている世界にこそ潜んでいるわけです。
「世界中が食物連鎖でつながりあっているのは、ある意味とても素晴らしいことです。ですがその反面、これは私たちの弱点にもなり得ます」と、ウォルシュ氏は言います。
小惑星の衝突
世界の終わりレベル:2
ヒット映画にもこれをテーマにした作品がいくつかあるので、このケースで人類が滅亡へと追いやられるシナリオをリアルに懸念している人も少なくないでしょう。
ウォルシュ氏自身もこれをテーマに考えるとき、まず最初にイメージしたのがこのケースだそうです。
「これに関する映画が多くつくられているのには、きちんとした理由があるのです。それは、映画的な演出が効果的に発揮できる内容だからです。宇宙が私たちを滅ぼそうとしていて、人間には成す術もないというシナリオは誰もが興味をそそる内容ではないですか?」とウォルシュ氏。
しかし『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』のような映画は、小惑星の危険性を誇張しすぎているかもしれません。「これまで5つの大きな絶滅の波がありましたが、小惑星の衝突が原因だとわかっているのは恐竜の絶滅時だけです」とのこと。
恐竜とは違い、人間には警告システムがあるので、仮説上では地震よりも早く小惑星の衝突を予測できると言われています。「衝突を避けるシステムも、開発可能なはずですから…」と、ウォルシュ氏は話します。
重力トラクター法や軌道を外させる、レーザーで速度を変えさせる、粉砕するなど、確かに方法はありそうですね。
火山の噴火
世界の終わりレベル:6
「火山の脅威は過小評価されています」と、ウォルシュ氏は言います。「人間が引き起こす可能性がある原因を除くと、火山が一番危険だと言えます。絶滅の波を見てみると、火山活動と何らかの関係があるものが多いのです。ペルム紀の終わりに起こった地球史上最大規模の大量絶滅では、90%の生物が絶滅に追いやられましたが、その原因は、シベリアでの巨大噴火でした」と、ウォルシュ氏は語ります。
大噴火は大量の灰と煤(すす)の雨を降らせ、大気を汚染して急速に地球を冷やしてしまいます。「大噴火は一定の期間、太陽光を遮断してしまうので地球寒冷化を引き起こす可能性が多いにあります」とウォルシュ氏。「最大15度も気温を下げる可能性がある」と予測されているので、人間は生存が厳しいでしょう。
「最後に起きた大噴火は、ニュージーランドのタウポです。それは2万6500年前でした。その前は、インドネシアのトバで7万4000年ほど前。これは意見が分かれるのですが、トバの噴火は人類を絶滅させかけたと信じている科学者たちがいます」と、ウォルシュ氏は話します。
しかも、大災害の原因となりうる他の事項と比べると、「噴火への対策用に充てられている資金は極めて少ない」と、ウォルシュ氏は付け加えています。
「アメリカ政府は噴火監視プログラムを持っていますが、宇宙防衛プログラムと比べると、その予算は3分の1程度しかありません。インドネシアのように大きな火山がある国の多くが、アメリカのような監視プログラムすら持っていないわけです。なので思いがけない事態になる可能性は大いにあります」 とのこと。
宇宙人の侵略
世界の終わりレベル:未知数
「映画でよく見る結末とは異なり、もし地球に到達できる敵対的な宇宙人がいたら、私たちは死ぬでしょう」と、ウェルシュ氏は微笑を浮かべながら話します。
そしてこう続けます、「別の銀河へ移動できるような技術は、今の人間のレベルからは到底無理でしょう。その技術まで進化させるには、まだまだ時間がかかることは明らかです。それは、現代の軍隊が石器時代の狩猟採集民を相手にするようなものです」とのこと。
もちろん、人間は長いこと宇宙を探検していますが、今のところ地球以外の惑星に生物は見つかっていません。宇宙人が存在しないという証拠も見つかっていませんが、ウォルシュ氏にとっては何も見つかっていないこと自体が不気味だと言います。
「生命が存在しうる惑星は見つかっているのに、生命は見つかっていない…つまり、ある程度の技術進歩を遂げると、この宇宙に存在する進化した生命には何かが起こっているのではないかと思うのです」と…。
つまりウォルシュ氏によると、これはフェルミのパラドックスと呼ばれるものになります。「宇宙は十分広く歴史もあるのに、生命が見つからないというのはどういうことなのか?」という疑問の先にある、デジタル化した「宇宙人休眠説」といった話です。
「生命があるレベルに達すると、自滅するのだという仮説もあります」とウォルシュ氏は続けます。「自然災害によって破壊されてしまうのを止められないか、特定の技術によって破壊されてしまっているのか。この事態を私は懸念しています。もし科学者がネクロシグネチャーと呼ばれる死滅した文明の証拠を見つけたら、それは私たちも同じ運命を辿るのだという印かもしれません」とのこと。まさに未知数の恐ろしさがあります…。
From POPULAR MECHANICS
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。