※上の写真/フィアット「500e」の背後に映る建物は、建築家の藤原徹平が手がけた「CHIFFON」。その名のとおり、シフォンケーキの専門店です。施設内にある農場の新鮮な卵とミルクを用いて丁寧に焼くケーキは、こちらの名物のひとつ。

サステナブルな循環の輪に
入っていけるクルマです

千葉県木更津市のクルックフィールズは、「サステナブルな社会を実現したい」という音楽家の小林武史さんの考えを形にした、約30ヘクタールの広大な施設です。こう書くと少し堅苦しくなりますが、広々とした敷地には畑や酪農施設がゆったりと配置され、訪れた人はそこで収穫された太陽と土の恵みを味わうことができます。

草原や公園でリラックスする人がいれば、点在するアート作品を鑑賞したり、図書館の蔵書を手に取る方もいます。農業や自然環境、芸術に思いをはせることで、自身のライフスタイルを考え直すきっかけを与えてくれる場所なのです。

a car parked in front of a house
Kenichiro Higa

そこでフィアット「500e」で出かける場所を考えたときに、真っ先に思い浮かんだのがこのクルックフィールズでした。

いまクルマは、100年に一度の大変革期だとされています。エンジン車が排出する二酸化炭素は地球温暖化の原因のひとつだと指摘され、自動車メーカー各社は近い将来に電気自動車へ移行することを表明しています。豊かな未来を迎えるために何ができるのか。そんなことを考えながら、フィアット「500e」で木更津へ向かいました。


FIAT 500eはどんな車?

a blue car on a road
Kenichiro Higa

フィアットが誇る名車、「500(チンクエチェント)」はご存じでしょうか? 1957年に誕生して以来、世界中で愛され続けているコンパクトカーです。その愛らしいデザインと親しみやすい価格で、多くの人々を魅了し続けてきました。

映画『ローマの休日』にも登場したことでも知られる「500」ですが、まさにイタリアのアイコン的存在と言えるでしょう。そして忘れられないのが、漫画・アニメ「ルパン三世」の愛車でもあること…。そんな「500」がEV(電気自動車)に生まれ変わったのが、このフィアット「500e」というわけです。ガソリン車と比べて環境負荷が低く、静粛性に優れているだけでなく、取り回しも良く街乗りの最適解とも言える車です。

真の豊かさとは何かを
考えさせられる一台です

「環境にやさしいクルマ」と言うと、「我慢をしながら乗る」というイメージを抱くかもしれません。けれどもフィアット「500e」は、そうしたネガティブな考えを吹き飛ばしてくれます。

まず、1950年代のフィアット「500」をモダンに再解釈したデザインが秀逸。ドライブフィールもコンパクトカーらしい活気に満ちたもので、このクルマのハンドルを握っていると気分が前向きになります。

高性能でも豪華でもありませんが、シンプルなスタイルの内側に豊かな体験が秘められているあたりに、新しい時代のクルマだと感じることができるでしょう。

a car on a road
Kenichiro Higa
2020年にヨーロッパでデビューしたフィアット「500e」は、ルックスこそ従来のエンジン仕様と大きく変わらないものの、全体の96%が新設計されています。電気自動車として特別に高性能ということはありませんが、スタイリッシュなデザインと市街地で扱いやすいサイズ感で、ヨーロッパでヒット中です。
the steering wheel and dashboard of a car
Kenichiro Higa
レトロな2本スポークのハンドルは、1957年に登場した“元祖”へのオマージュ。ただし、スマートフォンとの連携や自動ブレーキなど、テクノロジーは最先端です。
a view of a road through a window of a plane
Kenichiro Higa
今回の撮影に使用した車両は、屋根が開いて陽光が降り注ぐフィアット「500e オープン」。屋根のあるハッチバック仕様もラインナップします。
a seat belt in a car
Kenichiro Higa
シートは本革ではなくエコレザー。素材でも環境に配慮します。
全長×全幅×全高:3630 × 1685 × 1530mm
ホイールベース:2320mm 車両重量:1360kg
最高出力:118ps
最大トルク:220Nm
乗車定員:4名 車両本体価格:570万円
(フィアット/CIAO フィアット TEL 0120-404-053)
公式サイト

KURKKU FIELDSとはどんなところ?

a building with a curved roof
Kenichiro Higa

施設の内側で
循環型社会を実現

クルックフィールズでは、太陽光発電の電力で動くポンプで水をくみ上げ、微生物で排水を分解・浄化します。こうして調整池の水辺には、多様な動植物が育つビオトープが生まれました。

また、ニワトリや牛のふんは堆肥となって土へと返ります。つまり、自然との共生体験ができるこの複合施設の中で、持続可能な循環型社会が実現されているのです。

a group of cows in a barn
Kenichiro Higa
施設内の牛舎では、本州での飼育が珍しいとされる水牛の姿が。チーズ作りはミルク作りと一体であるという考え方から、酪農をともなった自家製チーズ工房にこだわり、職人が採れたての新鮮なミルクからチーズを作ります。
a large room with a table and food on it
Kenichiro Higa
エントランスに隣接するマーケットでは、クルックフィールズの畑で収穫されたオーガニック野菜やハーブ、地元の食材を使ったフードなどが販売されています。
a carton of eggs and a carton of milk
Kenichiro Higa

この施設が、農業と食とともに大切にしているのがアート。建築、現代美術、インスタレーション、そして音楽など、さまざまなスタイルのアートが人の心を潤してくれることを体感することができる施設なのです。

a group of red and white cones
Kenichiro Higa
草間彌生《新たなる空間への道標》施設内には草間彌生のほか、カミーユ・アンロや増田セバスチャンなど、さまざまなアーティストの作品が点在しています。
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a collage of a library
Kenichiro Higa
建築家の中村拓志氏が設計した地中図書館。地中に横たわるようにつくられた姿はまるで洞窟のようで、冒険心がくすぐられます。

▼豊かな自然のど真ん中で
サステナブルな暮らしを体験

広大な敷地内に建てられた宿泊施設「コクーン」では、自然の恵みを体感するための特別なステイが用意されています。

住所/千葉県木更津市矢那2503
営業/10:00~17:00
定休/火・水曜
TEL/0438-53-8776
公式サイト

※メンズクラブ2024年4月号より転載。掲載内容は発売日時点の情報です。現在、2024年5月号が絶賛発売中です。