この記事をざっくり説明すると…

  • 核融合成功の最年少ギネス世界記録は、なんと12歳です。
  • しかし、自家製の核融合炉は珍しいとは言えません。すでに10人以上の子どもたちが、「核融合者」リストにその名を連ねているほどです。
  • それは電気を使って重水素を分解し、ヘリウムと高エネルギーの中性子を生成する仕組みの小形融合炉になります。

 アメリカの天才中学生が、小型の核融合炉をつくった史上最年少記録としてギネス記録にその名を刻んだと、サイエンス系ウェブメディア「Futurism(フィーチャリズム)」が報じています。

 核融合炉とは原子核融合反応を利用したもので、原子炉の一種です。水素やヘリウムなどの軽い原子による核融合反応を利用して、エネルギーを発生させる装置のことになります。それは21世紀前半における、実用化が期待される未来技術の一つとして知られています。

 「電気を使って重水素の二つの原子を加速させ、ヘリウム3(ヘリウムの同位体の一種で、通常のヘリウム原子よりも軽い安定同位体)の原子に融合させることで、中性子の放出に成功しました。これで水を温め、蒸気機関を回転させ、電気を発生させることができます」と、テネシー州メンフィスに暮らす中学生のジャクソン・オズワルトくんは動画の中で語っています。

 「ここでは、完全な核融合ではなく、チャンバー(装置内の小さな空間)内でプラズマができる過程を紹介します」と、動画の中でオズワルトくんはデモンストレーションを行っています。その動画によると、最大の問題はチャンバーのための気密性をどのように確保するかということだったそうです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
How A 12-Year-Old Achieved Nuclear Fusion - Guinness World Records
How A 12-Year-Old Achieved Nuclear Fusion - Guinness World Records thumnail
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 「私たちに、あらかじめ十分な知識があったわけではありません」と、笑顔で補足するのはオズワルトくんの父親です。

 さて、ここで頭に入れておくべき点がいくつかあります。

 オズワルトくんは勤勉かつ聡明な少年ですが、そんな彼もまた核融合炉の自作を目指すコミュニティの一員に過ぎないということです。そのコミュニティの中には、大学への学費を賄(まかな)うために核融合炉を自作し、販売しようとした大学生もいると言いいます…。

 そんな彼らの自作原子炉の取り組みは、興味深く刺激的なものに映ります。ですが、用いられるエネルギーを上回る核融合を目指す商用の核融合プロジェクトと比べれば、はるかにエネルギー効率の悪いものでしかありません。例え核融合を実現できたところで、それを運用するために必要なエネルギーを超えるエネルギーを生み出せない限りは、動力源として不十分であることは明らかです。

 わずか12歳で核融合炉の実験を成功させたオズワルトくんの実績ですが、ギネス世界記録に正式に認められたことで、これまでの世界記録を丸2年ほど更新したことになります。そのことで、自作の装置で核融合を成功させた「核融合者(fusioneers)」のリストに名を連ねることになりました。リストの管理人であるリチャード・ハル氏も、もちろん一員として名を刻んでいます。

 オズワルトくんがこの偉業を成し遂げたのは、2018年のことです。核融合者として総合リストにも高校生リストにも、すでにその名が登録されています。「核融合者」として認められたことで、学校の化学賞を受賞したり、7万5000ドルという大学奨学金も獲得しています。

 核融合を成功させたとして、その実績をどこに持ち込むかで得られるものが大きく変わることがあるようです。なので、よくよく考えておかねばなりません。

 そんなオズワルトくんも現在では15歳となり、次の段階へと到達しつつあるようです。「オズワルトくんは以前ほど、この実験に打ち込んでいるわけではありません。どうやらすでに次のテーマを見つけているようです」と、ギネスワールトレコーズも伝えています。12歳で核融合を成し遂げた天才少年にとって、その未来は大きく開けているに違いありません。

Source / POPULAR MECHANICS
Translation / Kazuki Kimura
※この翻訳は抄訳です。