ニューヨークに住んでいる方や頻繁に訪れる方は、メガネをかけた人の顔半分のロゴが印象的な「Gregorys Coffee(グレゴリーズ・コーヒー)」を見かけたり、そこでコーヒーを飲んだことがあるかもしれません。

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 ロゴのモデルとなったグレッグ(私の母は彼を“ミスター・コーヒー”と呼んでいます)は実在する人物で、彼が私(筆者)を店に招いてコーヒーを飲ませてくれて以来、10年以上にわたって私の大切な友人の1人となっています。メンズウェア、そして私のストリートスタイルのファンだという彼。そんな彼にコーヒーをごちそうになり、そして成功しているCEOと直接話をすることができて、私はすごく光栄でした。当時としては、これが生涯続く友情の始まるだとは思ってもいませんでしたが…(笑)。

 グレッグのスタイルは年々少しずつ変化しています。ですが、そんな中でも変わらないのは、家族と「Gregorys」への情熱です。彼は今でもカウンターでコーヒーを淹れており、注文を受ける姿を見ることができます。32の店舗(2021年6月取材時時点)、妻、3人の子ども、2匹の犬を抱えながら、どんな仕事にも全力で取り組んでいます。

 個人的には彼の仕事ぶりに畏敬の念を抱いていますが、彼のセンスにも感心しています。もし私が彼のように忙しい日々を送っていたら、毎日デニムとTシャツで過ごしていると思いますが、彼はきちんと服装に気をつかっているのです。

 グレッグは8年前に、私のブログで行ったシリーズにも登場してくれました。なので、彼自身と彼のスタイルがさらに成熟した10年後の今、このシリーズに登場してもらえることにワクワクしています。実りあるビジネスと有意義な家庭生活の両立、起業家としての新しい服の買い方、「トム ブラウン」のスーツを着てエスプレッソを飲むこと、32店舗という成功者としての着こなしなどについて、話を聞きました。

greg zamfotis
Christopher Fenimore
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Christopher Fenimore

Q:「Gregorys Coffee」についてお話しましょう。よく聞かれることだと思いますが、あなたを知らないユーザー(読者)のために、自分のコーヒーショップを開こうと思ったきっかけを教えてください。また、1号店をオープンするまでの道のりを教えてください。

 「Gregorys」についての質問は、いつでも歓迎ですよ! 私はフードビジネスの世界で育ちました。父はいくつも事業を立ち上げ、私が子どもの頃からニューヨークで数々のファストカジュアルレストランを経営していたのです。移民の息子として、父が一生懸命働く姿を目の当たりにし、常に「父のそばにいたい」って思っていました。「1万時間の法則(認知心理学者たちの研究をもとに、英国生まれの元新聞記者マルコム・グラッドウェル氏が提唱した法則…ある分野でスキルを磨いて一流として成功するには、1万時間もの練習・努力・学習が必要だというもの )」を、早くから実践していたのです。とは言え私は、法律関係の仕事に就きたいと思っていたので、ビジネススクールとロースクールの2つの学部にはひとたび進学はしました。

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Christopher Fenimore
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 ですが結局、私は机に向かっていることに耐えられなくなり、自分の起業家としてのルーツへと戻ってきたわけです。そこで、自分のコンセプトを立ち上げることを手伝ってほしいと父に相談したところ、最初は驚いていました。ですが、「Gregorys Coffee」の開発を手伝うのをとても喜んでくれましたね。2006年には、マンハッタンの24thストリートとパークアベニューサウスに最初の店舗を見つけるのを手伝ってくれ、そこからすべてが始まったのです。

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Christopher Fenimore
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Q:あなたは常に活動的ですが、毎日の服装はどうしていますか?

 この質問に対する答えは、時間と共に確実に進化しています。Gregorysを始めたばかりの頃の私はまだ若く、経営者として真面目に受け止めてもらおうと努力していました。ちょうどテレビドラマの『MAD MEN(マッドメン)』が流行っていた時代であり、Tumblrで有名な「#menswear 1.0」というムーブメントが起きていた頃だったので、私はダブルモンクストラップの革靴に「トム ブラウン」のTHORNPROOF(ソーンプルーフ=頑丈な生地の一種)ツイルのジャケットを着こなし、コーヒーを淹れていました。

greg zamfotis
Christopher Fenimore
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 ブランドが成長し、徐々に信頼が得られるようになると、「毎日スーツやブーツを着なくても、少し肩の力を抜いて大丈夫だ」と感じるようになれました。そしてある時点では、ちょっとヤリすぎて、心の中のシスの暗黒卿(『スター・ウォーズ』シリーズのダークサイドキャラクターの指導者)に言われるがまま、「Rick Owens(リック オウエンス)」や「BORIS BIDJAN SABERI(ボリス ビジャン サベリ)」を着ていたこともありましたね…。

 最近では、朝の出勤時に妻や子どもたちが私に親指を立ててくれれば、着こなしがうまくいっていると判断しています(笑)。大抵、ひねりの効いたビジネスカジュアルか、「私を見て」と叫ばない程度に品のいい服を着ています。私は現在39歳で、3人の美しい子どもたちの父親であり、全米規模のスペシャルティコーヒー企業のCEOでもあります。ですから清潔感を優先しながら、快適で、プロフェッショナルなスタイルで、カッコつけすぎない…というのがちょうどいいスタイルだと思っています。

greg zamfotis
Christopher Fenimore
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Q:新しい服はどのように買っていますか? 服を購入する際に、何か特別な条件があるのでしょうか? また、最後に買った服は何ですか?

 「必要に迫られて買っている」と言いたいところですが…正直、必要なものはありません。私が買い物をするときは、おそらく90%が感情的なものです。見た目が良くて、何よりも自分の思い通りにフィットする服を見つけると、ちょっとした快感を覚えます。ドレープがぴったりフィットすると、まるで1日の最初のコーヒーを飲むような爽快感があるんです。

 最近購入したのは、「Alan Flusser Customs」の新オーナーである伝説の人物、Jonathan Sigmon(ジョナサン・シグモン)が製作した、「ロロ・ピアーナ」のストームシステム生地を使用したネイビーのカシミアオーバーコートです。自分への誕生日プレゼントだったのですが、手に入れたのが時期的に少し遅かったので、2021年の秋から本格的に使用する予定です。

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Christopher Fenimore
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Q:スタイルへの愛情は、ビジネスのやり方に影響を与えていますか? ファッション業界が他の業界と交わるということは、それほど新しいことではありません。ですが、コーヒーと交わるというのは、あまり聞きませんよね…。

 もちろんです。小さなことに取り組む姿勢こそ、すべての取り組む姿勢にも通じることですから…。自分の身だしなみの細部にまで気を配ることは、ビジネスにおける自分自身の振る舞いをよく表していると思います。もし私がだらしない服装をしていたら、毎日飲み物をつくるために使うコーヒーを、1グラム単位で考えているように見えますか? 実際に私は、グラム単位、ミリグラム単位までコーヒーの分量にこだわっていますので…。

greg zamfotis
Christopher Fenimore
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Q:「Gregorys」が、ここまで成長すると思っていましたか? 最初の店舗からビジネスを拡大しようとしている方に、なにかアドバイスをお願いします。

 「Gregorys」の成長について簡単に答えるなら、「いいえ」ですね。私は自分自身で、ビジネスをしていること自体に興奮はしていました。机に向かうこともなく、ただひたすら仕事に打ち込み、自分の仕事の成果が毎日カフェで発揮されることばかり興味を持っていました。そして、自分がかなりユニークなものを開発しているということに気づくのに、そう時間もかからなかったです。ですが、それに賛同してくれるお客さんがだんだん増えてき、ビジネスが成長し、さまざまな地域のより多くの素晴らしいコミュニティに参加し、そして活気を与えてゆくことは、私にとって自然な流れでした。

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Christopher Fenimore
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 私からのアドバイスは、とてもシンプルです。「ビジョンを持ち、そのビジョンを実現するために一生懸命働くこと」になります。私は常に誰よりも働き者であるように心がけ、これは「Gregorys」をひとつのショップから現在のような状態にするのに役立ってきたと自負しています。

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Christopher Fenimore
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Q:私の友人であり、以前『ESQUIRE』にも登場してもらったアンドリュー・チェンと同様、あなたも家族を大切にしていますよね。成功したキャリア、結婚生活、3人の子ども、2匹の犬をどうやって両立させているのか教えてください。

 現在はこれまでの私のキャリアの中でも、“特に困難な時期”と言えます。私は仕事に夢中で、その仕事も自分のビジネスだけに関わっていることでは満足できないのです。私たちは常にプロジェクトに手を加え、革新させています。私自身、常に耳をそばだて、目を見開いて、オンの状態でいることをとても重要だと考えています。なので、「Gregorys」に夢中になることと、家族に夢中になることのバランスをとることに、日々苦労していますね。

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 「簡単だよ」って言えたらいいのですが、正直なところ、いつも「家族と一緒にいたい」と思っています。子どもたちと多くの時間を過ごすことは、私にとって大きな喜びですが、仕事における義務や「Gregorys」の創業者兼CEOとしての情熱を考えると、常にそれを実現することはできません。できる限りのことはしていますし、妻もそれを理解し、感謝してくれています。

 なので、本当の意味でのMVPは彼女です。3人の素晴らしい子どもたちと2匹の犬を育てるのは、そう簡単なことではありません。彼女は、本当に素晴らしい人物です。誇りに思える会社を率いることができ、さらに大切な家族の一員として今日の地位を得られていることは、とても幸運なことだと強く思っています。 

Source / ESQUIRE US
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。

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