[目次]

▼ ビッグ3とは?

▼ ビッグ3で筋肉はつくのか?

▼ ビッグ3のセッティング

▼ ビッグ3のやり方

▼ ビッグ3のレップ数とセット数は?

▼ いつビッグ3を始めたらいい?

▼ ビッグ3のリグレッション


古くから多くのトレーナーによって、「ダンベルを持ち上げて“その権利を得るまで”は、バーベルに触れてはいけない」といった俗説が伝承されてきました。ですが、私たち『メンズヘルス』はここでその根拠のない説を正し、「バーベルを使ったトレーニングをしようとする人を必ずしも止めるべきではない」ということを示そうとしています。それに、バーベルを持ちたいと思っている人に対し、それを阻止する権利など誰ももっていないのですから…。

とは言え、初めてジムのフロアに足を踏み入れた多くの人は、「失敗を犯さずにトレーニングのセッティングをするのがいかに難しいか」を認識することでしょう。一人でトレーニングする場合においては、なおさらです。

そんなわけで今回は、ビッグ3のセット方法とそのやり方、そしてバーベルを使った場合におけるリグレッション(レベルを落とす)方法などの基本を詳しく解説していきましょう。経験レベルに関係なく、これを読めばきっとプロのようなリフティングができるようになるはずです。

バーベルを持つ男性
KOLOstock//Getty Images

ビッグ3とは?

ビッグ3とは、一般的に以下のバーベルを使った複合種目を指します。

  • スクワット
  • ベンチプレス
  • デッドリフト

パーソナルトレーナーでパワーリフターのヘンドリック・ファムティミ氏は、「スクワット、ベンチプレス、デッドリフトは“コンパウンドエクササイズ(同時に複数の筋肉を鍛える運動方法。多関節運動とも)の王様、女王様、王子様”です」と言います。あなたの目的が筋肉の強さ、筋力、筋肉の大きさのいずれであれ、あるいは単に動きを良くすることであれ、これらの種目はあなたをゴールへと導いてくれることでしょう。

「コンパウンド種目は、一度に複数の筋群を鍛えることができます」と、ファムティミ氏は付け加えます。例えばスクワットは下半身全体と体幹を鍛え、ベンチプレスは胸、上腕三頭筋、肩、大腿筋を鍛え、デッドリフトは身体のほとんどの部位を鍛える…ということになります。

「どれも引っ張ったり、押したり、立ち上がったりといった、日常動作に必要な力をキープするための機能的な動きになります」と、彼は説明を加えます。


ビッグ3で筋肉はつくのか?

「ビッグ3は筋肉増強に優れている」と言われています。スクワット、ベンチプレス、デッドリフトは複数の筋群を同時にターゲットにし、全体的な筋力と筋肥大を促進するも種目。プログレッシブ オーバーロード(漸進性過負荷。適切な順番に基づいて少しずつ負荷を高めていくこと)を利用した、充実したワークアウトプログラムにこれらを組み込むことは、筋肉の成長に非常に効果的と言えるでしょう。

『ジャーナル・オブ・ストレングス&コンディショニング・リサーチ』誌に掲載された論文によれば、漸進性過負荷法を採用する場合、3つの種目が筋肥大に必要とされている機械的緊張、筋損傷、代謝ストレスを引き起こす可能性があるということです。

ここで言う「漸進性過負荷法」とは、原則的に適切な順番に基づいて負荷を高めていき、負荷に順応したタイミングで少しづつ高い負荷を加えていく…といったように、パフォーマンスを高めるために必要となる筋肉への刺激を考えた、筋トレ法の根本と言えるものです。


ビッグ3のセッティング

バーベルにプレートをセットする男性
aire images//Getty Images

それでは、ビッグ3のセッティングについて解説します。

◇スクワット

  1. スクワットラックか、スクワットスタンドを選んでください。
  2. Jフック(バーベルをラックに固定するパーツで、アルファベットのJのような形)を、肩の真下の高さになるよう調整します。足を曲げたり伸ばしたりしたときに、フックに引っかからずにバーベルをきれいに持ち上げられる程度に、地面と並行で高すぎない位置に設定しましょう。
  3. バー(競技用の場合は「オリンピックバー」と言う)にバリエーションがある場合はあります。一般的には10kg、15kg、20kgと分けられていますが、おすすめは15kgか20kgから始めるのがよいでしょう。
  4. バーベルをJフックにかける前に、肩の位置まで思いきり引き上げる必要があります。そこで、太もものあたりでバーベルをオーバーハンドグリップ(順手。手の甲が上で手のひらが下)で握り、肩を素早く上にすくめながら、バーベルを胸の上まで引き上げましょう。肘をバーベルの下に持ってきて前に突き出し、バーベルをJフックにかけてください。
  5. 次にバーベルの下に入ったら、ウォームアップを始める準備の完了です。まずはプレートを付けない状態で1セットを終え、それからプレートを左右にセットし、クリップで固定すればセッティングの完了です。

◇ベンチプレス

  1. ベンチプラス用のバーベルフォルダー付きベンチがない場合は、スクワットラックもしくはスクワットスタンドに加えて、フラットベンチを用意しましょう。
  2. 次にバーベルフォルダーまたはJフックを、ベンチに横たわった状態で安全にバーベルを外すことができる高さに調整します。
  3. 続いてバーベルフォルダーまたはJフックに、15kgか20kgバーをかけてください。
  4. バーの真下に鼻がくるようベンチに横たわります。足が床に届かない場合は、ベンチの上に足を上げるか、床にサンドバッグを置いて足を乗せましょう。
  5. これでベンチプレスを始める準備が完了です。

◇デッドリフト

  1. まずはジム内のフリーウエイトスペース内で、空いているスペースを見つけましょう。ジムによっては、デッドリフトも可能なラックが用意されているところもありますので、その場合はそちらで。
  2. ここでもバーは15kgか20kgを選びましょう。そして、それを床に置きます。
  3. バーだけで、ウォームアップのセットを完了させましょう。これが終わったら、バンパープレート(大きめの平らなプレート)を左右に取り付けクリップで固定してください。

ビッグ3のやり方

◇スクワット

スクワットをする男性

なぜ行うのか:英国ウェイトリフティング協会(BWLA)のパワーリフティング部門を母体として設立されたブリティッシュ・パワーリフティングと、英国スポーツ科学研究所のストレングス&コンディショニング・コーチであるアルン・シン*³氏によれば、「一般的にスクワットよりもデッドリフトのほうが、より重い重量を持ち上げることができるでしょう。ですが、動員される筋繊維の総数という点では、スクワットが頂点に君臨しているでしょう」とのこと。

そのため「体重を増やしたいのか」「筋肉量を増やしたいのか」「トライアスロンのスプリットタイムを切り詰めたいのか」にかかわらず、この種目はワークアウトプランに定期的に組み込む必要があると言えます。そして、シン氏は次のようにも述べています。

「スクワットほど、大腿四頭筋を鍛えるものはないと考えられます。さらに驚くべきことは、スクワットを適切に行った場合、人体における背面に付着する筋肉の運動連鎖
(背骨を支える広背筋から菱形筋、大腰筋、脊柱起立筋に至る胴体の後ろ側から、大臀筋、ハムストリングス、ふくらはぎ…まで)のパワーも活用できるということでしょう」

やり方:

  1. 足幅をお尻より少し広めにして立ちます。
  2. 胸を張り、体幹を引き締めしましょう。
  3. 腰を沈めてしゃがみますが、そのとき膝はつま先と一直線になるように意識してください。
  4. 太ももが床と平行かそれ以下になるまで、深く腰掛けるようにしゃがみましょう。
  5. かかとに力を入れ、大臀筋を意識しながら元の状態に戻ります。これを繰り返してください。 その間、視線は正面に向けるようにしましょう。

◇ベンチプレス

ベンチプレスをする男性

なぜ行うのか:世界をリードするストレングス&コンディショニングの専門家であるダン・ジョン氏*⁴は「ベンチプレスは、三角筋、上腕三頭筋、さらには上腕二頭筋を鍛え、スタビライザーとして動作の力に対抗します」と言います。

「大胸筋をフルに使うので、胸も大きくなるでしょう。腕立て伏せやチェストプレスのマシンを使うよりもはるかに効果的と言えます」

やり方:

  1. フラットベンチに仰向けになり、肩幅に開いたオーバーハンドグリップでバーベルを持ちましょう。
  2. 息を吸いながら、胸の真ん中に少し触れるまでゆっくりとバーベルを下ろしてください。
  3. 息を吐きながら、バーベルをスタートポジションまで勢いよく押し戻しましょう。これを繰り返します。

◇デッドリフト

デッドリフトをする男性

なぜ行うのか;「残りのフィットネスキャリアの中で一つの動きしかできないとしたら、デッドリフトは悪くないと思います」とファムティミ氏は言います。

「デッドリフトは使う筋肉の大きさと数から、最も重い種目になる可能性が高いです。多くの筋肉を使うことは、代謝に大きなストレスがかかると言えます。特に一日中デスクに座っている人には、まさに必要なストレスでしょう」

やり方:

  1. 足を腰の幅に開いて、すねをバーベルにつけてください。
  2. お尻をかかとの後ろに向かって突き出し、両手をバーベルに向かって伸ばします。そのとき肩はバーベルの上に、足の甲は下にくるようにしてください。
  3. 背中と頭を一直線に保ち、体幹を力を入れながら肩甲骨を寄せ、テンションをかけます。
  4. 視線を前に向けながら、バーベルを身体に沿わせるようにして持ち上げましょう。
  5. 腰を伸ばして身体が床と垂直になるようにキープしたら、逆の手順でバーベルを元の位置に戻します。

ビッグ3の
レップ数とセット数は?

バーベルを肩にかける男性
Junior Asiama / 500px//Getty Images

ビッグ3のレップ数とセット数は、あなたの目標によります。筋肉をつけることはどのレップレンジでも可能と言えますが、筋力とパワーの向上は低いレップレンジで得られる傾向があります。

ですが初心者のうちは、安全に持ち上げられて、やりがいを感じられる重量で、6~12レップ、3~4セット行えば、筋力と筋肉増強には十分でしょう。

セット間に十分な休息があれば、1回のワークアウトで3つの動き全てを行うことができるはずです。『メンズヘルスUK版』の経験則では、初心者が筋力と筋肉をつけるには、2分あれば十分だと考えています。


いつビッグ3を
始めたらいい?

ビッグ3をいつから始めるか? について、厳密な決まりはありません。それよりも、あなたの身体がオリンピックバー単体を持ち上げる準備ができているかどうか? が重要となります。

ほとんどのオリンピックバーは15~20kg。10kgのダンベルを6~12レップ持ち上げるのに苦労しているのなら、より重い重量を安全に持ち上げられるようになるまで、次で解説するリグレッションに集中しましょう。リフティング初心者の大半は、必要なテクニックを十分に理解していれば、プレートを付けていない状態のバーベル(バーのみの状態)を使えるようになるはずです。

まずはバーのみから始めてください。これが簡単だと感じたら、6~12レップスでよりきつく感じられるように、バーの両側に5kgのプレートを追加していくといいでしょう。


ビッグ3のリグレッション

まだビッグ3を始める準備ができていないようであれば、これらのリグレッションを試してみましょう。前出している「リグレッション(regression)」ですが、忘れている人も少なくないと思うでの説明しますと…。これはつまり日本語で「回帰」「後戻り」「後退」といった意味を持つもの言葉。

トレーニングにおいては、そのトレーニングができない場合に、その負荷や難易度を1つ下げて使う筋肉を意識しながら、正しいフォームを繰り返すことができる状態にまでトレーニングレベルを変化させるという考え方になります。

◇スクワットのリグレッション

ボックススクワット

ボックススクワット

ベンチや箱、椅子の前に背筋を伸ばして立ちます。胸を張ったまま膝を曲げて太ももを落とし、背中が箱につくまで腰を下げましょう。そして再び立ち上がり、この動きを繰り返します。

ゴブレットスクワット

goblet squat

ダンベルを胸の前で持ち、手のひらを上に向けてください。背筋を伸ばして胸を張り、腰を後ろに沈めます。膝を曲げて太ももを床と平行になるまで落としましょう。それから立っている状態に戻って、この動きを繰り返します。

ドュアルダンベルスクワット

dumbbell front squat

ダンベルを鎖骨の位置で持ち、手のひらを内側に向け、肘を腰に密着させます。胸を張って腰を後ろに反らしながら床と平行になるよりも深く沈み、かかとに力を入れて立ち上がりましょう。

フロントスクワット

フロントスクワット

スクワットラックでバーベルを肩の真ん中にくるようセットし、膝を曲げて腰をバーベルの下にセットします。バーベルがあごの下、鎖骨のあたりにくるようにしてください。そして手のひらを上に向けて親指を肩の外側に持っていき、その位置でバーベルを握りましょう。

次に肘をバーベルの下で前に向かって突き出し、脚をまっすぐ伸ばしてバーベルをラックから外し、少し後ろに下がってください。体幹に力を入れ、胸を張って肘を肩と一直線に保ちます。バーベルが足の甲の上にくるように、太ももが平行かそれ以下になるように腰を沈めてスクワットをします。そして床を突き破るような爆発的な力で、立ち上がってください。

◇ベンチプレスのリグレッション

フロアプレス

フロアプレス

膝を曲げ、足を床につけて横になります。ダンベルを胸の上に上げたら両腕をまっすぐ伸ばし、手のひらを自分の身体側に向けてください。それからダンベルを胸の両側、肩の下45度に下ろします。胸が伸びるのを感じたらまたダンベルを押し上げ、これを繰り返してください。

ダンベルベンチプレス

ダンベルベンチプレス

ベンチに横たわり、ダンベルを胸の上で押し上げます。そして胸のストレッチが感じられるまでゆっくりとダンベルを下ろしてください。肘の角度を45度に保ち、ここで一旦静止してから爆発的に押し返します。

インクラインプレス

インクラインプレス

ベンチやブロック、積み重ねたプレートなどを使います。ベンチをつかんだら高い位置でプランク姿勢をとり、体幹と大臀筋に力を入れましょう。胸をベンチに下ろし、肘を身体に密着させながら爆発的に身体を押し上げてください。

腕立て伏せ

腕立て伏せ

体幹を引き締め、両手を肩の下に置いてハイプランクの姿勢をとります。肘を曲げて胸を床につけましょう。それから肘を身体に密着させたまま、勢いよく身体を押し上げます。

◇デッドリフトのリグレッション

ダウェルヒップレンジ

ダウェルヒップレンジ

ダウェルヒップレンジを行うには、背骨の付け根から後頭部まで沿うように棒を両手で持ってください。腰をヒップヒンジ(股関節を蝶番のように動かし上半身と太ももを近づけていく動作)させながら、膝を少し曲げて腰をかかとの後ろに向かって突き出します。腰と肩の間、後頭部が棒と触れるようにしましょう。そして逆の動きで、元の状態に戻ります。

ルーマニアンデッドリフト

ルーマニアンデッドリフト

ダンベルを両脇で持ってください。膝を少し曲げて腰を後ろに突き出し、肩を後ろに引いて背中をフラットに保ちながら、ゆっくりとダンベルを地面に向かって下ろします。すねは床に対して垂直に保ちましょう。ハムストリングスにストレッチを感じたら一旦静止し、スタートポジションまで持ち上げます。

ダンベルデッドリフト

ダンベルデッドリフト

ダンベルを足のすぐ外側の床に置いたら背中をフラットにし、膝を曲げてダンベルを握ります。広背筋を引き締め、足で地面を押すイメージで直立してください。それから深呼吸をして逆の動きで戻ります。ダンベルを置いたら拳をつくって、反対側にテンションをかけてください。

ブロックから持ち上げるデッドリフト

ブロックからのデッドリフト

ブロックやプレートを使います。足を腰の幅に開いて、すねをバーベルにつけてください。腰をかかとの後ろに突き出して前方にヒンジさせ、両手をバーベルのほうに伸ばしましょう。肩はバーベルの上に、足の甲は下にくるようにポジションをとります。

背中と頭を一直線に保ち、体幹を引き締めながら肩甲骨を寄せてテンションをかけたら、バーベルを身体に沿わせるようにして引き上げてください。腰を伸ばして身体が床と垂直になるようにキープしたら、逆の手順でバーベルを元の位置に戻します。

スモウデッドリフト

sumo deadlift

すねをバーベルにつけ、背筋を伸ばして広いスタンスをとってください。膝を曲げ、胸を少し上げて腰をかかとより後ろに突き出します。肩から一直線の位置でバーベルを握りましょう。

それから肩を後ろに引いて下げたら、体幹を引き締めたままバーベルを引き上げスタンディングポジションをとります。腰を伸ばして身体が床と垂直になるようにキープしたら、バーベルを下ろして動作を繰り返してください。

[脚注]

*1:Hendrick Famutimi(ヘンドリック・ファムティミ)氏のインスタグラムアカウント@supermanhf

*2:The Mechanisms of Muscle Hypertrophy and Their Application to Resistance Training ストレングス&コンディショニングに関する月刊誌『ジャーナル・オブ・ストレングス&コンディショニング・リサーチ』誌に掲載

*3:Arun Singh(アルン・シン)氏は、British Powerlifting Federationで倫理委員会のメンバーとなっている

*4:ダン・ジョン氏の公式サイト

Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

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From: Men's Health UK