記事のポイント

  • 眼梅毒にかかった奇妙なクラスターがアメリカのミシガン州で発生しました。
  • このクラスターは5人の女性であり、全員が1人の男性から感染しました。
  • この眼合併症が急速に発症したことから、専門家は「この病気は、新種の株の可能性がある」と推測しています。

この奇妙なクラスター感染は
変異株が関係か

感染症とは奇妙なものです。ここ数年で徹底的に学んだように、感染症は進化をし続ける不気味な存在になっています。これは確かに感染症を引き起こす病原体の優れた生存戦略ですが、そのため、進化した細菌やウイルスによって引き起こされる病気となれば、それを予測し、治療するのは本当に難しくなるでしょう。

例えば、最近急増している目の梅毒…そう、目に症状が現れるのです。正式には「眼梅毒」と呼ばれ、通常は感染から 1 年以上経過した活動性の後期梅毒の合併症としてのみ現れる、ごく稀に発症するものです。また、CDCの報告書によれば、65歳以上の者、HIV陽性者、および/または「注射薬使用」に参加する者が主に罹患するとのこと。つまり、常識的なルールに則っているのであれば、この女性たちは誰も罹患していないはずだったのです。

今回の感染源となった男性には、末期の梅毒に罹っていた者はいませんでした。CDCの報告書によれば、「この男性は初期の潜伏梅毒とのことで、後期に進行するほど長く梅毒に罹患していた者もいなかった」ということ。また女性は「全員65歳未満で、HIV陰性、注射薬も使用していなかった」と記載されています。また興味深いことに、これは異性間感染に起因する眼梅毒クラスターとして初めて記録されたケースでもあります。

この感染症群におけるCDC(アメリカ疾病対策予防センター)の報告によれば、「眼梅毒は梅毒患者の約1%にしか起こらない」とされていますが…。

それが最近、梅毒は思いがけず、そして心配になる形で出現しました。2023年初め、5人の女性が全員、共通の男性のセックスパートナーから感染した眼梅毒と診断されたのです。

CDCの報告書によれば、眼梅毒はさまざまな感染ルートから発症する可能性があります。が、2019 年におけるアメリカの推定によれば、後期に発症している傾向があったとのこと。また65歳以上、HIV陽性者、および/または注射薬の使用者が主に罹患していたそうです。このルールに則っとれば、誰も罹患していないはずでした。

というのもまず、これらの感染源となった男性たちは、末期の梅毒にかかってはいません。報告書によれば、「男性は早期潜伏梅毒ではあり、後期梅毒に進行した期間で罹患した女性は一人もいなかった」とのこと。そして女性たちは全員65歳未満であり、HIV陰性、注射薬も使用していません。

なお興味深いことに、これは異性間感染に起因する眼梅毒クラスターとして初めて記録された症例でもあるそうです。

このような奇妙さと集団感染が非常に限定的であることから、専門家たちは、「これらの感染症は、注目すべき菌株に由来するのではないか」と考えています。CDCの報告書はさらに、次のように述べています。

「これらの限られた観察結果は、患者の眼梅毒および神経梅毒に梅毒トレポネーマの特異の菌株が関連していた可能性を示唆しており、患者とその共通のパートナーが治療を受けた後は感染拡大が止まったものと思われます。ですが、(梅毒の病原体)梅毒トレポネーマの分子タイピング(タイプ分け)調査をクラスターごとに、あるいは地理的に広範囲に行わなければ、この仮説を確認することはできません」

一般市民の健康に関してCDCの報告書では、「梅毒(眼性またはそれ以外)のさらなる発生に警戒し、必要に応じて標準的な治療を行うよう」勧告されています。

さらに医療関係者は、「梅毒の可能性のある人に合併症がないかどうか? をチェックするよう、特に注意を払うべき」と警告。近い将来、自分の目から目を離さないほうがよいかもしれません。そして、これはアメリカの話ですが、今後日本も…いや世界的に注意すべきことかもしれません。

Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

From: Popular Mechanics