このたび南カリフォルニア大学のアネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム学部(Annenberg School for Journalism)は、1929年から2023年のアカデミー賞全(19部門のノミネーションをすべて洗い直し、2015年エイプリル・レイン氏が立ち上げた「#OscarSoWhite」運動から多様性は改善されたかどうか…を調査・分析した結果を発表しました。
それは95年に渡るアカデミー賞の歴史から、マイノリティがいかに排除されてきたかを示すものです。ここでは助演男優賞、助演女優賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、作品賞に絞り紹介していきます。調査結果から見えるものとは?
「白人男性」以外の候補者はたった10%にも満たない
助演俳優優勝が設立された1937年以来、助演男優賞には合計435人のノミネートがありました。このうち、およそ10%にあたる43人がマイノリティ(underrepresented ※)人種・民族グループからのものでした。
「#OscarSoWhite」を経てもなお、極端な言い方をすれば白人/コーケイジャン(Caucasian)男性が9割を占めるのがこの部門です。マイノリティ男性が、いかにハリウッドでチャンスをつかむのが難しいかが据えて見える結果ではないでしょうか。
この賞に、マイノリティ男性がノミネートされなかった年は56年。マイノリティ俳優の初ノミネートは1948年(トーマス・ゴメス)、初受賞は1953年(アンソニー・クイン)です。
助演男優賞を受賞したマイノリティ俳優は歴史上12人:アンソニー・クイン(1953年、1957年)、ルイス・ゴセット・ジュニア(1983年)、ハイン・S・ニョール(1985年)、デンゼル・ワシントン(1990年)、キューバ・グッディング・ジュニア(1997年)、ベニチオ・デル・トロ(2001年)、モーガン・フリーマン(2005年)、ハビエル・バルデム(2008年)、マハーシャラ・アリ(2017年、2019年)、ダニエル・カルーヤ(2021年)。
人種/民族的内訳を見ると、黒人/アフリカ系アメリカ人のノミネートは23人で、初ノミネートは1970年(ルパート・クロス)。受賞した7人のうち最初のひとりは1983年(ルイス・ゴセット・ジュニア)でした。ヒスパニック/ラテン系のノミネートは9人で、最初のヒスパニック/ラテン系の受賞者は1953年(アンソニー・クイン)でした。アジア人のノミネートは同じく9人で、初ノミネートは1958年(早川雪洲)で、受賞者はハイン・S・ニョール(1985年)ただ1人です。中東/北アフリカ出身の男性は1人しかノミネートされておらず、初めてのノミネートは1963年(オマー・シャリフ)でしたが受賞はしていません。同様に、先住民族を親世代にもつ男性のうち最初の3人は1971年にノミネートされましたが、オスカーは受賞していません。
アジア系の受賞者は1929年からの歴史上、たったひとり。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のキー・ホイ・クァンは、ほぼ30年周期でしか誕生していないアジア系助演男優賞候補になっているわけですが、受賞することになれば、長い歴史上2人目の快挙となります。
※ Underrepresentedは「過小評価された」「少数派」「表に出てきづらい」などの意味をもちますが、ここではあえて「マイノリティ」と訳しています
>次回は助演女優賞の分析です