「股関節の可動域」向上を目指す5つのストレッチ
「股関節の可動性が高まれば高まるほど、運動のクオリティが向上することが期待できるのです」と説明するのは、理学療法学博士で認定ストレングス & コンディショニングスペシャリストの資格(C.S.C.S.)を持つトレーニングコーチのダニエル・ジョルダーノ博士とキャメロン・ユエン博士です。
【目次】
リモートによるミーティング、そして在宅勤務もすっかり定着した昨今では、座ったまま一日を終えてしまうようなことも珍しくはないはず。そんな生活を続ける中、腰の痛みを覚えるようなことが増えたという人も少なくないでしょう。
昨今では、腰痛のひとつの原因として「同じ姿勢で過ごすことで、股関節や周囲の筋肉の柔軟性が低下するから」との声が多く聞かれるようになりました。これは柔軟性の低下で股関節の動きに制限されることで、身体を前後に反らす際に腰や背中に負担がかかることによるストレスの過剰蓄積によるもの。つまり、他の機能を補う形で動作する「代償動作」を続けているうちに、思わぬきっかけで腰痛が起こりやすくなると推測できます。
よって、この股関節の柔軟性をケアするためには、股関節をほぐす必要が発生するわけです。日常の運動からも、ほぐすことを期待することもできます。ですが、デスクからキッチンまで歩く程度の運動ではどうでしょう? およそ200個もの関節の中でいちばん大きく、体重を支える「荷重関節」の要を担う股関節です。それをほぐすには、決して十分な運動とは言えないようです。個人差はあるかと思いますが、使用頻度に関しても、おそらく肩関節に次いで2番目に使用頻度が高いことも想像できるのですから…。
股関節とは? その仕組み
股関節は、記事「関節とは? 股関節の仕組み」でも説明しているとおり、臼状関節(球関節の中で関節窩〔かんせつか=関節を構成するくぼんだ部分〕が深く運動の制限されたもの)と呼ばれる形状を持っていますが、同様の関節はこの股関節と肩関節の2種類しかありません。
足の付け根からひざまでの太腿(ふともも)の骨、つまり大腿骨(だいたいこつ)は骨盤の丸いソケットにフィットするよう、頭部が球形になっています。股関節には靭帯のほか15種類以上の筋肉で臀部とつながっており、それらが大腿骨の頭部を骨盤側のソケット内で安定させる役目を負っています。そのため股関節はさまざまな角度に回転し、自由に動くことができます。そうでなければ、歩行などの重要かつ自由度の高い動作はできなくなってしまいます。
なぜ「股関節」は凝り固まってしまうのか?
では再び、股関節はなぜ凝り固まってしまうのか考えてみましょう。前述のとおり多くの場合は、その原因は運動不足にあります。座ったままの姿勢、もしくは寝たままの姿勢でいると、腰回りの血流が悪くなって筋肉が弛緩(しかん)し、萎縮してしまう傾向にあります。朝の寝覚めや長時間のフライトの後など、腰にこわばった感じを覚えるのはそのためです。さらに変形性関節症や筋肉の損傷、他のさまざまな疾患などが原因で動きにくくなる場合もあります。
変形性関節症とは…関節の間にある軟骨が擦り減ったことで滑らかに動かなくなり、関節の骨などが摩擦を起こして炎症を起こし、水がたまったりする症状のことを指します。
なぜ「可動性(可動域を広げる必要)」が重要なのか? そのメリット
関節の可動性が十分であればこそ、私たちはより効率の良いパフォーマンス(動作)を発揮することが可能となります。トレーニングでも日常的な活動でも、筋肉をうまく動かすために必要不可欠なのが関節の可動性です。ストレッチすることで股関節を取り巻くより多くの筋繊維が活性化され、よりパワフルな動作が生み出されることが期待できるのです。また、筋肉をほどよくストレッチしながら強化することは、怪我や故障の予防にもつながると言われています。
股関節の可動性を高める5つのストレッチ|やり方・動画解説
そこで今回は、理学療法士のダニエル・ジョルダーノ博士(DPT, PT, CSCS)と、キャメロン・ユエン博士(DPT, PT, CSCS)に望ましいやり方を紹介してもらい、股関節の可動性の向上に役立つ5つのストレッチ方法を解説していきましょう。毎日1回このメニュー(5つのストレッチ)を行うことで、あなたの腰はまるで生まれ変わったかのように動き出すかもしれません。