この記事をざっくり説明すると…

  • カリフォルニア州デスバレーで2020年8月16日15時41分(現地時間)、最高気温54.4℃を記録しました。
  • 世界気象機関(WMO=World Meteorological Organization:国連の専門機関で、気象、気候、水に関する権威のある科学情報を提供する)によると、1931年以降の世界における観測史上の最高気温となるかもしれません。
  • デスバレーは、その地形および乾燥した風土の影響から、猛暑で知られています

 現地時間8月16日、カリフォルニア州デスバレーは、とてつもなく暑い1日となりました。とは言っても、北緯はおよそ36度14分。南国というほどの位置ではありません…(とは言え、日本でほぼ同じ北緯に位置する群馬県館林市も、2007年8月16日には40.3℃という数値を記録するほど「猛暑」の印象が強い街です)。

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 2020年8月16日(現地時間)、デスバレー国立公園に設置された水銀温度計が気温Max華氏130度(摂氏54.4度:以降が℃で記載)を記録すると、居合わせた観光客はその温度計に向けて一斉にシャッターを切りました。現在、世界気象機関(WMO=World Meteorological Organization)がその数値について検証を行っているところですが、“その観測が正しければ”…世界の観測史上の最高気温が記録されたこととなります。少なくとも、8月の気温としては史上最高のとなることは確実です。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

1913年には、
56.7℃を観測したことも…

 観測された温度が「信頼のおける数字」であるか否か…。それが重要なキーワードとなっています。1913年7月10日には、同じくデスバレー国立公園のファーニス・クリークにおいて、56.7℃を記録したことをWMOが公表しています。今日に至るまで幾度となく、この最高気温の記録については気象学会における議論の的となってきました。当時の観測機器の信頼性が十分なものではなかったと主張する学者も、少なからず存在しているのです。

 1922年にはリビアのエルアジジアで58℃が観測され、世界最高気温としてギネス世界記録に認定されました。ところが、数値の信頼性に疑問が生じた結果、90年後になって認定が取り消されたという事例もあります。観測条件によって最大7℃の差が生じる状況であったことが、問題視された結果のことでした。1931年には、チュニジアで55℃の記録もあります。

 WMOは、「今回の観測気温が公式に確認されれば、1931年の後で公式に記録された世界で最も高い気温になる」としています。前述のとおり、専門家の間ではこれまでの記録の正確性をめぐる論争がありますが、米メディアでは既に「2020年8月16日の54.4℃は、実質的な世界最高記録の可能性がある」との見方も報じています。

なぜデスバレーは暑いのか?

 ところで、デスバレーはなぜこれほど暑くなるのでしょうか? 前述のように、南国とも言えない北緯です。北半球の太陽の通り道とされる北回帰線は、北緯23度26分22秒(毎年微妙な誤差があります)ですから…。

 ですが、気温49℃前後まで上昇するのは珍しいことではなく、これには地理的要因、水不足で乾燥していること、さらにはこの地の気象条件など関係しているというのが国立公園局の示す見解となっています。

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 デスバレーは、強い太陽光線が海抜マイナス86メートルの谷底にまで照りつける環境で、四方は山脈に囲まれています。同局によれば、デスバレーの降水量は毎年平均50ミリ以下であり、この地に生きる動植物は乾燥し切った状況下に適応した種であるとのこと…。

 もう少し、デスバレーの尋常でない気温について考えてみましょう。

 まず、谷に蓄積された熱気は上昇しますが、周囲をふさぐ山脈により、その熱気が閉じ込められます。上昇した熱気の逃げ場はなく、上空で冷却され、そのまま再び谷へと下降します。それはつまり、標高が低い谷底の高い気圧により圧縮された空気が再加熱されることとなります。そのような条件によて、デスバレーは地球上で最も高熱の土地として記録に刻まれているわけですが…地球上には、他にもホットスポットが存在していることも確認しておきましょう。

イエローストーン国立公園にもホットスポットが…

 アイダホ州、モンタナ州、ワイオミング州をまたいで位置するイエローストーン国立公園。この色彩豊かな高温地帯はどうでしょう。同国立公園のウェブサイトによると、121℃以上に達するとあります。雑誌『ナショナルジオグラフィック』によれば、火山地帯の地底から噴射する蒸気が、約400℃以上に達すると言います。

イエローストーン
DANIEL SLIM//Getty Images
イエローストーン国立公園の熱水泉。

 雑誌『ディスカヴァ―』の2014年の記事によれば、地球中心部の温度は6100℃にまで達しているとのこと。この数値に関しては、発表の年代および各研究チームによって誤差はあるようです。ですが、そんな地中深く誰がどう確かめたのでしょう? その測定は、実際どのように行われているのでしょうか?

 地球の内部は、「固体の鉄合金からなる内核」を「液体の鉄合金からなる外核」が覆った構造をしており、その物性が磁場形成やプレート運動などのカギを握っていると研究結果が報告されています。国立研究開発法人理化学研究所(RIKEN)が運営し、公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)が業務を行う大型放射光施設「SPring・8」の公式サイト(東京工業大学理学院地球惑星科学系の太田健二准教授(当時は講師)による2016年のインタビュー記事)によれば、(雑誌『ディスカヴァ―』のとは異なって)マントルでおよそ1000~4000K(ケルビン=726.85~3726.85℃)、外核・内核においてはおよそ4000~6000K(摂氏3726.85~5726.85℃)と解説しています。

 そして、この温度差が生物には非常に重要であり、温度差があるために地球内部で対流が起こり、その対流が地球磁場を発生させる原因と解説しています。さらに、この地球磁場によって生物に有害である太陽風がシャットアウトされ、地表で多くの生物が活動できているとのこと…と長くなりますので、この話はここまでにしましょう。さらに詳しく知りたい方は、上記のリンク先からご確認ください。

 話をもとに戻します。地球内部には鉄の固体からなる内核があり、その外側を液化した鉄からなる外核が覆っているとされています。このふたつのコア(核)の境界における温度は、圧縮された鉄の溶融温度であると推測。そこで科学者たちは2つのダイヤモンドを利用した装置を使用します。

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 それは「ダイヤモンドアンビルセル装置」と言って、ダイヤモンドを用いた小型の高圧装置になります。ダイヤモンドは、圧力を発生させる尖頭状の部品(アンビル)として使用されています。「ガスケット」と呼ばれる金属の板に小さな穴をあけ、その穴に試料と圧力媒体を入れて2つのダイヤモンドアンビルで挟み込むことで高圧を発生させるというものです。

 ダイヤモンドの先端のサイズを小さくすることで、地球中心部に相当する圧力(想定約360万気圧)の発生が可能となるというわけです。焦点で微小な鉄塊を圧縮し、加熱することでその数値を求めていくという方法になります。そして正確な温度を導き出すために、その鉄塊にX線を照射して反応を測定するそうです。

 では、もっと視界を広げてみましょう。太陽系における最高温度を求めるには、どうすれば良いのでしょうか?

 太陽の核の温度を推定することが、そのひとつの方法と言えます。例えば、約1500万K(不思議にも約14999726.85℃!)という環境における水銀の反応を見るそうです。ちなみに木星の核であれば、約3万ケルビン(約29726.85℃)がその熱量だとする研究があります。そう言われても全くピンと来ないことも確かかもしれませんが…。

 今後も地球温暖化により、地表の温度は毎年のように更新されていくに違いありません。私たちは温度計の数値に目を凝らすだけではなく、まずは私たち一人一人が、省エネルギーに取り組むことが大切です。例えば…

  1. エアコンの設定温度に関して、夏は28℃、冬は20℃に。
  2. 使わない電化製品は主電源を切り、コンセントからプラグを抜く。
  3. 誰もいない部屋の電気は消す。
  4. テレビのつけっぱなしはやめる。

 を、再度心掛けるようにすることから始めましょう。

Source / POPULAR MECHANICS
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。