米政府がUFO研究の話をしたがらない理由

2017年12月17日に「ニューヨーク・タイムズ」が、一見大スクープと思える話を記事として公開していました。

この記事によると2007年から2012年にかけて、米国防総省傘下の国防情報局(DIA)では「先進型航空脅威特定プログラム(Advanced Aerospace Threat Identification Program)」と呼ばれる小規模な取り組みが進められていたとのこと。

このプログラムのミッションを簡単に言うと、UFOに関する報告を調査して、それが米国への脅威になるかどうかを評価するというものでした。「これは一大事!」と、誰もが思える話です。が、本当にそれほど重大な取り組みだったのでしょうか?

私はかつて国防総省で働いていました。そしてその間に、非常に興味深い超極秘の取り組みに何度か参加したことがありました。

「特別なアクセスを必要とするプログラム(Special Access Programs)」と呼ばれていたこれらの取り組みは、実際にトップシークレットよりも、さらに高度な機密事項として扱われていました。この種の取り組みに参加する人間は、「トップシークレットの特別に隔離された情報(Top Secret Special Compartmentalized Information (TS/SCI)」に触れるためのセキュリティ・クリアランスをパスする必要があり、さらに身元や素行を精査され、その後で具体的なブリーフィングを受ける必要がありました。

参加者はこうしたプログラムが存在することすら口外できず、プロジェクトのなかで、どんなことが行われているかといったことを明かすのは論外とされていました。

こうした取り組みは、その存在が明らかにされると大きなニュースになる類いのものですが、しかし実際には、退屈なものもよくありました。

実際のところ、国防総省では膨大な数の事柄を研究しています。たとえば、将来における地球温暖化の影響や、中国の(軍事)戦略家が子供の時に遊んだゲームといった事柄も研究対象のなかに含まれます。

こうした研究の多くは極秘事項に分類されていますが、そうなる理由としては、主に次のふたつが挙げられます。

一つ目は、「潜在的な競合相手や敵の目から隠したい」という非常に明らかな思惑。そして二つ目は、簡単に言うならば政治的な思惑です。つまり、政治的な指導者や国防総省にいる他部門のリーダーたちに、その存在や実態を追求され、「恥をかきたくない」という関係者間におけるこじんまりとした思惑です。

このふたつの思惑が同時に存在することもありますが、今回報じられた件については、どうも後者の理由しかないように思えます。

「UFO」の名付け親は
米空軍の将校であった!

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Getty Images 
1952年7月30日に、米空軍の将校たちが記者会見を行い、そのなかで国内各所にて目撃が報告されている「未確認物体」についてのデータを収集するための試みのひとつとして、200台以上のカメラを設置する計画を発表しました。

国防総省では、以前からUFOに関する研究プログラムが何度か行われていました。

実際、「未確認飛行物体(Unidentified Flying Object、UFO)」という言葉を思いついたのも、エドワード・ラッペルト大尉という米空軍の将校でした。ラッペルト大尉は「プロジェクト・ブルーブック」として知られる、もっとも大規模なUFO研究の取り組みで初代の責任者を務めた人物です。

米空軍によるUFO研究は1947年にスタートし、その後20年以上にわたって続けられました。そして、これらの取り組みに正式に終止符が打たれたのは、1969年のことでした。

その間、この「ブルーブック」の取り組みに関しては、何度か浮き沈みもありました。ですが、ラッペルト大尉が責任者だった当時は、非常に信用される存在だったのです。その結果、研究チームのもとには、合わせて1万2618件もの目撃情報が寄せられました(米国立公文書館に足を運べば、皆さんも機密扱いではなくなった書類をみることができます)。

また、今はデジタルの時代なので、それらのファイルをオンラインで入手することも可能です。それでもまだ十分ではないという方は、ラッペルト大尉自身がまとめた、同プロジェクトのサマリーを読んでみてください。

私の見方を信じる人も信じない人も、おそらくこれをさっそく調べてみるといいでしょう。そうしてまた、同プログラムの運営資金の出所が国防総省の「秘密の」予算であったという点、そのために同プログラムが機密扱いされたという点を根拠に、米政府による陰謀説を主張する人も少なくはないでしょう。また実際に、UFOの目撃情報は、この10年間に増加しています(報告件数の数字を信じるとすればの話ですが)。

しかしながら、公に認められた事実が私の見方を支持しています。

私の見方というのは、UFO研究が機密事項扱いされている本当の理由が、米政府による大規模な「真実」の隠蔽といったものではなく、もっとずっと穏やかなものであるというものです。

そして、今回報じられた研究には、4年間でわずか2200万ドル(約24億8600万円)の予算しか割り当てられていませんでした。が、この金額は国防予算全体のなかでは取るに足らないものです。この金額では年平均440万ドル(約4億9720万円)にしかならず、研究に携わった人数は多くて10人程度といったところでしょう。

そうした次第で、今回報じられたUFOに関する研究が機密扱いされていた主な理由は、「人前で恥をかきたくない」という政治的かつこじんまりとした思惑の結果だといえるのです。

それでも今回明らかになった話が、興味深いことに間違いありませんね。

Source / ESQUIRE US
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。