朝一杯のコーヒーを飲めば、たちまちスッキリと目覚めて一日を始めるスイッチが入り、それと同時にトイレでもスッキリする…、実は世の中にこのルーティンをしている方は少なくないのです。

◇便意をもよおすのはカフェイン?

 では、「コーヒーを飲むと便意をもよおす」という要因は、いったい何であると考察されているのでしょうか。

 中でも、「カフェインが原因だ」と考える人が比較的多いようですが、ネズミを使った予備研究の結果によれば、そうとは限らないようです。

 テクノロジー情報サイト「Gizmodo」は、カフェイン入りとカフェイン抜きの両方のコーヒーを飲んだネズミの便は、いずれのコーヒーも飲まなかったネズミの便よりも細菌が少なかったという結果を導いています。これはコーヒーに含まれる何らかの成分が、排便に影響する腸内細菌を死滅させている可能性があることを示しています。

 つまり、この結果から言えること…「コーヒーには、腸の運動を促す効果があります。ですが、カフェインとの関連性はありません。カフェイン抜きのコーヒーでも同様な効果が見られたのですから、カフェインとは無関係と言えるでしょう」と話すのは、研究に参加したテキサス大学ガルベストン校のスアン・チェンシー氏。彼は同大学の医学部で内科学の准教授を務めています。研究結果はまだ正式に発表されていませんが、この5月にアメリカで開催された「消化器病週間(Digestive Disease Week)」の研究会議で発表されました。

◇注意点

 しかしこの研究は、人間に対して行われたものではありません。また、コーヒーが消化管の健康に影響を与えるか否かを判断するには、当然ながらもっと幅広く詳細な研究を行う必要があるでしょう。

 他の研究からも、「コーヒーの便通効果の原因は、カフェインだけではないかもしれない」という説が示されています。とは言え、「コーヒーが腸の収縮を起こし、排便を促す効果があることは、すでに科学的に明らかです」と、米ジョージア・リージェンツ大学の消化器系健康研究センターでセンター長を務める医学博士のサティシュ・ラオ氏は語ります。

 約20年前、ラオ博士と彼の研究チームはある研究を行いました。肛門にセンサー付きのプローブを挿入し、結腸と直腸の様々な部位の圧力を測定するというもので、幸運とは言いがたい12人の被験者を募って行われました。

 10時間にわたる測定時間の間に、すべての被験者は一様に同量のカフェイン入りコーヒーとカフェイン抜きのコーヒー、およびお湯を飲み、1000キロカロリーのハンバーガーを食べました。

 これらの飲食物の中で最も腸の収縮を活発化させたのは、ハンバーガーでした。ですが、カフェイン入りのジャワコーヒーでもそれに近い収縮がみられ、その活発度はお湯よりも60パーセント強く、カフェイン抜きコーヒーよりも23パーセントも激しかったのという結果に。このことは研究者たちを驚かせました。


◇【専門家の意見】コーヒーを飲むとトイレに行きたくなる本当の理由

 研究から明らかになったのは、「刺激物として知られるカフェインは、確かに結腸の動きを活性化する一定の役割をはたしているのですが、活性化する原因はカフェインだけではありません」ということ。「便意をもよおす成分は、コーヒー自体に含まれている」とラオ博士は言います。

 専門家は、以下の説を唱えています。

 「コーヒーを摂取すると、わずか数分後に胃に到達します。すると、コーヒーに含まれる数多くの成分の一部が、腸の収縮を促すモチリンや胃酸の分泌を促すガストリンといったホルモンの分泌を助け、その結果、便意をもよおすようになる」という理論になります。

 一方、科学者たちによると、午前中に行うあらゆる習慣的な活動が一体となって、便意を促している可能性もあると言います。

 「ヒトに生まれつき備わった生物リズムの影響で、午前中は他の時間帯よりも腸が活発に働くのだ」と、ラオ博士は説明します。そこに朝食とコーヒーが加わることによって、腸の収縮が活発化…その結果、便意をもよおすと推測しています。

 ラオ博士によれば、「もしも仕事中にトイレにこもるのを避けたいのなら、起床後2時間はコーヒーを飲むのを避けたほうが良い」ということです。そうすれば、朝の大仕事を終えた腸の動きが落ちつくからです。

 さらに一日の始まりで、「最初のコーヒーを飲むときは、食事や運動を同時にしないほうがいい」とのこと。そうしなければ、強い便意にさいなまれる可能性が高くなるということです。

Source / Men’s Health
Translation / Shizue Muramatsu 
※この翻訳は抄訳です。