子供の頃、大人から叩かれるなどの体罰を受けた経験のある方は、少なからずいるのではないでしょうか。

 しかし、「エルゼビア(El Sevier)」という学術誌に掲載された新しい研究論文によれば、「体罰を受けた子供には、もっと深刻な幼児虐待を受けた場合と同じような精神面への悪影響が後になって出る可能性があり、そのことから研究者らは体罰を幼児虐待と同様に扱うべき」という考えを発表しています。  

 カナダのマニトバ大学、米国エモリー大学医学部、米国疾病予防管理センターの研究者たちが共同で行ったこの研究では、19歳から97歳までの成人8000人以上を対象に行われた以前の研究で集まったデータを分析。肉体的および精神的な虐待が及ぼす、長期的な健康に与える影響を調査したそうです。 

 オリジナルのデータは、肉体的・精神的な虐待や幼児に対するネグレクトなど、「有害な幼児期の体験(Adverse Childhood Experiences、以下ACE)」の実例を調べた際に使われたものです。これらの「ACE」と、成人後の鬱病や飲酒、薬物の使用、その他有害な影響を精神に及ぼすものとの間につながりがあることが、統計的に明らかになったそうなのです。

アジア系の回答者は、体罰の経験が平均よりも低い

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 今回発表された論文の研究者たちは、この以前のデータを調査する過程で、「ACE」とは見なされていない体罰によっても、より深刻な虐待と同様の影響が出ることを示す重要なつながりを見つけましたそうです。それを踏まえて研究者たちは現在、体罰も「ACE」と見なすべきと主張しているのです。

 以前の調査では、回答者に対して、18歳になるまでに何回くらい尻や手足を叩かれたかを尋ねました。そして「体罰を受けたことがない」、または「1、2度しかない」と答えた回答者は、「ノー」に分類されていました。研究者たちは親のなかには、一度は体罰を加えたものの、その後は二度としなかった者もいると判断し、そうした者は「ノー」同然であるという判断です。そして一方、年に数回以上体罰を受けた回答者に関しては、「イエス」と分類したそうです。

 次に研究者たちは、人口動態の違いを考慮してこのデータに修正を加えました。黒人、ラテン系、その他の人種の回答者は平均よりも体罰を受ける傾向がわずかに高く、また、アジア系の回答者は平均よりも低いことが分かりました。

 どの場合にも、子供時代に体罰を受けた回答者はそうでない回答者に比べて、うつ病に苦しんだり、自殺を試みた経験があり、過度に飲酒したり、違法な薬物を使用する可能性が高いことが分かりました。

この研究データに基づいた結果について…

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 研究者たちは、体罰が「子供たちに対する暴力と同一線上にある」ことを示すものとしています。

 子供への“体罰”は、より深刻な子供への“虐待”と“同じではない”と判断しつつも、暴力や虐待にエスカレートしやすいというのが研究者たちの考えです。また、体罰を与える側の親は、体罰以外のもっとひどいやり方で子供を虐待する傾向が強い可能性もあり、それが体罰と、成人後に表れる悪影響との関連性につながっていることも考えられます。

 もちろん子供の頃に体罰を受けた人が、必ずしも大人になってひどいうつ病に苦しんだり、薬物服用者になるとは限りません。また、体罰を受けると、確実にメンタルヘルスに悪影響が出るという訳でもありません。

 しかし、子供に対する体罰が、子供の発育やメンタルヘルスに良い影響を及ぼすことを明らかにした科学的な研究は、これまでひとつもないという研究者たちの指摘もまた、事実なのです…。今後のさらなる研究に期待してやみません。

Source / Men's Heaith
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。