※本記事は、サンフランシスコ在住ジャーナリスト、カイル・ミゾカミ氏による取材をもとにした寄稿です。

世界における核兵器の総数量は、2017年になってやや減少しています。核兵器を保有する9カ国全体で、500発ほどの縮小がなされたようです。

2018年に入って、アメリカとロシアの核軍縮がさらに進んでいるなか…中国、インド、そしてパキスタンは、わずかながら増強をしているのです。核兵器の分野においては新参者である北朝鮮に関しては、その実力および保有数は未知数となっていますが。

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非営利で運営されているストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が、年度ごとの世界の紛争地域の状況、そして、核兵器の配備状況といった情報をレポートしています。発表されたばかりの2018年度の年報には、核軍備に関してやや興味深い調査結果が掲載されていました。

ロシアの弾道ミサイル

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2011年2月5日にアメリカ合衆国とロシア連邦の間で発効した核兵器の軍縮条約「新戦略兵器削除条約(New START)」に応じて、アメリカとロシア両国は現在、それぞれ1550発以上の核兵器を保有しないという方針に基いて核軍縮をおこなっています。

2018年2月の期日に際し、ロシアは1,444発、アメリカは1,350発という保有数を明らかにしました。両国において恒常的に軍備の増減がなされているのは、各艦ごとに数百の弾頭を装備している潜水艦です。偵察艦として入出港を行うもの、そして、基地に配備されているものなどさまざまです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Signing of New START Nuclear Arms Treaty with Russia
Signing of New START Nuclear Arms Treaty with Russia thumnail
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両国間の緊張状態とはまた異なる次元ですが、この「新戦略兵器削除条約」に対してはそれぞれ共通した姿勢を保っているようです。そしてその事実は、トランプ大統領の掲げる冷戦後の水準にまで核兵器保有量を復活させるという野望に反しているのではないでしょうか。

インドのアグニV

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ところが、中国、インド、パキスタンの各国は、それぞれ核軍備を増強しているのです。

インドにおいては120発から130発か130発から140発かなのか定かではありませんが、10発ほどのの増強が行われたとのこと。ライバル国であるパイスタンもそれに伴い、130発から140発か140発から150発への増強をお粉たそうです。

「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」では、両国が今後も核兵器軍備の増強を継続してゆくものと見ています。パキスタンの通常兵器の規模はインドより劣るので、核軍備のさらなる強化が懸念されています。

2017〜18年という期間に、10発の核兵器増を行ったのは中国です。この国の核戦略には、非常に興味深いものがあります。

中国は国防上必要最低限の規模に抑えるとう方針に基き、保有数を制限しています。核軍拡競争の複雑さと、そのために必要な巨大な軍事予算支出とが釣り合わないという理由によるものです。他国からの核兵器攻撃に対する報復のために核を保有する、確証報復(Assured Retaliation)という信念に基づいています。

中国がこの後も、核軍拡を推し進めていくか否かは不明です。

同国が保有する核の資源は他国と比較して多いとは言えません。そのことが、低い保有数が維持されている背景にもなっているのです。核軍拡を行うのなら、政府には大きな役割と決断が求められます。

アメリカの核兵器戦略に対する中国の警戒が、現状に反映されていると考えられます。アメリカの国防は中国に対する核攻撃を目指しているわけではありませんが、それを警戒する中国側は、ミサイル防衛の強化も検討しているようです。

トライデント弾道ミサイル潜水艦

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イギリス(215発)、フランス(300発)、イスラエル(80発)といった以前から核弾頭を保有する国々においては、近年、その数量において変化が見られません。

実情は不明なものの、10〜20発を保有すると目される北朝鮮においても、状況はおそらく大差ないものでしょう。

核兵器を巡る情勢においては、各国の思惑が複雑に入り混じっています。

そのなかで、人類の歴史を瞬時に数千年単位で巻き戻してしまう可能性のある核兵器の最大保有国の2国が、軍縮協定に応じる姿勢を見せているのは朗報と言えるでしょう。この両国の現在の姿勢を見る限り、新たな協定が議論されることは、しばらくのあいだはなさそうです。

その一方で印パの軍拡競争に関しては、とっても不安要素となります。

中国の核兵器保有数は小さな水準を維持していますが、果たしてそれがそのいつまでまま続くでしょうか? もしくはどこかで転換がなされるのでしょうか? これからも目が離せません。

Source / POPULAR MACHANICS
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。