夏が終わって気温がぐっと下がった頃、赤やオレンジ、黄金色に葉の色を変えた木々の間をのんびり歩けば、最高の気分を味わうことができます。ですが、「そもそもイチョウや紅葉(もみじ)などの落葉広葉樹の葉の色は、落ち葉になる前になぜ色を変えるのか?」と不思議に思ったことはありませんか? とは言え、思ったとしても、散歩をしながらその美しさのあまり、そんな疑問を持っていたことすら忘れてしまっていた…なんてこともあるでしょう。

 そこで、紅葉(こうよう=黄葉)シーズンが訪れる前に、ここで森林生態学に関する豆知識を蓄えておきましょう。きっと紅葉の美しさを、また違った視点から見られるようになって、より楽しめるはずです。

葉の色が変わるのはなぜ?

 落葉広葉樹(自らの生育に不適な季節になると、全ての葉を落とす広葉樹)は、毎年秋になると夏らしい緑から燃えるような深紅、または暖かな黄色に葉の色へと変えていきます。これは単なる色の変化に見えるかもしれませんが、その背後にあるメカニズムはかなり複雑なものと言えます。

 ニューヨーク州立大学環境科学・林学校ドン・レオポルド特別研究教授(環境・森林生物学)は、紅葉について「基本的に2つのプロセスによって成り立っている」と説明します。

empty alley covered by foliage in autumn park, vienna, austria
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 まず秋になると、光合成(太陽光をエネルギーに変換するプロセス)に使われる葉緑体中の色素「クロロフィル(葉緑素)」が分解され、それまでクロロフィルの緑色に隠されていた黄色の色素「キサントフィル」と、オレンジ色の色素「カロテン」が目に見えるようになります。また、「アントシアニン」と呼ばれる赤い色素も秋に合成されます。

 毎年秋にこうした変化が起きるのは、「まだ夜が短い時期に気温が下がり始めることが、クロロフィルの分解を促す合図になっている」と説明します。米農務省森林局(USFS)によれば、「その主な要因となるのは、気温と湿度です」とのこと。この2つの要因は、どちらも完全に同じ状態になることは二度となく、「同じ組み合わせ」はないに等しいでしょう。つまり、「全く同じ秋は二度起こりえない」ということになるので、さらに魅力は深まります。

 また、「春の訪れが遅れる夏に、深刻な干ばつが起きる」といったことも、紅葉の始まりを数週間ほど遅らせる要因となる…と言います。

 その他、レオポルド教授によれば、鮮やかな紅葉をもたらすのは、「晴れて乾燥した日と涼しい夜」。一方、葉がきれいに色づかない原因となるのは、「曇りや雨、強風の日が多いこと、凍結が起こること」だそうです。

常緑樹の葉はなぜ色が変わらない?

 ヌマスギ(落羽松、ラクウショウ)やカラマツ(唐松)などの針葉樹の中にも、秋になると紅葉するものがあります。「ブロンズやゴールドに色を変え、それから葉を落とす」と、レオポルド教授。

 一方、クリスマスツリーをはじめとする針葉樹の葉が色を変えないのは、前述のような落葉樹が持つ色素を持っていないためだそうです。

naruko gorge in autumn, miyagi, japan
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2021年の紅葉は?

 レオポルド教授は、夏に干ばつや洪水があった場合は、紅葉が早まることがあると言います。ですがUSFSによると、「残念ながら、紅葉の時期を予測することはほぼできません」とのこと。日本の気象庁の場合、2020年は「平年より遅れる所が多いでしょう」と述べていたように、実にざっくりしたものになっています。

 そんな中、以下のような計算式があることがある気象予報士によって紹介もされています。それが、「T × 4.62-47.69(T:9月の平均気温)=10/1からの日数」なる公式。例えばT=20℃とするならば、10月1日からの日数は44.71となります。なので、紅葉見ごろ予想は「11月13日」になるわけです。皆さんもぜひ、お試しください。

Soure / Prevention


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From: Fujingaho JP