ボナパルト家は2人に離縁を求めていました。それは、ジョセフィーヌが子どもを授からなかったこと、つまり跡継ぎができなかったことに起因していたと考えられます。これが結婚生活の終焉につながる可能性があるとわかっていた彼女も、子どもができないことに精神的な重圧を感じていたようでした。
産科と婦人科に関するトピックを取り上げる『O&G Magazine』によれば、1798年、絶望を感じていたジョセフィーヌは、ナポレオンの主治医の提案で現在のベルギーにあるプロンビエールと呼ばれる温泉地を訪れたそうです。義理の姉も同じように湯治をしたことで、6年間の不妊治療の後に娘を授かっていました。しかしジョセフィーヌは複数回訪れたにもかかわらず、同じような幸運を得ることはありませんでした。
ナポレオンが1804年に皇帝に即位すると、彼はジョセフィーヌの不妊に対して、ますます焦りを感じるようになったのでしょう。1809年11月ついに、彼は別れを望んでいることを告げます。ジョセフィーヌは不本意ながらも同意し、数週間後の12月15日に正式に婚姻関係が解消されました。
対立の多かった結婚生活であったにもかかわらず、ナポレオンはジョセフィーヌの将来を守ることを約束します。ナポレオン財団によれば、彼は「彼女には皇后の地位と称号を保持してもらいたい。そんな私の気持ちを疑ってほしくはないし、彼女には常に私のことを最良かつ最愛の友と考え続けてもらいたい」と述べたということ。
ジョセフィーヌはその後マルメゾンで安住し、家の改築、庭の手入れ、そしてアートコレクションの収集をしながら過ごしたとされています。
PBS（Public Broadcasting Service。アメリカ合衆国の非営利公共放送）によると、離婚後40歳になったナポレオンはすぐに、新しい妻を探し始めました。彼が理想としたのは、ロシア皇帝アレクサンドル1世の妹で15歳のアンナ・パヴロヴナ。しかし彼のプロポーズに対し返答が遅れ、それも言い訳に満ちた内容であったため、政治的な動機もあって、オーストリア皇帝の娘マリー・ルイーズを妻に選びました。19歳のマリー・ルイーズは最初この結婚に恐れと異議を述べたとされ、自分の日記に「ナポレオンを見るだけで最悪の拷問」と書いていますが、1810年4月に市民結婚式をナポレオンと挙げます。
マリー・ルイーズは結婚してから1年以内に、ナポレオン2世という跡継ぎを出産し、その後その子はローマの王としての称号を授かりました。その間もナポレオンはジョセフィーヌに対する約束を守り、彼女に手紙を書き続け、時折予告なしに彼女に会いに訪れることもあったため、これが新しい妻の嫉妬を引き起こしもしました。
マルメゾンで穏やかに暮らしていたジョセフィーヌは1814年、ロシアとその同盟国がフランスに侵攻する中、元夫の統治が徐々に悪化していく様子を見守りました。パリがあっけなく陥落した後、彼女はナポレオンに会うことなく彼が亡命した事実を知ったそうです。
ジョセフィーヌはその後の出来事をほとんど見ることなく、1814年5月29日に肺炎のため51歳で亡くなりました。ケイト・ウィリアムズの著書『Ambition and Desire: The Dangerous Life of Josephine Bonaparte』によれば、彼女の侍女は「ジョセフィーヌはナポレオンの没落を悲しんで亡くなった」と信じていたと記されています。
ナポレオンは1815年に短期間ながら再び権力を握りましたが、すぐにイギリス軍によって追放され、同年には遠く離れたセントヘレナ島に抑留されました。そこで彼は、ジョセフィーヌの写真で自分を囲み、彼女の肖像が描かれた皿で食事をしていたそうです。彼は最期の瞬間まで彼女のことを考え、1821年5月5日に亡くなる直前、最期の言葉として彼女の名前を呟いたとされています。
彼らの関係には欠陥が多かったのも事実ですが、ナポレオンとジョセフィーヌは結婚生活でともにしていた時間よりも長きにわたり、お互いに深い愛情を抱いていたことがうかがえます。そのため、最終的な終わり方と運命がより一層悲劇的に感じられるでしょう。
映画の出演者ヴァネッサ・カービーは、大画面でジョセフィーヌの物語が語られることに興奮しています。彼女は「かなり強力な男性中心の世界で、女性でいることはさまざまな点で難しさがありましたが、最後まで品位を守り抜く素晴らしい仕事をしました」と、アメリカのエンターテイメント専門の業界紙『Variety』にコメントしています。
ホアキン・フェニックスとヴァネッサ・カービーが描く悪名高いカップルのユニークな解釈、そして喜びと悲しみの浮き沈みを劇場でご覧ください。映画は最終的にApple TV+でストリーミング配信される予定ですが、具体的な日付は未定です。
Translation / Yumi Suzuki
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です
