抜け毛の原因はさまざまですが、親からの遺伝も考えられます
「アンドロゲン性脱毛症」とも呼ばれる男性型脱毛症(AGA)は、多くの男性を悩ませています。そんななか、特に男性ホルモンを補うための「テストステロン補充療法(TRT)を受けている男性は脱毛のリスクが高い」ということがいくつかのエビデンスから明らかになりました。
泌尿器科医のレナ・マリク*¹博士は自身のYouTubeチャンネルで新たな動画を公開し、TRTと男性の脱毛の間にある科学的な関係を下記のように解説しています。
マリク博士によれば、まず抜け毛にはストレス、栄養不足、特定の薬、長い髪を後ろできつく結ぶことが多いといった、身だしなみの習慣などさまざまな要因があるそうです。そしてその中でも、遺伝も大きな役割を果たすと言います。両親が脱毛していたかどうかは、将来禿げるかどうか? 薄毛になるかどうか? の最初の指標になるかもしれません。
テストステロン補充療法が髪に及ぼすリスク
日々、男性の体内で生成されるテストステロン*²の約6~8パーセントが、酵素5α-リダクターゼ*³によってジヒドロテストステロン(DHT)*⁴へと変換されることがわかっています。
このことは、体毛や陰毛など第2次性徴*⁵の形成といった若い男性にとって重要な機能を果たします。「年齢を重ねるにつれてDHTは、前立腺肥大や脱毛など他の問題を引き起こすことがあります」とマリク博士は指摘しています。
DHTは毛根に結合し、時間の経過とともに毛根を弱めるそうです。ですが、だからといって確実に抜け毛が増えていくことではないそうです。マリク博士はこう続けます。
「抜け毛は進行してしまうのは、おそらく薄毛になりやすい遺伝子を継承した男性になるでしょう。そんな男性にDHTが増加するという事態になると、男性型脱毛が起こりやすくなるのです。男性型脱毛が起こりやすくなるのでしょう」
男性型脱毛症に悩んでる人はどのような治療が最適か?
しかしながら、医療的な性別移行の一環としてTRTを使用しているトランスジェンダー男性を対象とした研究によれば、使用を開始した最初の年に約5~17パーセントの人が脱毛を発症していることが判明しています。また別の小規模の研究によれば、発症した人の多くのケースは、軽度だったということです。
「TRTに関して、『男性型脱毛を加速させるか?』と訊(き)かれれば、その答えはもちろん“イエス”です。ですが、おそらくそれはその人が既に遺伝的に脱毛しやすい体質だからです」とマリク博士は言います。
「結局のところ、テストステロンには多くのメリットがあります。ですから、あなたが脱毛症を懸念しているのならば、テストステロンが脱毛症を早める可能性があること――TRTを始めると5人に1人以下の確率を目安に、脱毛を発症する可能性があることを知っておくべきでしょう」。
テストステロンを補充しているかどうかに関わらず、抜け毛に悩んでいるのなら皮膚科医に相談するようマリク博士はアドバイスします。そうすれば根本的な医学的原因を特定し、治療を始めることができるかもしれません。
[脚注]
*1:Dr. Rena Malik 泌尿器科の専門医で、特に女性の泌尿器科的健康問題に焦点を当てた教育とアドボカシーを行っている。彼女はYouTubeを含むソーシャルメディアで一般公衆に医学情報を広めており、その活動は広く評価されている。公式サイトを参照
*2:Testosterone 主に男性の睾丸で生成されるステロイドホルモンで、性的特徴や筋肉の発達、性欲などの調節に関わっている
*3:5-alpha reductase 主に肝臓、皮膚、前立腺、毛包などの組織で生成される酵素で、テストステロンをより強力なアンドロゲン(男性ホルモンの一群)であるジヒドロテストステロン(DHT)に変換する酵素
*4:Dihydrotestosterone テストステロンよりもはるかに強力なアンドロゲンで、男性の生殖器の発達、体毛の成長、前立腺の成長、および皮脂腺の活動を促進する役割がある。そして、男性型脱毛症の主な原因
*5:Secondary sexual characteristics 思春期に現れる生殖に直接関与しない性的特徴で、例えば男性の髭の成長や声の変化、女性の乳房の発育や体形の丸みを帯びることなどが含まれる
Translation / Yoko Nagasaka
※この翻訳は抄訳です。