風邪やインフルエンザの本格シーズン到来です。すでに、くしゃみや鼻水、熱、咳(せき)…、のどや体の痛みに苦しんでいる人も多いかもしれませんね。 

 そんなとき、「man flu(マン・フル=男性が風邪などにかかったとき、大げさに反応したり、症状を誇張することを揶揄して使われる造語)にかかった!」と部下の女性に笑われるのが嫌だと思っている方なら、ちょっと辛くとも、平静を装ってソファに寝転び、「Netflix」などを観てやり過ごそうとすることでしょう。  

 しかし、そんな男性たちに朗報があります。
 

◇風邪やインフルエンザの症状は女性よりも男性の重い?

 医学誌『BMJ』の特集に掲載された研究の中で、「風邪やインフルエンザについて、女性よりも男性の症状が実際に重い」という事実を裏づけるいくつかの証拠が示されたのでした。そしてその理由についても、「進化論的な説明がつく可能性がある」とも言われています。 

  『BMJ』の特集には、毎年ちょっとした息抜きやジョーク的な論文も紹介されることでもお馴染み…ですが、こういった論文もまた、通常の論文と同様の厳格な査読プロセスを経ているものになるのです。  

 「女性よりも男性の方が、風邪やインフルエンザの症状が重い」という見解もしかり…、マウスや人間を対象にしたおよそ30の研究をレビューした結果から導き出されたものだそうです。 

 たとえば、この1つであるジョンズ・ホプキンス大学の研究によれば、「雌(メス)のマウスのほうがH1N1やH3N2のようなインフルエンザウィルスに対して、強い免疫反応をもっている可能性がある」という結果が導き出されたそうです。

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◇男女のホルモンの違いに起因する?

 これは女性がインフルエンザに対して、強い抗体をもっている可能性を示唆するものになります。

 この研究チームは、「男女のホルモンの違いがこの要因である」と考えており、「女性ホルモンのエストロゲンが免疫反応を強化する一方、男性ホルモンのテストステロンは免疫力を弱める」と推測しています。  

 また、人間の細胞について調査した別の研究によれば、「閉経前の女性の細胞は、男性や閉経後の女性に比べてライノウィルス(風邪症状を起こすウィルス)への免疫反応が強い」という結果が導き出されています。この発見も当然、「ホルモンの違いが免疫力の違いをもたらす」という仮説を補強するものとなるのです。

 さらに、より広範な集団を対象とした研究においても、男女の免疫力の違いは示されています。  

 2004年〜2010年までの香港、1997年〜2007年の米国のインフルエンザシーズンのデータによれば、「インフルエンザでの入院率や死亡率は心臓疾患やがん、肺疾患や腎臓病などの他の要素に関わらず、女性よりも男性のほうが高かった」と言います。   

 世界保健機関(WHO)でさえ、「インフルエンザへの感染やその結果について評価するためには、性別の違いを考慮すべき」と、指摘しています。

 「このトピックに関しては驚くべき数の研究があり、どの研究も男性のほうがより重い症状を体験していることを示しているようです」と話すのは、今回の研究をまとめたカナダのニューファンドランド記念大学のカイル・スー医師。

 実際、スー医師は、このトピックに関するプレゼンテーションの1週間前にインフルエンザにかかり、これらの情報を分析することにしたということです。

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 スー医師は、「ホルモンが免疫に影響を与えているということには、驚きはありませんでした」としつつも、「テストステロン値の高さと免疫力の低さに見られたつながりは、非常に興味深いものです」と話しています。

 これらの研究によれば、テストステロンは免疫抑制的、つまり、「免疫システムの有効性を弱めてしまう」と見られています。

  「これまで、より男らしい男性、またはテストステロンが多い男性はある種の社会的、肉体的に“勝ち組”と考えられてきました。しかし、今回のデータが示唆することは、少なくとも免疫に関しては、彼らは負け組となる可能性があるということになります」と、スー医師は説明します。

 複数の研究者は、「太く短く生きる」という男性的気質を指摘します。

 また人間だけでなく、異なる多くの種において、雄(オス)は外傷や感染から死に至りやすいことも指摘しています。この結果、雄の免疫システムは、あまり発達していないのと言えるのかもしれません。彼らは、多くのウィルスを撃退するチャンスがなかったことと言えるでしょうから…。

◇今後の課題

 とはいえ、このつながりの検証には、さらなる研究が必要です。  

 スー医師は今後の研究について、「インフルエンザにかかった男性が、看病してくれる人がいるときと自分一人で解決しなければならないときに、どのように反応するかを調べるのもいいかもしれない」と、冗談交じりに語っています。   

 しかし真に科学的アプローチを行うなら、結果への影響が大きいと考えられる他の要素を詳しく調べるべきでしょう。たとえば、男性は女性よりもお酒を飲んだり、タバコを吸ったりするような傾向の違いがあります。こういったことは、風邪やインフルエンザの悪化や症状の長期化などにつながる可能性があります。また調査対象を拡大し、マウスや試験管内の細胞にとどまらず、実際に多くの人々を調査する必要もあるでしょう。

 まだまだ、完全に立証できる結果は揃っていません。ですが、男性の症状のほうが重い可能性は確実に存在するのです。なので、風邪やインフルエンザにかかったときには、「マン・フル」のイメージなどに抵抗などみせず、しっかり症状を訴えながら十分な休憩や療養をとってください。  

 体調を良くするためには、亜鉛のサプリメント(2、3日で風邪の症状を緩和すると言われます)を摂ったり、体調悪化につながるもの(コーヒーや甘いもの、アルコールや牛乳など)を摂らないよう注意しましょう。

Source / Men's Health
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。