ウィリアム王子とキャサリン妃が現地時間8月22日(月)、「王子王女たちを通わせる」と発表したことで名門プレパラトリー(プレップ)スクールの存在がこのタイミングで話題となりました…。

英国名門パブリックスクール・ハロウ校が「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」として開校したニュースにより、日本でもロイヤルたちが通ってきた“正真正銘”の名門校がぐっと身近な存在になったと言えるでしょう。そこで、ヨーロッパの王族が実際に子女を通わせている学校をご紹介。その前に、「プレップ・スクール」「パブリック・スクール」など世界の名門校を語る上で欠かせない、基本用語をおさらいしてみましょう。

プレパラトリー(プレップ)・スクール(Preparatory school)

「準備校」と呼ばれる学校。基本は大学、とくに名門大学進学の準備をするための大学予備校、カレッジ・プレパラトリー・スクールを指します。日本で言えば、中高校生くらいの年齢で通います。上流階級のプレップ・スクールは単なる予備校ではなく、多くの場合寄宿学校で男女別学。試験準備から文化芸術、スポーツに至るまで高度な教育が施されます。

ところが英国では意味が異なり、名門インディペンデント・スクール(後述)への入学を準備するため、日本の小学生にあたる12歳くらいまでの子どもが通う学校を指しています。早いと3歳くらいから受け入れる学校も…。今回、ジョージ王子たちが通うことになったランブルック・スクールは、これに該当します。いずれも「学費が桁違いに高い」ということは言うまでもありません。

インディペンデント・スクール(Independent school)

「独立学校」とその名のとおりの意味ですが、単なる「私立」とは異なり、基本的に非営利組織として入学金、授業料以外は寄付で成り立ち、自治体や政府の資金援助を受けないため、独自の教育カリキュラムを組むことができます。教師も教員免許取得の有無にかかわらず、各分野のエリートたちを起用するなど独自の採用が可能となっています。

パブリック・スクール(Public school)

上流階級におけるパブリック・スクールとは、「公立校」を意味していません。上記インディペンデント・スクールの中でも、英国の王族専用だった学校がイングランドとウェールズにおける男子に限り、王族以外の「パブリック」にも入学を許したことでこう呼ばれるようになったごく一部の学校を指します。そのため今でも多くは男子校、通うのは王族と交流するにふさわしい貴族階級が多数派ですが、時代を経て共学に移行、欧州以外の外国人にも門戸を開く学校が増えています。日本2022年8月に開校したハロウ校の海外分校、ハロウインターナショナルスクール安比ジャパンも共学です。

13歳~18歳くらいまでが通い、その後オックスブリッジ(オックスフォード+ケンブリッジ)などの名門大学への進学が王道とされ、最初に挙げたプレップ・スクールの「英国版」かつ「特権階級バージョン」と言えるでしょう。代表的な学校にウィリアム王子やハリー王子が通ったイートン校、ウィンチェスター・カレッジ、ウェストミンスター・スクール、そしてハロウ校、ラグビー校などがあります。

それでは、世界の王族が通う正真正銘のトップ名門校を見てきましょう。

ランブルック・スクール, イングランド(Lambrook)

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英国ジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子ら子どもたちを、「バークシャーにあるランブルック・スクールに入学させる」と明らかにしたウィリアム王子とキャサリン夫妻。

そのランブルック・スクールは、一家が新しく拠点とするウィンザーにあるアデレードコテージの近くにあります。ランブルック・スクールはバークシャー郊外に52エーカーもの広さを誇るイギリスでもトップクラスと言われるプレップ・スクールのひとつ。同校には3~13歳、約560名の児童が在籍し、カリキュラムにはミツバチの飼育、フェンシング、そして乗馬なども含まれています。

もちろん英国王室とのゆかりも深く、1978年にはヴィクトリア女王の孫たちも同校に入学しています。ランブルック・スクールは基本的には寄宿学校ですが、ケンブリッジ公爵家の子どもたちは通学生となります。

アンスティテュ ル・ロゼ、スイス(Institut Le Rosey in Rolle)

14世紀に建てられたロゼ城に1880年に設立されたル・ロゼ校は、年間授業料が11万ポンド(2022年9月5日の為替レートで約1772万円)と世界一高額な学校と言われています。「王たちの学校」と知られており、卒業生には前イランのシャー、モナコのレーニエ王子、ルクセンブルクのギヨーム太公子、ブータンのダショー・ウゲン・ジグメ・ワンチュク国王、ギリシャのマリー・シャンタル王女とエジプトのファルーク国王などが含まれます。

Aリストセレブの子女も多く在籍しており、エリザベス・テイラー、ジョン・レノン、ウィンストン・チャーチルの子女もこの学校の卒業生です。100%の寄宿学校で、7~18歳の生徒が「コミュニティ・ライフ」を送れることを誇るル・ロゼでは卒業の日に皆が涙を流すほどだとか…。1月から3月の冬学期は、グシュタードにあるキャンパスでスキーに勤しみます。生徒たちはまた週末にヨーロッパ各地旅行を楽しみ文化的、国際的見聞を広めることを推奨されています。

レイクフィールド・カレッジ・スクール、カナダ(Lakefield College School)

同校は「カナダのトップ大学プレパラトリー寄宿及び通学学校」と称しており、9~12歳の生徒が集う「小さな、気遣いあうコミュニティ」を称しています。この学校も王室との密接なつながりがあります。

1978年には、英国のアンドリュー王子を海外からの交換学生として迎えています。スペインのフェリペ国王も、マドリードのアウトノモウス大学に入る前に在籍していました。英国のアンドリュー王子(※)は2019年まで名誉委員を務めていましたが、現在は同校は王子と縁を切っています。

※ジェフリー・エプスタインによる世界的少女売春斡旋事件に関わった重要人物として、被害者から提訴され2022年2月に示談に至っています

コレージュ・アルパン・アンテルナシオナル・ボー・ソレイユ、スイス(Collège Alpin International Beau Soleil, Switzerland)


デンマークのメアリー王女、ルクセンブルクのギヨーム太公子、フェリックス(フェリクス)王子の兄弟もアルプス地方にあるこの学校の卒業生です。2013年にフェリックス王子はクレア(王女)と結婚しましたが、この学校が出会いの場だったそうです。1910年に創立されたこの学校はスイスで最も古い寄宿学校で、40カ国以上から生徒を受け入れています。全校生徒300名以下、ここでの教育は個人的でプライベート、王族の学生たちにぴったりと言うところ。

過去に「デイリー・テレグラフ」紙は、「世界で最もエクスクルーシブな学校のひとつ」としてリストに挙げています。学費は年間9万9千ポンド(2022年8月時点:2022年9月5日の為替レートで約1594万円)。モンブランを臨み、スキーなどウィンタースポーツの全てのプログラムがそろっているこの学校は、「生徒には幅広い世界観を与える」をモットーにカンボジア、ガーナ、タンザニアなどへの冒険旅行も行います。

UWC アトランティック・カレッジ、ウェールズ(UWC Atlantic College)

uwc atlantic college
Handout//Getty Images

2020年、英国の「ザ・タイムズ」紙は、ヴェール・オブ・グレイモーガンにある中世12世紀の城を「ヒッピーたちのホグワーツ校」と称しました。同紙は「通常のボーディング・スクール(寄宿学校)」と違い、「寮長(housemasters and matrons)に替えてビーガンやハウスペアレンツ(※)」を据えていると表現しています。

同校また明らかに「世界平和」というコンセプトを推進しているようです。現在、同校には2人の欧州王室の子女が在籍しています。それは、スペインのフェリペ国王とレティシア妃の長女のレオノール王女(写真)、オランダのウィレム・アレクサンダー国王とマキシマ妃の次女アレクシア王女です。卒業生には、ヨルダンのライヤ・ビント・アル・フセイン王女、ベルギーの未来の女王であるブラバント公爵家のエリザベス王女などを輩出しています。校舎のひとつとなっている城は、かつて“新聞王”ランドルフ・ハーストによって所有されていたとBBCが伝えています。

同校は1934年にスコットランドにゴードンストウン校を立ち上げたクルト・ハーン博士によって、1962に創立されました。ゴードンストウン校とは卒業生に、故・エディンバラ公フィリップ王配と息子のチャールズ皇太子がいることから、こちらも名門インディペンデント・スクールと言えます。

エリザベス女王が校長であり、それ以前にはネルソン・マンデラがその職務を務めていました。多くの国々から生徒を集めるUWC アトランティック・カレッジは2年制で、生徒たちは国際バカロレア資格取得を目指して勉強します。
 
※ 主に「housemaster」は男子寮、「matron」は女子寮を仕切る教師・舎監(しゃかん)を指し、厳格なイメージ。「house parent」は寮の管理人さんのような温かい印象が強い