松山ケンイチさん
Makoto Nakagawa(CUBISM)
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)、レザーブルゾン価格未定 (momiji/オーロラ TEL 0120-527-559)、タートルニット2万7500円(モルガーノ/ビームスF TEL 03-3470-3946)

俳優・松山ケンイチさんが出合ったシチズン アテッサACT Line(アクトライン)。2002年のデビュー以来、さまざまな話題作に出演し続ける松山さん。幅広い役柄を演じ、映画やドラマ、CMなどで活躍されています。現在は東京と田舎の二拠点生活で農業にも従事。また2021年1月からは、廃棄される資源を利活用するアップサイクルブランド「momiji(モミジ)」を手掛けるなど、活動の範囲を広げています。

新しい挑戦は、表現者としてどのような深みへとつながるのか。100年以上の歴史を重ねてきたマニュファクチュールであるシチズンの腕時計『アテッサ ACT Line/「AT8185-62E」』を手に、目指すべき未来を語っていただきました。

ものづくりで面白いのは、
背景やストーリー。
俳優の演技も同じこと

撮影当日、松山さんが羽織っていた黒のレザーブルゾンは、自らが手掛けるアップサイクルブランド「momiji(モミジ)」のアイテム。見るからに柔らかそうな革は、本来ならば廃棄処分となる、駆除された鹿の皮を使っています。ポケットの縁に施されているのは、着物などで使われる日本の伝統技法「金彩(きんだみ)」。金の仕立ては、ポケットに入れた手の袖元からのぞく『アテッサ ACT Line/「AT8185-62E」』の圧倒的なブラックの美しさを引き立てています。撮影した写真を見ながら、「時計は、自分を表現するには抜群のアイテムですね」と呟(つぶや)きます。

「カジュアルなレザーブルゾンやカチッとしたスーツなどに合わせて撮影していただきましたが、どんな服にも馴染(なじ)むデザインだと感じました。良い意味で主張が強すぎず、品がある。ブラックをベースに、針のホワイトやベゼル周りのオレンジが差し色として入っているのがいいですね。白と黒は対極にあるもの。ただ、世の中、白と黒で割り切れないことのほうが多い。『momiji』でも、できるだけグレーゾーンを意識してデザインしています。『アテッサ ACT Line』も白と黒だけで構成せず、オレンジを上手く使っており、勉強になりました」

citizen attesa act line
CITIZEN
今回、松山さんが着用した腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)

「アテッサ ACT Line」の見た目を「男らしくてカッコイイ」と評する松山さんですが、それ以上に心を動かされたポイントがありました。それは、外見だけでは読み解けない背景、ストーリーです。

100年を超える歴史を重ねてきたシチズン。時計にまつわる全パーツを自社一貫製造できる国内有数のマニュファクチュールとして、部品づくりからこだわっています。柔らかく加工難度の高いチタンを丁寧に磨き上げていくことで、緻密に計算されたデザインを実現できるのも、そのこだわりがあってのこと。

そういった話を聴いた松山さんは、「僕も、ものづくりをしているので、こういった技術者の思いやこだわりを聴くとテンションが上がりますし、刺激になります。心が動くという意味では、これも立派なエンタメですよね」と語り、こう続けました。

「ものづくりで最も面白いのは、背景やストーリー。そこにこそ、価値があると思っています。これは俳優の演技もそう。背景やストーリーを表現することは、本当に大事です」

もうひとつ、アップサイクルブランドを展開する松山さんだからこそ、強く共感できる部分もありました。それは、多様性や環境への配慮です。シチズンの根底には、「分け隔てなく誰もが時計を使えるように」という創業時の理念があります。例えば、「アテッサ」がチタンを採用している理由のひとつは、金属アレルギーの人への配慮から。1960年代に触って時間を知ることができる、視覚障がい者対応の腕時計を国産で初めて開発しているのもシチズンです。

環境への配慮としては「電池の廃棄を減らしたい」という意志から、1976年に世界初のアナログ式光発電時計を開発。光発電技術は進化を重ね、「低消費電力」かつ「長時間駆動」といった独自技術『エコ・ドライブ』へとつながりました。また、潤滑油の破棄を減らす目的から、長期間使用しても劣化しづらいオイルも開発しています。

「ものづくりへのこだわりがなければ、多様性や環境への配慮は見落とされがちです。僕も『momiji』を手掛けることで、いろいろなことに気づかされました。ただ、そこにこだわり過ぎると、クオリティや価格との兼ね合いが難しくなることもある――だから、簡単なことではありませんよね。そういった中で、シチズンさんは環境や多様性とクオリティを両立させている。それは素直にすごいことですし、『momiji』もそうでありたいと思います」

「momiji」を通じて
表現したいこと

「アテッサ」は、「挑戦する人を後押しするようなブランドでありたい」と願っています。松山さんに挑戦について尋ねると、「今は『momiji』が動き出したばかりなので、しっかりと後押しして仕組みをつくっていきたい」とのこと。

『momiji』は、田舎での生活の中で狩猟現場に同行し、そこで得た気づきから生まれました。

「以前は、自然のサイクルで鹿の固体数が調整されていたのですが、人の介在などさまざまな要因もあり、現在は激増して高止まりの状況です。農作物や林業への被害も大きく、山の多様性にも影響を与えています。そこで政策として行われているのが、個体数を適正に調整するための有害駆除です。

肉はジビエとしての活用が普及してきましたが、その一方で皮は野生動物ゆえにキズがあるなど再利用が難しく、産業廃棄物として焼却処分されています。ですがそれはコストもかかるし、環境にも悪影響となります。そんな鹿皮を再利用できないかと始めたのが『momiji』で、今では鹿皮だけにとどまらず、廃棄されがちな資源を上手くアップサイクルする活動を行っています」

松山ケンイチさん
Makoto Nakagawa(CUBISM)
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)

その背景を聴いて、改めて松山さんが身につけている鹿革のブルゾンを観ると、少し違う印象になります。松山さんは、「先ほども、『背景やストーリーに価値がある』と話しましたが、背景を知らなければ、これもただの革です。このブルゾンの背景にどういった問題があり、自分たちはそれをどう受け止めるのかを表現したくて、『momiji』を始めました。この表現で鹿は悪者で、駆除は仕方がないことと言うつもりはありません。ですが、現状を知ることでその人の人生が少し変わって、なにかしらの影響を与えられるかもしれない――そういったことが、大事だと思っています」と語ります。

廃棄されがちな資源をアップサイクルするといった背景が、アイテムに価値を与えている『momiji』。その思想は、“人”という資源にも向けられています。その結果、回収した服を原料にしてつくられた『BRING(ブリング)』のTシャツやスウェット、パーカーなどに、松山さんやアーティストが描いたアートをその場でプリントして渡すアートコレクションが誕生しました。

「人の表現も、ある意味で捨てられている資源だと思いませんか? ファッションなどのデザインは、才能あるほんの一部の人がつくっています。ですが、世の中に出ていないだけで、面白い表現ができる人はたくさんいるはずです。その表現を生かしたいと考えて、お年寄りや子ども、障がい者、引きこもっていた方など、さまざまな人のデザインを採用しました。プロのアーティストと子どもによるデザインを組み合わせた一点物をつくるなど、表現で遊んでも面白いでしょう。この中で新しい価値が生まれて、それが利益につながり、そして、みんなの居場所になれるよう頑張っています」

松山ケンイチさん
Makoto Nakagawa(CUBISM)
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)、ニット4万5100円(レンコントラント)、シャツ1万8700円 (ビームスF)、パンツ5万7200円(ベルナール ザンス)、シューズ3 万9600円(ポルペッタ/以上ビームスF TEL 03-3470-3946)

もうひとつ、『momiji』が手掛けているのが伝統工芸とのコラボ。20年以上、俳優という仕事を続けている松山さんは、「1人ではできない仕事。僕みたいな田舎者をいろいろな人が生かしてくれたからこそ、今があります。だからこそ、これからは自分が目の前のものを生かす立場になりたい」と語ります。そういった意味では、伝統工芸とのコラボも松山さんにとって大きな挑戦です。冒頭、身につけていたブルゾンのポケットに施された『金彩』もそのひとつ。ほかにも、青森県十和田市の南部裂織、石川県金沢の加賀蒔絵(まきえ)、京都府太秦の金唐革(きんからかわ)、大阪府枚方市の和彫などとのコラボを考えているそうです。


attesa act line
アテッサ act line「at8185 62e」
CITIZEN

遊びも仕事も謳歌する男性のための腕時計

ACT Line(アクトライン)は、スーツスタイルとカジュアルの両方で使える、男らしくタフでありながらシャープなデザインが魅力。削り出しのアート作品のような力強さを称えたケースは、ベゼル側面に配したオレンジの差し色が絶妙なアクセントとなり、「アテッサ」ならではの洗練された佇(たたず)まいと妥協のないデザイン性の高さを物語っています。

太陽光や室内のわずかな光を電気に換え、時計を動かし続ける光発電「エコ・ドライブ」によって定期的な電池交換は不要。「10万年に1秒の誤差」とされる原子時計をもとに送信される標準電波を受信するため、常に正確な時を刻み続けます。

独自技術の結晶である「スーパーチタニウム™️」を採用し、驚きの軽さと高い対傷性も実現しています。ステンレスと比べて約40%軽量で、5倍以上の表面硬度を誇ります。また、光の約99%を透過させることで反射を抑えるクラリティ・コーティング技術によって、ビーチなど陽の強い環境下でも時刻をはっきりと読み取ることができるよう仕上げられています。

CITIZEN ATTESAブランドサイト


二拠点生活で
農家が撮影現場に
遊びに行く感覚になった

現在は、東京と田舎で二拠点生活を送る松山さん。そこでは農業など、自然と向き合う暮らしをしています。

「生まれてから16年間、田舎暮らしをしてきて、16歳で上京しました。そして、同じ年数を東京で過ごした32歳のときに、田舎のゆったりした時間でためてきた何かを使い切った感覚になったんです。東京で過ごしたからこそわかる田舎の価値にも気づけたし、農業や釣りなど、やりたいことが出てきた。それが二拠点生活を決めた理由です」

東京と田舎で過ごす時間は、およそ半々。しかし、「時間の流れ方は全く異なる」と言います。意外にも、自分と向き合う時間が多いのは東京なのだそうです。

松山ケンイチさん
Makoto Nakagawa(CUBISM)
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)、3ピーススーツ23万2100円(ゴタイリク)、ネクタイ1万3200円(ジョセフ アブード/共にオンワード樫山 お客様相談室 TEL 03-5476-5811)、シャツ1万7600円(ビームスF)、チーフ8580 円(ホリデー & ブラウン/ともにビームスF TEL 03-3470- 3946)

「東京にいるときは仕事以外で外出せず、自分と向き合う時間が多いんです。でも、田舎では野菜や動物など、生き物と向き合っている。農業をやっているときは、夢中になっているから時間の感覚もなくなりますね。生き物と向き合っていると、そこを通じて人間を考えるようになるんです。例えば、植物は常に生存競争をしています。一番高く成長すると日光がたくさん当たるけれど、強風の影響も受けやすい。実は2番目の植物が一番賢いのかもしれません。人間も同様かもしれない…と、どのような人が最終的に1番になるのか? なんて考えたりしますね」

『momiji』の活動、そして二拠点生活は、松山ケンイチという俳優を確実に成長させています。東京で暮らし、『momiji』を始める前は、俳優に10割の時間と力を注ぎ込んでいた松山さん。「役について、ああでもない、こうでもないと考え続けて、深く掘り下げ過ぎていました。そうなると、どうしても狙いにいった表現になってしまって、役に多面性が生まれない。結果、監督にもお客さんにも伝わらないんです。力み過ぎていたんですね」と振り返ります。そして今、『momiji』の活動や二拠点生活を経て、俳優として、これまでとは異なる視点を持てるようになったそうです。

「ものづくりにも背景やストーリーがあるように、役にも背景があります。背景を無視して脚本の台詞(せりふ)や演じるシーンだけで考えると、(演技そしてその世界観が)とても狭いものになってしまいます。僕は38歳なので、いま30代後半の役が多くなってきていますが、そんななか30代後半の人間の人生を1時間や2時間で表現できるわけがありませんよね。だからこそ、その背景を想像ながら台詞を読み解いていきます。そのとき、自分の認識の幅が広くなければ、どうやっても解釈しきれない部分が出てくる。そこで僕の場合は、『momiji』の活動や二拠点生活を実践してきたことで複数の視点が持てるようになったということで、その認識に奥行が増してきたと実感しています」

そんな松山さんは、「今では農家の人が、撮影現場に遊びに行っている感覚です」と笑います。自らの行動範囲を広げたことで、物事に対する認識の幅も広がったようです。役や作品をさらに深く、そして多方面から見つめることで、人の心を動かすに充分な奥行をさらに広げたのでしょう。

「俳優がやるべきこと、やってはダメなことを気にしなくなりました。多分、誰よりも自由に演じているんじゃないかな。もしかしたら、周囲からは『その表現ってどうよ?』と思われてるかもしれないけれど、ジャッジするのは監督です。面白かったら生かせばいいし、ダメならカットすればいい…。現場でどれだけ可能性を表現できるか、それをいま大事にしています」

わからない未来を
怖がるのではなく、
楽しめるような
心を持ちたい

二拠点生活で自然と向き合い、『momiji』の活動では演じること以外での新しい表現に挑む松山さん。不惑の40代を目前に、より脂が乗ってくる今後目指すべき未来を尋ねたところ、「田中 泯さんの踊りを観に行って、感じたことがあります」と切り出しました。

田中 泯さんは、俳優であり世界的なダンサーです。そのときの舞台では、客席に向かって板が伸びていて、その板の上を踊り手さんがゆっくりと後ろ向きで歩き、板から落下する演出がなされていたそうです。

「それを観たとき、『これって時間の流れだな』と感じました。時間は過去・現在・未来へと流れています。板と演者を、時間の流れだと考えてみてください。後ろ向きに進むと過去は見えるけれど、未来は見えない。僕たちも同じで、過去のことはわかっても未来のことはわかりません。どんなに未来に対処をしても、想定外のことは起こってしまうものではないでしょうか。でも、いろいろな視点を持って物事を知ることで、少しだけ予測ができたり、ポジティブになれるんじゃないかとも思うんです」

松山ケンイチさん
Makoto Nakagawa(CUBISM)
腕時計(ACT Line「AT8185-62E」)15万9500円(アテッサ/シチズン時計 TEL 0120-78-4807)

未来は誰にも予想できないもの。最後に松山さんは、自分なりの対処方法を語ってくれました。

「いろいろな人と関わって、その人生をうかがって『面白いな』とか『悲しいな』と感じる。そうやって心を動かしながら、自らの未来に向かっていくことが、先が見えない未来への1番の対処方法だと思っています。俳優業も『momiji』もこれから先、どうなっていくのかなんて僕自身にもわからない。ただ、わからない未来を怖がるのではなく、楽しめるような心を持てるよう常に意識をしています」

◇ ◇ ◇ ◇

PROFILE
まつやまけんいち/1985年3月5日生まれ、青森県出身。ホリプロ男性オーディション『New Style Audition』でグランプリを受賞しデビュー。モデル活動を経て、2002年のドラマ「ごくせん」で俳優デビュー。映画『アカルイミライ』で映画初主演を飾る。2005年には映画『男たちの大和/YAMATO』で第30回日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得。人気キャラクターのL役を演じ大ブレイクを果たした『デスノート』では、同優秀助演男優賞を獲得。近年は、映画『BLUE/ブルー』『ノイズ』『川っぺりムコリッタ』『ロストケア』で主演を務める。2023年はNHK大河ドラマ『どうする家康』、TBS1月期金曜ドラマ『100万回言えばよかった』に出演。俳優としての独自の立ち位置を切り開いている。現在は田舎に居を構え東京との二拠点生活を送る。2022年にはアップサイクルブランド「momiji(モミジ)」を立ち上げ、活動を続けている。

【CITIZEN ATTESA ACT Line AT8185-62E

act line at818562e

・キャリバーH800
・ケースサイズ/径42mm × 厚さ10.8mm
・ケース素材/スーパーチタニウム™️
・ケース表面処理/デュラテクトDLC(ブラック色)
・ガラス/サファイアガラス(クラリティ・コーティング)
・動力/光発電エコ・ドライブ
電波受信/日中米欧電波受信
持続時間/光発電10カ月(パワーセーブ作動時)
・防水/10気圧防水
・価格/15万9500円


●お問い合わせ先
シチズン時計
TEL 0120-78-4807

ATTESAブランドサイト

ATTESA AT8185-62


Model / Kenichi Matsuyama
Photo / Makoto Nakagawa(CUBISM)
Styling / Takahisa Igarashi
Hair & Make-up / Masakazu Igarashi
Text / Tsukasa Sasabayashi
Edit / Ryutaro Hayashi(Hearst Digital Japan)