コンバーチブルのスーパーカーというのは、昔から妥協がつきまとうものでした。「トップを取り払って太陽を感じながらドライブしたい」と思うと、同じクルマのクーペに比べて、スピードとフィーリングを我慢しなくてはならないことになりますので…。また、トップの上げ下げに必要な仕組みのせいで重量もその分重くなり、そのクルマの極めて高い性能を十全に引き出すことができなくなります。これは物理的に、避けようのないことになります。
ただしマクラーレンの場合は、そうではありません(同社は、ファッションモデルの所属事務所よりも減量に気を遣っていました)。
そんなわけでマクラーレンは、コンバーチブルカーの現状を打破するカタチで「720S Spider」を発表しました。クーペをコンバーチブルカーに仕立て直すためには常に、いわば産業用巨大缶切り以上のものが必要となります。マクラーレンの場合はこのプロセスのために、オーダーメイドのカーボンファイバー製モノコックボディと、カーボン製パネルを使った電動折りたたみ式の屋根を開発する必要がありました。このルーフトップの開発に関して、マクラーレンは3つの特許を世界で取得しています。
ルーフトップの重量は、わずか49キログラムで(旅行に出かけるカップルの荷物とほぼ同じ重さ)です。これはハードトップのよりも重さはあります。ですが、総重量は1332キログラム。このクラスでは、最軽量の「スパイダー」として誕生することになったのです。そして、路上でのパフォーマンスについては、クーペとの違いにほとんど気がつかないことでしょう。
「720S Spider」は、ルーフを上げた状態での0−100km/時加速は2.9秒。クーペの場合と変わらず、最高時速は212マイル/h(約341km/h)です。また、ルーフを下ろした状態では同202マイル/h(約325km/h)で、ルーフを上げた状態とほぼ変わりません。この驚くべきスピードと地面に張りついたようなハンドリング性能は、ドライバーの周囲や上空でほこりが舞い、風が吹き付ける状況ではいっそう顕著に体感できるでしょう。
ルーフを下ろしたときでも、車外の風景を楽しめるような仕掛けもしっかり用意されています。オプションのスマートガラス(電流を通して色や透明度を変えることができるガラス)を使ったルーフは、7500ポンド(約105万円)で入手可能となっています。
マクラーレンでは、「2019年に販売される同社のクルマの半数は、スパイダーになるだろう」と見込んでいます。そう聞くと、同社がクーペとスパイダーとのギャップを埋めようと一生懸命になっている理由が、ここで皆さんもお分かりになったかと思います。なお、このルーフの開閉時間はわずか11秒で、同クラスのコンバーチブルでは最速。しかも、綺麗に効率よくボディに収まり、開閉中もほとんど動作音はしません。
マクラーレンの開発陣が手がけたこの力作に、今後も注目しましょう。
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◇詳細
マクラーレン「720S Spider」
販売価格/3788万8000円
公式サイト
From Esquire UK
Translation / Hayashi Sakawa
※この翻訳は抄訳です。