RANGE ROVER EVOQUE
「自分のライフスタイルに“悪路走破性などが必要ない”とは思っても、カッコいいから欲しい…」と、スタイリッシュなデザインで見る者を魅了し、SUVに興味のなかった大勢の人たちをプレミアム・ラグジュアリーSUVへと導き、市場を活性化させたのが2012年に日本に導入された先代の「イヴォーク」です。
もちろん走りの良さも備えていたので、デザイン優先で買った方々を飽きさせることなく、好調な販売を続けることができました。その大成功に続く、新型「イヴォーク」。メーカーは悩んだはずですが、ブレずに進化させたことにまずは拍手をおくらせていただきます。
その進化とは…まず大好評だったデザインは、今の時代に合わせてリファインした程度です。
使われたのは「リダクショニズム」。昨今、クルマ関連のデザインでトレンドとなっている「引き算のデザイン」にとても似た発想です。エッジラインやコテっとした造形を極力使わず、ボディパネルの面の表情で勝負するようなもの。それを追求し、ドアハンドルがドアパネルに収納されるデプロイアブルドアハンドルを採用。ヘッドライトも妙な主張はせず、それでいて眼光鋭い超薄型マトリックスLEDヘッドライトを採用。つくり自体は派手ではありませんが、そこに堂々と存在するというデザインで、日常、どのような場面や用途でも使いやすいように洗練させてきました。そして何りも当然、洗練されているわけです。
「ランドローバーってオフロードは得意だけど、オンロードはどうなの?」と、ブランドや歴史を知っている方は、ついこのように思い込みがちです。が、事実は違います。
今は関わりないですが、一時、BMW傘下で共有プラットフォームを使っていた時代があり、そのころから乗り味は大変革しています。あの提携は見事でした。BMWはランドローバーの卓越したオフロード技術を、ランドローバーはBMWの卓越したオンロード技術を手にして、BMWは初代「X5」をつくり、ランドローバーはBMW的な走りを各車に注ぎ込んだのです。
そんなイヴォークですが、新型にはディーゼルとガソリンモデルが用意されており、どちらを選択しようとも満足度は高いです。長距離をアクティブに移動するならディーゼル。スポーティーな乗り味が好みならガソリンを選ぶとさらに幸せなはず。
最後に、何を言おうとランドローバーの強みは、1948年の生誕から追求しているオフロード性能です。その視点でも抜かりはなく、渡河水深は100mm増えて600mmに。
足回りと変速機、駆動関連を統合制御してどんな道も走破する「テレイン・レスポンス2」も採用。さらに注目は「クリアサイト グラウンドビュー」という、世界初の画期的な機能です。
詳細は上記でも触れていますが、タフな環境で驚きの威力を発揮するはず。このように表面的には、デザインに強みを置きながらも全方位的にバランスのとれた進化を遂げて新型「イヴォーク」は誕生しました。今回も、多くの人に支持されることは間違いありません。
五味さんのおすすめポイント
悪路走破性、車内環境ともに大幅進化
ボンネットが透明に? フロント下も映し出す新技術
人工知能AIが車両設定をサポートする「スマートセッティング」も興味深いですが、カメラ映像を駆使した世界初機能「クリアサイト グラウンドビュー」にも注目を。フロントグリルと左右のドアミラーに設置されたカメラ映像を合成加工して、車両下のフロントタイヤ周辺の地面が透けて見える映像をタッチスクリーンに映し出す仕組み。
ハードなオフロード走行はもちろん、キャンプやアウトドアレジャー、狭い道を走る際などに重宝しそうです。
五味康隆(自動車ジャーナリスト)
自転車トライアル世界選手権、4輪レースの全日本F3でも活躍した、ジャーナリスト。優れた運転技術と理論に基づく分かりやすい解説に定評あり。先進技術にも詳しい。YouTube「E‑CarLife」チャンネルにてクルマ情報を発信中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。