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胃腸の単なる不調を感じるぐらいでは、健康上緊急案件となることはそうないでしょう。そこに嘔吐と下痢などの症状が加わってしまうと、これは誰に取ってもつらいものになります。
このように、突然消化器系のトラブルが起きてしまったときには、ある種類の食べ物が回復の違いをもたらすことがあります。その食べ物というのが、「BRAT食」です。
BRAT食とは、例えば子どもの頃、病気になってしまったときにお母さんが食べさせてくれたような味気なくも、胃に優しい食べ物のことです。それでは、BRAT食とはどういったものか? どのような効果があるのか? また、実際にその効果はどの程度あるのか? をご紹介していきます。
◇BRAT食って何? 医師による記事監修
BRAT食とは、「バナナ(Banana)」、「白米(Rice)」、「アップルソース(Applesauce)」、「白いトースト(Toast)」からなる低繊維食のことです。この4食品の頭文字をとって「BRAT」と称しているというわけです。
「BRAT食は柔らかく、口当たりがよく、消化しやすいものなので、消化器系のトラブルが起きてしまったときにおすすめできる食品です」と、テキサス・ヘルス・サウスウェスト・フォートワース病院の内科医のジェームズ・エルダー医師は教えてくれます。
BRAT食は食物繊維が少ないため、便も硬くする効果も考えられますし、脂肪や香りも少ないので、吐き気を催すことも緩和してくれる効果が期待できるとされています。
BRATの頭文字に当てはまらなくても、「軽くて淡白な」といった基準に見合う食べ物なら大丈夫でしょう。例えば、以下のものになります。
- プレーンクラッカー
- シリアルやオートミール
- だし汁などのスープ
- 卵
- 茹でたり、焼いた皮なしの鶏肉
- 揚げ物や脂肪分の多いもの
- 生野菜やフルーツなど食物繊維の多い食べもの
- アルコール
- コーヒーなどカフェインを含む飲みもの
◇BRAT食の効果は?
このBRAT食は昔からある食事法で、多くの人がその効果を信じております。ですが、カリフォルニア州サンタモニカの医療機関プロビデンス・セント・ジョンズ・ヘルス・センターに所属する家庭医学専門医であるデビッド・カトラー医師は、「BRAT食には科学的な裏づけとなる証拠は少なく、実際に胃腸の症状を治せる可能性はかなり低いとも言えます」、と説明しています。
と言うのも、下痢の多くは腸のウイルスによって引き起こされるため、「何を食べるかに関係なく、数日間でそのウイルスは沈静化する」とも言えるからです。実際、アメリカ小児科学会は、BRAT食には約束事が多いため、子どもにはすすめておりません。
しかしながら大人にとっては、免疫システムが不快な症状を緩和しようとしている間は、BRAT食にすることで気分が良くなる程度の効果は期待できるかもしれません。病気であっても、少しはお腹が空くはずだからです。そこで脂っこいチーズバーガーやアイスクリームを食べるよりは、お腹に優しいBRAT食のほうが症状を悪化させる可能性は低いというわけからです。
◇BRAT食はどれくらい続けるべきか?
内科医のエルダー医師は、「吐き気や下痢のときには、最初の6~12時間の間は水やスープなどの透明な液体物だけを取るようにしたほうがよいでしょう」と、話しています。「恐らく食欲もないと思います。そこで液体の飲み物であれば、吐き気や下痢の症状を悪化させずに脱水症状を防いでくれるでしょう」と言います。
症状が出てから8~12時間後に、BRAT食を少しずつ食べてみてください。その際に、吐き気や下痢の症状が悪化しないようであれば、少しずつ量を増やしても大丈夫でしょう。そこで悪化するようでしたら、少なくとも数時間は液体物に戻すべきでしょう。
エルダー医師は、「ほとんどの人は1~2日だけBRAT食にすれば、あとは2~3日かけてゆっくりと通常の食事に戻していけばいいと実感するはずです」と、これまでの症例をもとに説明してくれました。
◇他にも…効果的に下痢や嘔吐を和らげる4つの方法
BRAT食は下痢や吐き気の症状を緩和させる効果が期待できますが、他にも対処する方法もあるのでご紹介します。
- 水分を十分に摂る
「初期対応で最も大事なことは水分補給です」と、家庭医学専門医のカトラー医師は言います。
- 失った電解質を補給する
「下痢や嘔吐になると、ナトリウムやカリウムといった重要な電解質が失われるので、ミネラルを含んだ水分を摂取することが大切となります。スープやフルーツジュース、スポーツドリンクなどがおすすめです。もしコップ一杯の飲み物を飲んで気分が悪くなるようであれば、1回に少しずつで頻繁に飲むようにしたほうがいいでしょう」と、エルダー医師は加えて説明します。 - プロバイオティクスを試す
また、プレーンヨーグルトのような善玉菌がたくさん含まれた食べ物を摂ることも改善効果が期待できます。善玉菌には、「下痢の原因となるウイルスに対抗するのに効果的である」という研究結果もあります。ですが、食べられる状態ではないという場合には、サプリでプロバイオティクスを摂取することを医師に相談してみてください。 - 注意した上で市販薬を飲む
市販薬でも症状を抑えることも期待でき、トイレに駆け込む回数も減らせることができるでしょう。ただし市販薬の中には、下痢に関連した感染症を悪化させる可能性もあるので、服用前には医師に相談したほうがベターなのは確かです。
◇BRAT食を試すべきでは“ない”人は、いるのでしょうか?
エルダー医師によれば、「クローン病や潰瘍性大腸炎(かいようせい-だいちょうえん)などの消化器系の基礎疾患がある人は、BRAT食に頼らないほうがいいでしょう。また、免疫力が低下している人や、胃瘻(いろう=お腹に開けた穴にチューブを通して直接胃に食べ物を流し込む方法)を施行している人や、ラップバンド手術(腹腔鏡下調節性胃バンディング術=胃の上部にバンドを巻いて食べる量を調整する手技で、胃を切ったり縫ったりすることはない)などの肥満外科治療を受けている人も同様です」と、言います。
これらに当てはまる人は下痢になったときに脱水症状を起こしやすいので、自宅で対処しようとせず、早急に医師に相談することがベストと言えるでしょう。
◇BRAT食の効果がない場合、どのタイミングで医師に相談するべきか?
「2日経っても胃腸の症状が改善しない場合は、医師に相談することをおすすめします。便がゆるく、水っぽい状態が長く続くと、脱水症状を起こすリスクも高くなりますので。しかも、BRAT食はビタミンやミネラルがかなり少ない食べ物です。数日間以上食べ続けると、日々の生活をおくるために重要であり必須とも言える栄養素が不足してしまう可能性も大注意は必須です」と、カトラー医師は話しています。
次のような症状がある場合は、すぐに医師に相談したほうがよいでしょう。
- 腹部や直腸に強い痛みがある人。
- 39度以上の熱がある場合。
- 便が黒く、ネバネバしている。または便に、血液や膿が混じっている。
こういった症状はすべて深刻な問題の兆候の可能性があるため、BRAT食で対処しようとぜずに医師への相談を急いで行ってください。
Source / Prevention US
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。