「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみるまでは何が入っているかわからない」

このセリフは、トム・ハンクスが映画史に残るほど印象的な演技をしたことで知られる、1995年に日本でも公開された映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』の最も象徴的なフレーズのひとつです。

ロバート・ゼメキスが監督を務めるこの作品は、第67回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、監督賞を含む6つの賞の受賞や第52回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞を受賞するなど、その年の最傑作として称えられました。また世界中に、シーフードレストラン「Bubba Gump Shrimp Co.」を誕生させるまでになったのです。

昨今の映画界では、過去の作品の続編をつくるという流れがありますが、この作品も例外ではありませんでした。しかし、いまだに『フォレストガンプ』の続編が日の目を見ていないのには理由があったのです。

この映画の原作となった、1986年に発表された同名の小説の著者ウィンストン・グルームは、この映画が10年に一度の大ヒット作であることがわかると、いち早く続編の出版を決定したのです。続編は『Gump & Co』と題し、1995年に発売されました。

ですが、この映画の続編は実現しませんでした。実際、トム・ハンクス本人によると、この映画をつくるかどうかの議論は1時間も続かなかったそうです(信じられないでしょうが、彼はお気に入りの映画3本に『フォレスト・ガンプ』を選んでいないのです)。

フォレスト・ガンプ〈2〉

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ジョシュ・ホロウィッツがホストを務めるポッドキャスト「Happy Sad Confused」で、ハンクスは「フォレスト・ガンプに第2の人生を与えるというアイデアが持ち上がったものの、続編は製作に至らなかった」と明かしました。「フォレスト・ガンプの続編を製作するかどうかの議論は、40分くらい続いたと思う」と、ポッドキャスト内で振り返っています。

「強要されるような契約書には、絶対にサインしないという構えでした。私はいつも『やる理由があるなら、やろう。でも、無理強いはできないよ』と言っています。」

現代の映画界は、リメイク、リブート、スピンオフ、マーベル・ユニバースがあふれた時代です。トム・クルーズと『トップガン マーヴェリック』が興行成績を記録したのが良い例です。ですがそんな中、トム・ハンクスが純粋な利益のために自分の過去の作品を利用する可能性を、こんなに早く否定するのは驚くべきことではないでしょうか。「ヒットしたから、また同じことをすればヒットする」という単純な商業主義に基づく判断は、ハンクスには通用しないということです。

映画『フォレスト・ガンプ』続編の脚本が白紙に

続編の脚本は完成こそしていましたが、この続編制作が白紙になる決定的な理由がありました。同映画の脚本家である、今は亡きエリック・ロスがこのプロジェクトの中止を決定するまでの経緯をインタビューで語っています。その記事は、「The Internet Archive」に保存されています。

その中でロスは、『フォレストガンプ』続編の脚本がどのような構想だったのかまで明かしています。

「1作目の終わりから文字通り2分後に、バス停で息子の帰宅を待つフォレストの姿から映画を始めたいと思った」と述べています。ストーリーは原則的にオリジナル映画と同じパターンで、ハンクス演じる主人公が1980年代から1990年代にかけての歴史的出来事に立ち会っていくというというものでした。そして、そのうちのひとつの描写が、この続編がお蔵入りになった理由のひとつでした。

ロスは同インタビューの中で物語の構想について、こう話しています。

「フォレストはネイティブ・アメリカンのパートナーを待っていて、彼女はオクラホマシティの政府ビルにある保育園で教師をしているんです。『一緒にランチへ行こう』と、ベンチに座って待っています。すると突然、建物が爆発するんです…」

ロスがこの脚本を発表したのは、アメリカ同時多発テロ事件が起きる前日、2001年9月10日の夜のことでした。この事件によって、「すべてが(歴史的出来事に立ち会っていくというストーリー自体が)無意味になったように思いました」と述べています。

「その後、トム(・ハンクス)、ボブ(ゼメキス)、私の3人で座って話をしました。私たちは互いに顔を見合わせ、『これは無理だ』と言いました」と続けます。こうしてこの事件によって、世界は一夜にして変わってしまったのです。

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Source / ESQUIRE ES
※この翻訳は抄訳です。