ハーフマラソンやフルマラソンを完走するのは、かなり大変なことです。が、ゴールしたからといって、そこで終わりではありません。レースを終えてタイムが出た後は、しっかりと休息をとって回復に努めなくてはなりません。そこから、次のレースに向けた準備が始まるのです。

◇マラソン後の疲労回復|専門家によるアドバイス

そこで自身もマラソンランナーであり、ランニングのスペシャリストショップ『ランナーズニード』の専門家であるスティーブ・パターソンさんに今回ご協力いただきました。次のマラソン大会に出場を考える前に皆さんも、彼の5つのアドバイスを参考にしてみてください。

【1】マラソン翌日の疲労抜きは? 休息と回復方法

マラソンのように、身体を酷使する運動後に最も重要なことは、翌日しっかりと休息をとることです。なので、ゆっくりとくつろいでください。とは言ってはいますが、レース後の数日間は運動やトレーニングを完全にやめないことも重要なこと。

レース後の1週間は、回復期をアクティブにするために低強度のトレーニングは継続的に行って、ゆっくりと次なる進化を目指した高強度のトレーニングを再開するための準備を進めてください。

個人差はありますが、通常は「身体が老廃物を洗い流し、筋肉が修復へと至るにはおよそ8~10日の期間が必要」と言われています。修復プロセスには、骨と骨をつないで関節を形づくり、また動く角度を方向づけながら補強する役割を持つ靭帯と、筋肉が骨につく部分をかたちづくる丈夫な組織である腱(けん)との関連性もあるので、「運動を完全に止めることは効果的な回復方法」とは言えないのです。

【2】ゆっくりとウォーキングがおすすめ

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レース直後には、効率的にクールダウンを行う必要があります。まずは30分ほどゆっくりと歩き、そのうち軽いジョギングへと移行していくといいでしょう。そうすることで心拍数を通常へと戻していくこととともに、運動で酷使した部分にたまった疲労物質を血流にのせて分解・排出する効果が大いに期待できます。

また、負荷がかかった筋肉は硬くなってしまうので、運動で疲れを感じる筋肉はゆっくりと伸ばすようストレッチも忘れずに。

【3】マラソン後の食事どうしたらいい? 「タンパク質を摂ることが大切! 欲望のままに食べてもOK

マラソンの後には、何かを食べたり飲んだりすることが重要となります。だからと言って、完走した祝杯の意味も込めて、「ビールを!」というわけにはいきません。マラソンを走った直後の身体は、エネルギー不足の状態に陥っています。いわば、脱水と空腹に近い状態なのです。そんな状態のとき、一気にアルコールを摂取してしまうと血中アルコール度数が高くなって、酔いが早くなったり悪酔いしてしまったりしがちです。場合によっては、急性アルコール中毒を引き起こす可能性もあります。

また肝臓に関して言えば、ランニング中はグリコーゲンを生成し、その工場ラインはフル稼働状態となっていると言ってもいいでしょう。そんな肝臓はランニング直後からは、身体のメンテナンスステーションへとスイッチするのです。そんなときにアルコール摂取してしまうと、アルコールの分解を優先してしまうわけです。つまりは、回復が後回しになってしまうことが否めません。

結果として、回復を遅らせてしますでしょう。そして筋肉痛を促進させ、さらには故障の原因もつくり出しやすくなるとも言えるのです。さらには免疫力の低下により、風邪を引きやすくさせてしまう可能性も否めません。 健康のために走っているはずなのに、身体をさらに傷つけることになってしまうでしょう。とは言え、全く禁止というわけではありません。目安としては、1時間以上の時間をあけて、必ず食べ物と一緒に飲みましょう。もちろん個人差はありますが、中瓶一本程度の適量におさえるべきです。

それでは本題です! 運動後の食事はかなり重要です。失われた栄養素を摂取し、さらに傷ついた筋肉に対して栄養を与えることによって筋肉修復のサポートを迅速に素早く行うべきなのです。ならば、それだけ早い回復を促してくれるでしょう。

例えば運動後30分以内なら、内蔵機能が低下している時間帯と言えます。この時間帯は栄養価が高く、消化吸収のよい食べ物を摂るといいでしょう。例えば「牛乳」、「豆乳」、「乳飲料」や、「果汁100%ジュース」や「バナナ」などの糖質が多い果物、ビタミンやクエン酸が含まれる柑橘類、プロテインや液体もしくはゼリー状のスポーツドリンクほか栄養補助食品など、身体がダメージを受けている状態でも素早く栄養補給が可能なものをおすすめします。

また、運動後30分~2時間以内には、内臓機能も落ちつく頃合いです。ここではたんぱく質、糖質(炭水化物)、ビタミン・ミネラルを中心に、栄養バランスのとれた食事をよく噛んでゆっくりと食べるべきでしょう。

最後にそれ以降の食事に関しては、回復の個人差があるので自身の胃腸の調子を見極めた上で、食事のメニューを考えるといいでしょう。基本的には、日々目指すべきところでもありますが、この時期だけは特に消化の良いものを心掛け、バランスの良い食事を摂ることが一番です。それでも引き続き、回復を促す良質なタンパク質とビタミンB群、さらにアミノ酸を意識して摂取すると良いでしょう。

とは言え最終的には、自分が本当に好きなもの、食べたいものも加えるようにしてください。食べたくないものばかりを無理して食べても、今度な精神的なところでストレスとなってしまいます。

▽おすすめのタンパク源

一般的に最も聞く回復の情報として、「運動後の身体は、筋肉の合成が促進される状態が運動後最大48時間継続する」という考え方があります。 なので、一般的にはその時間帯は筋肉のもととなるタンパク質を摂ることが大切と言えます。またレース後、貧血にみまわれる可能性もあるので、その予防策も兼ねてお魚や豆腐、納豆、赤身のお肉がおすすめです。

【4】フォームローラーがおすすめ

フォームローラーというツールは、レース後の回復に最適と言われています。

ローラーは身体の血流促進を助け、筋肉の痛みやハリ、圧迫感を和らげ、体調に大きな変化をもたらすことが大いに期待できるツールなのです。しかしながら、故障したと感じる箇所に直接使用すると、さらに悪化してしまう可能性もあるので注意が必要です。とは言え、フォームローラーは回復のための重要な役割を果たしてくれることは、多くのアスリートたちが口をそろえて言っていることは確かです。

【5】新しい目標の設定がモチベーション維持に

例えば「ある大会のハーフマラソンで完走すること」が、それ以前のあなたにとっての最高の目標であった場合、それを達成したあとはどうなるでしょうか? きっと、レース後やる気を見失って、いわゆるスランプ状態の期間がしばらく続くかもしれません。なので、これまで走り続けてきたことで積み重なった財産を、その空虚な期間で台無しにする可能性も大。それを避けるためにも、次なる物理的な目標または達成すべき何かをいち早く新たに設定することが一番でしょう。

そうすることで、身体を動かすモチベーションと共に健康も維持できだけでなく、レース後の空虚感も薄れ、精神的にも楽になるかもしれません。

Source / Men's Health US
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。