※この記事は「Esquire US」のスタイルディレクター、ジョナサン・エヴァンスのコラムです。彼の守備範囲はファッションばかりでなく、グルーミングおよびアクセサリー、そしてもちろんスニーカーまでカバーしています。

ファッションヲタクたちは、高価な買い物を"投資"として語ることが大好きです。皆さんもブーツに10万円をつぎ込んで、「これは自分への投資だ」と言い聞かせたことはありませんか? もちろん、自分に対して…です。

ここで言う投資とは、快適な老後を過ごすための資金として現金化するようなものではありません。ワードローブやパーソナルスタイル、そして「良いものを必要な分だけ買う」ことが「より良い生活」につながるという考え方になります。ですが、このこのルールにも例外はあります。それは…時計です。

「スニーカーは?」、という意見もあるかもしれません。確かにスニーカーを売って利益を得ることもできます。ですが、利益を最大限引き出すためには、スニーカーを長い間温めておく必要があります。また、購入したデザイナーズ・アイテムが、それに見合う転売価格を持つ宝物になることを期待することもできますが、それがあまり当てにならないことのほうが多いでしょう。

今、評価の高いヴィンテージウォッチを買って、これから何年も定期的に着用し、よほどひどいダメージを与えてさえいなければ、ほとんど値崩れの心配なく売ることができるでしょう。運が良ければ、売却して買値よりも多くのお金を手に入れることも不可能ではありません。

「運がいい」と言えば、10年ほど前にヴィンテージ・ロレックスを手に入れた人はいませんか? もし、あなたのクローゼットにあったなら、うれしいお話があります。

ここ数年のヴィンテージウォッチ市場を見てきたコレクターやコレクター志望の人なら、この話はさほど驚くようなことではないかもしれませんが…。一読しておいて損はないでしょう。

rolex daytona
Courtesy
中古時計を取り扱うオンラインショップ「Bob's Watches」によると、ヴィンテージのロレックス「デイトナ」の平均価格は、過去10年間で3倍以上の2万2000ポンド(約344万円)以上になっているそうです。

「ロレックス」をはじめとする、高級時計を取り扱う世界最大の中古eコマース小売店、「Bob's Watches」社が最近行った過去の販売データの分析によると、「サブマリーナー」や「デイトナ」は過去10年間でかなりの価値を上げているとのこと。

実際、公表されているレポートによると、2011年から2021年にかけてヴィンテージの「ロレックス」の価値は、金や不動産よりも高くなっています。株式市場も同じような速度で成長していますが、さすがに株は腕につけて時間を確認するようなことはできませんので…。

中古時計の売買に携わる人々にとっては好景気の時代で、例えば「ロレックス」のヴィンテージ・クロノグラフやダイバーズウォッチのように、道具的でスポーツ性の高い時計であれば、なおさら好景気と言えるようです。しかし、どの市場でもそうであるように、さまざまな理由からいつ破綻が生じるかおかしくないのも、事実ではあります…。

rolex sky dweller
Justin Morton
ロレックス「スカイドゥエラー」は、2012年に登場した新しいモデル。ですが、それでも近年では、リセール価格が2倍以上になっています。

「Bob's Watches」のレポートで特に興味深いのは、前述の「サブマリーナー」や「デイトナ」から「エアキング」や「スカイドゥエラー」に至るまでが、パンデミックの期間中に価値が急上昇したということ。しかしこれは、なぜでしょう?

在宅時間が増えたことによって、人々は時間に対して新たな概念を持ち始めたのでしょうか…。そしてその価値観が、この先ずっと続くと思っているのでしょうか? 世の中が今後(それなりに)正常化されたときのことも、視野に入れての考えなのでしょうか?

ですが、そんな彼らはその時計たちが持つ魅力の深層まで、単にたどりついただけかもしれません。自信を持ってその時計を評価し、それをお金で正直に表現しているだけかもしれません。

繰り返しになりますが現在における時計というアイテムは、心行くまで所有することもできた上で、スター・ウォーズのフィギュアのようにタイミングを待つことなく、その価値を高め続けることができるものになっています。

実際には強く言えませんが、私が思うに…もしあなたの許容範囲が「多少のかすり傷程度までなら」というレベルなら、今こそ「自分の腕にしているものは何か?」 をじっくりと考察すべきときと言わせていただきます。

Source / ESQUIRE US
※この翻訳は抄訳です。