女王が映像のお蔵入りを希望した理由も、ここで明らかになりました。
Getty Images
Royal Family
1969年6月21日、イギリスのロイヤルファミリーの私生活を映したドキュメンタリー番組『Royal Family(原題)』が放送されました。
英国民の4分の3が視聴したというこの番組は、「イギリスだけでなくアメリカでも大好評を博した」、と英『テレグラフ』紙は報じています。ですが放送後、その映像はお蔵入りしてしまったそうなのです。
リチャード・カウストン率いる番組スタッフは当時、18カ月にわたりロイヤルファミリーに密着。フィリップ王配がスコットランドにある別荘・バルモラル城でソーセージをグリルする様子から、エリザベス女王が当時の大統領リチャード・ニクソンと会話する姿まで、王室メンバーの日常を追いかけています。
完成された映像を見た女王は、その出来栄えにはおおむね満足していたそう。
映像を編集したマイケル・ブラッドセルは2017年、「女王に完成した映像を披露したときはとても緊張しました。女王が映像を見てどう思うのか、まったく想像がつかなかったからです ―― 女王からは、『放送時間が長すぎるのでは?』というフィードバックをいただきましたが、番組ディレクター、ディック・カウストンの『2時間でちょうどいいと思います』という説明に納得されていました」と、米ケーブルテレビ、スミソニアンチャンネルの特番で振り返っています。
現地時間の2018年8月22日、米ABCで放送されたドキュメンタリー番組『The Story of the Royals(原題)』に出演した専門家曰く、その映像をきっかけに、英国王室に対する国民やマスコミの関心は一気に高まったのだとか…。
「とても興味深いことに女王は1960年代、『世間からかけ離れている』や『近寄りがたい』といった王室のイメージを拭い去ろうとしていました」と語るのは、書籍『Women’s Suffrage in the British Empire』を共同編集したローラ・メイホール。
「知られざるロイヤルファミリーの裏側を公開し、王室メンバーも私たちと同じ人間であるということを証明したかったのだと思います」と。
Getty Images
Getty Images
ドキュメンタリーのおかげで、王室のイメージアップを狙った作戦は大成功となりまた。しかし、女王はのちにその映像のお蔵入りを希望したのです、その理由はなぜでしょう。
とはいえ、その理由はいたってシンプル。ドキュメンタリーは、まるでリアリティ番組のようだったから…。リアルかつ人間味に溢れていたため、王室メンバーはセレブのように世間の注目を浴びてしまったからだったのです。
王室の歴史に詳しくドラマ『ザ・クラウン』のコンサルタントをしているロバート・レイシーは、「これ以上自分たちの私生活を公にすると、自分たちの価値が下がり、王室ならではの魅力がなくなってしまうと感じたのでしょう」と予想しています。
王室伝記作家のヒューゴ・ヴィッカーズも「水門を解放するようなものでした。マスコミの関心が一気にヒートアップしたのだと思います ―― ロイヤルファミリーのことを、世間はもっともっと知りたくなったのでしょう」と、米ABCのドキュメンタリーでコメントしています。
女王の希望により、しばらく世に出ることのなかったロイヤルファミリーのドキュメンタリー…。
ところが2011年、ロンドンのナショナル・ポートレート・ギャラリーで映像の一部分(90秒)が公開されました。その映像には、女王をはじめフィリップ王配、チャールズ皇太子、アン王女の姿が。
一家はテーブルを囲み、女王が「ヴィクトリア女王の前で政府の高官が転んだ」というエピソードを披露しています。ですが、それ以外は未公開で、映像を収めたテープはいまだどこかに隠されたまま…。一体どんな映像が収録されているのか、とても気になるところです。
From Harper’s BAZAAR
Photograph / Getty Images
Translation / Reiko Kuwabara