長編小説『失われた時を求めて』で有名なフランスの小説家マルセル・プルースト(Marcel Proust)は、『We are healed of a suffering only by experiencing it to the full(苦悩というものは、それをとことん味わったあとのみ癒(いや)される)』という名言を残しているかと思います。ですが、(筋トレの観点からすると)おそらく彼は脚部を集中的に鍛える「レッグデー」を行なった後の、数時間から数日後におよぶ筋肉痛、DOMS(delayed onset muscle soreness:遅発性筋肉痛)の独特な不快感を味わったことはなかったに違いありません。

「筋肉量を増やしていく」という道のりを疾走する者たちにとって、微小な傷(そしてそれがもたらす痛み)はそのプロセスの一部であることは承知の上のはず。ですが、そのリカバリーに関して、「常に苦痛を伴うものでなければならないのか?」と悩んだことはないでしょうか。

そんなわけで多くのトレーニーたちはこれまで、適切な水分補給や筋肉合成をサポートするタンパク質の補給、関節の健康のためにオメガ3脂肪の摂取など、「トレーニング後の修復を早めることが期待できる」と言われるさまざまな対処法を実践してきたはずです。

そこでひとつ、注目すべき方法を紹介しましょう。これは最近のリカバリー界隈では、話題になっているものでもあります。フォーカスしているのは、ポリフェノールです。

農業および食品化学を研究している学術誌『Journal of Agricultural and Food Chemistry』に掲載された研究では、ポリフェノールpolyphenol)と呼ばれる抗酸化物質がアミノ酸と反応すると、抗炎症作用効果が大幅に高まるという研究結果が報告されています。

「フラットホワイト」とは?

ということは、実際問題として抗酸化物質が豊富に含まれているコーヒーに、タンパク質が豊富なミルクを加えればいい…。つまり、エスプレッソ好きの人なら、そのままではなくフラットホワイト(エスプレッソにミルクを合わせたドリンク)を選べばいいという単純なことになります。

「フラットホワイト」を詳細に説明すれば、エスプレッソにミルクを合わせたドリンクで、下からエスプレッソ、スチームミルク、(空気を含んで泡状になったミルク)の順に3層を織り成すように丁寧に重ねたもの。ミルクをたっぷりと使いながらも、エスプレッソの濃厚なコクや苦みをひと口目からしっかり感じられる素敵なドリンクです。

効果に関する研究は、まだ初期段階

ジムでのトレーニング後にフラットホワイトを摂取した効果に関する研究は、まだ初期段階にあります。しかし、デンマークの研究者たちは、「この方法でポリフェノールの吸収を高めることが、腫れや痛みを和らげる効果的な方法であることを証明される可能性がある」と興奮して話しています。科学的な検証はこれからですが、試してみる価値はあるかも(!?)しれません。

ですが、ここでコーヒー紳士の皆さんはもう気づいているかもしれません。コーヒーは生豆を焙煎したものを挽いて、お湯で抽出するものです。そしてこの焙煎には、浅煎りのライト、シナモンなどから、深煎りのフレンチ、イタリアンまでさまざまな煎りの度合いがあります。一般に浅煎りは酸味が強く、深煎りになればなるほど苦味が強くなります。そこでエスプレッソなどに使われる豆は、ご覧になった人ならわかると思いますが、ほとんど黒に近い色の深煎りです。

そこで考慮すべきは、コーヒーの重要成分の一つであるカフェインは熱を受けてもほとんど変化しませんが、コーヒーに含まれるポリフェノールである「クロロゲン酸」は熱により変化するという研究結果も、全日本コーヒー協会によって2016年7月に報告されています。なので、「エスプレッソベースの『フラットホワイト』よりも、単純にコーヒーにミルクを加えた「カフェオレ」のほうがいいのでは?」と思うかもしれません。

でも、カフェオレに向いているとされる豆も、苦みの強い「中深煎り」か「深煎り」のコーヒー豆とされています。なので、ポリフェノール量に関してはあまり変わりがないかもしれません。ならば、自分の好みに合わせて選べまいいでしょう。ここでは、前述のようにミルクをたっぷりと使いながらも、エスプレッソの濃厚なコクや苦みをひと口目からしっかり感じられる「フラットホワイト」をおすすめします!

もし探求心が強い人であれば、「浅煎りのコーヒー豆を使用しても、『フラットホワイト』『カフェオレ』は美味しく楽しめるのか?」を検証してみるといいでしょう。おそらくミルクティーの方向に味はシフトしていきそうですが、それがあなたの好みかもしれません。ぜひお試しを。それで筋トレ後の回復もサポートできるなら、それに越したことはありませんから…。

Source / Men’s Health UK
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。