男性(男性器)特有の疾患や病気に関して、お風呂場やマスターベーション時など生活の中で見たり触れたりすることによって、簡単に自己診断できるチェックポイントを、男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症を専門とする泌尿器科医の小堀善友先生に解説いただきました。
◇現役の医師が記事を監修
今回の記事作成にあたり、泌尿器科医の小堀善友先生が監修協力をしています。
◇PROFILE
泌尿器科医 / 小堀善友(こぼり よしとも)先生
…獨協医科大学埼玉医療センターリプロダクションセンター准教授。専門分野は男性不妊症、勃起・射精障害、性感染症。著作『尿器科医が教える 男の― オトコの「性」活習慣病』(中公新書ラクレ)。HP『Dr.小堀の「オトコのミカタ」』、NHK健康チャンネル
最初に、日本人男性と日本人女性20代~30代の若年世代を対照に、性別特有の疾患についてどれくらい認知度があるのか、株式会社TENGAが行った調査結果についてご紹介します。
◇男性特有の疾患は認知度・理解度ともに低い傾向
女性特有の疾患について知っている日本人女性の割合は比較的高く、最も認知が低い「乳腺症」でも、「名前は聞いたことがある」と回答した女性の割合は68.0%、「乳腺症の病気や症状がどんなものか知っている」と答えた女性は30.0%、という結果になっています。
一方で男性の場合は、「前立腺がん」「精巣がん」「前立腺肥大症」を除くほとんどの男性特有の疾患で、「病気や症状を知っている」と答えた男性は15%以下にとどまり、「名前は聞いたことがある」と答えた男性は4割に届かないというアンケート結果が出ています。
■マスターベーションに関する男性のお悩み
他にも、男性特有の疾患についてのエピソードもアンケートでは聞いています。
・マスターベーション時に血がにじみ、怖かった。(30代男性)
・オナニーをしている時、しっかり精子を出しきらずにいたら、しばらく下腹部が痛くて、「病気になるのではないか」と心配になったことがある。(30代男性)
・マスターベーションの後に小便をすると、痺れるような痛みを感じることがある。しばらくすれば引くが、少し不安。(20代男性)
…など、男性器に関する不安の声があがりました。
それでは小堀先生の監修のもと、男性器の疾患・病気にかんして簡単にできるセルフチェックをご紹介しましょう。
◇セルフチェックしやすい男性器に関する4つの病気
男性特有の疾患や病気のうち、マスターベーション時にチェックしやすいものは、「精巣がん」、「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」、「陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)」、「血精液症(けつせいえきしょう)」があげられます。では、それぞれの特徴とセルフチェックの方法をご紹介しましょう。
■精巣がん
- 特徴・症状は? …陰嚢(いんのう=睾丸を包んでいる袋)の片側が大きくなる、または固くなる。がんの中でも移転しやすい性質を持つ。
- セルフチェック方法…陰嚢を触って、左右の大きさ・固さををチェック。
- 好発年齢…20代から40代
■精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)
- 特徴・症状は? …陰嚢の上に血管がギョロギョロと浮き出て見え、痛みを伴う。とくに陰嚢の左半分にできやすく、発症すると男性不妊症の原因にもなる。
- セルフチェック方法…お風呂あがりなどに目視して、血管が浮き出ていないかをチェック。
- 好発年齢…全年代(※男性の約10人に1人が罹患)
■陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)
- 特徴・症状は? …陰嚢の中に100 cc~、多い方だと300 cc程度の水が溜まり、大きく重くなる。1~2カ月で、急激に症状が進むケースもある。直接、命に関わる疾患ではないが、日常生活に支障が現れる。
- セルフチェック方法…いつもより「重い」と感じないかをチェック。そう感じたら、懐中電灯で光を当ててみる。するち、陰嚢水腫なら中の水分が光に透ける。思いのに光に透けない場合は、「精巣がん」の可能性もあるためすぐに泌尿器科の受診を。
- 好発年齢…全年代(※未就学児でも罹患あり)
■血精液症(けつせいえきしょう)
- 特徴・症状は? …精液の中に血が混じる。白いものが赤くなるので見た目にびっくりしやすいが、とくに原因はなく自然治癒することも多い。ただし「前立腺がん」の兆候という可能性もあるので、泌尿器科の受診がおすすめ。
- セルフチェック方法…マスターベーション時に精液の色をチェック。
- 好発年齢…全年代
◇様々な男性特有の男性器に関する疾患
■精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)
- 特徴・症状は? …性感染症の1つで、陰嚢が腫れて痛みを感じる。
- 原因…クラミジア等の細菌が、尿道や障害を通って侵入・増殖するものによる。若い年代に多い傾向にあるが、カテーテル手術などがきっかけてお年寄りが罹患することもある。
- 好発年齢…全世代(※とくにセクシャル アクティビティが盛んな人)
■様々な性感染症5種
- 特徴・症状は? …ペニスから膿(うみ)が出る「淋病 (りんびょう)」、「クラミジア」。
ペニス周辺にブルブルとイボができる「尖圭コンジローマ(せんけいこんじろーま)」。
ペニスに潰瘍(かいよう)ができる「ヘルペス」、しこりができる「梅毒」など。 - 対処法…性感染症は男女ともに感染拡大していくが、避妊具(コンドーム)を使用することで感染の確率を下げられる。
- 好発年齢…全世代(※特にセクシャル アクティビティが盛んな方)
■精巣捻転(せいそうねんてん)
- 特徴・症状は? …精巣が回転し、ねじれてしまう状態。陰嚢周辺に強い痛みや腫れを伴う。
- 対処法…発症すると血流が阻害されて患部が壊死するため、8時間以内の緊急手術が必要。
- 好発年齢…全世代
■陰嚢折症(いんのうせっしょう)
- 特徴・症状は? …陰茎(ペニス)が折れる症状。
勃起した状態で物理的負荷がかかることにより、陰茎内部の海綿体(膜)が裂けてしまう。 - 対処法…強い痛みを伴い、陰茎が真っ黒に変色するが、手術を行えば完治するケースが多い。
- 好発年齢…全世代
■前立腺肥大
- 特徴・症状は? …膀胱の下にある前立腺が大きくなる。がんと異なり良性で移転しないが、尿道が圧迫されて「尿が出づらい」、「頻尿」などの症状が現れる。前立腺関連の中では最も一般的な疾患。
- 好発年齢…60歳以上(60歳を超えた男性の約6割が罹患)
■前立腺がん
- 特徴・症状は? …前立腺にできるがん。早期の自覚症状はほとんどないが、進行すると尿道が圧迫されて「尿が出づらい」、「頻尿」などの症状が現れる。白人・黒人男性の発生リスクが特に高いという研究結果があるが、黄色人種(日本人を含む)にも見られる。
- 好発年齢…50歳以上
◇男性器の病気に関するQ & A
Q:男性特有の疾患を予防する方法はありますか?
小堀先生:今回紹介した疾患(とくに精巣関連の疾患)は、特別な原因がなく発症するものや、生まれつきの体質に起因するものも多く、それらは予防のしようがありませんので、「違和感を感じたらすぐ医者に行く」という感覚を持つことが大切です。
Q:陰嚢やペニスに違和感を感じたら、何科を受診すればいいですか?
小堀先生:泌尿器科が最適です。
Q:泌尿器科ではどんな治療をしますか? また、どんな準備をして行けばいいですか?
小堀先生:症状によって行う施術は異なりますので、「まずは相談」という気軽な気持ちで来てください。とくに準備は要りません。が、しいて言うなら、「尿検査をしやすい状態」がベストです。
感染症かどうかを見極めるために尿検査を行いますので、病院に着いたときに「おしっこが出ない」という状態を避けていただければ充分です。