2023年は、時計マニアの人々には豊作の年となりました。

スイス・ジュネーブで開催された時計愛好家のための祭典「Watches & Wonders」を皮切りに、1年を通して皆さんお気に入りの時計ブランドは精力的な活動に余念がありませんでした。歴史的人気モデルに新たなアレンジを加えたり、画期的なイノベーションを起こしたり、ただひたすらゴージャスな時計で私たちを驚かせたり、時には困惑させたりもしました。

ということで、2023年の総決算として、Esquire USが厳選した今年のベストウォッチ15をご紹介します。


ロレックス|オイスター パーペチュアル 41

2023年に発表された15本の名作時計 ロレックス
Courtesy of Rolex

まずはロレックス。ハンス・ウイルスドルフによって設立されたこのメゾンは今年、最もアイコニックなデザインを遊び心たっぷりにアレンジし、多くの人々を驚かせるとともに喜ばせてきました。中でも、この「オイスターパーペチュアル41」ほど話題になったものはありません。

なんといっても目を引くのが、遊び心あふれる文字盤です。これはオイスターパーペチュアル31、36、41mmに新たに展開された「セレブレーション」と名づけられた新たなモチーフ。ターコイズブルーの文字盤の上に51個もの色鮮やかなドットが描かれた遊び心あふれるポップな印象に仕上がっています。

ロレックスのファンはこのモデルを「バブルス(Bubbles)」と名づけ、それ以来、活発な議論と熱狂的な探究の対象となっているようです。


ブランパン|フィフティ ファゾムス 70 周年記念「Act 3」

2023年に発表された15本の名作時計 ブランパン
Courtesy of Blancpain

ダイバーズウォッチには、なぜか数多くの“オリジナル”が存在します…。しかし、オリジナルの中のオリジナルと言えば、間違いなくブランパンの「フィフティ ファゾムス」にたどりつくのではないでしょうか。

世界初のモダンなダイバーズウォッチとして知られ、50ファゾムス(およそ91メートル)の防水性を備えていました。なぜ50ファゾムスの深さかというと、この時計が誕生した当時の潜水呼吸装置を着用して潜れる最大の深さが50ファゾムスだったことに由来します。自らも熱心なスキューバダイバーでもあった当時のブランパンCEO、ジャン・ジャック・フィヒター氏が考案した二重ガスケット式リュウズと、当時としてはずっしりとした42mmSSケースの組み合わせによって誕生しました。

今年9月に、ブランパンはフィフティ ファゾムス誕生70周年記念の第3弾モデルとしてこの「Act 3」を発表しました。それは、オリジナルモデル誕生当時の主要軍隊で採用されていたミルスペックモデルにインスパイアされたタイムピースです。

オリジナルのケース径である41.3mmを忠実に再現し、使用している素材は一見ゴールド製に見えるかもしれませんが、実は9Kブロンズゴールド製。従来のブロンズよりも色あせることの少ない特殊合金で、これはブランパンが属するスウォッチ・グループのオメガとの共同開発によるものです。その事実もまた、このモデルをユニークなものにしています。


IWC|インヂュニア・オートマティック 40

2023年に発表された15本の名作時計、iwc
Courtesy of IWC

アメリカ・ボストン出身の時計職人フロレンタイン・アリオスト・ジョーンズ氏によってスイス・シャフハウゼンに設立されたIWC。主に航空機や自動車にインスパイアされたタイムピースで知られていますが、今年、メゾンの中で最もシンプルなデザインと言っても過言ではない「インヂュニア」を復活させました。

1955年に誕生した「インヂュニア」は、IWC初の自社製自動巻きムーブメントを搭載したうえに、デリケートな機構を保護する耐磁性軟鉄製インナーケースを採用しています。とは言え、「インヂュニア」がより魅力的に感じられたのは「インヂュニア・オートマティック 40」の登場によるところが大きいかもしれません。これは、時計デザインの第一人者ジェラルド・ジェンタ氏が1970年代に手掛けた「インヂュニアSL」の象徴的なケースを備え、現代技術でアップグレードされた1本。チタニウムケース&ブレスレットが採用されています。

今年初めてチタン製となったバージョンですが、その印象は同様…ですが、今だからこその新鮮さの心打たれるます。


ブルガリ|オクト ローマ クロノグラフ

2023年に発表された15本の名作時計、ブルガリ
courtesy of Bulgari

近年のブルガリは「オクト・フィニッシモ」ラインで、数々の賞を受賞した高価な超薄型時計に力を入れているように感じられます。そして今年は、その独特なメゾンの方向性にインスパイアされながらも、比較的お財布に優しい価格の新作「オクト ローマ クロノグラフ」が誕生しました。

文字盤はブルーとブラックが用意されていますが、私たちはいつもブルーに目がないのです…。


カルティエ|パシャ ドゥ カルティエ

2023年に発表された15本の名作時計、カルティエ
Courtesy of Cartier

カルティエは長い休眠期間を経て、数年前に「パシャ」を復活させました。

この時計はジェラルド・ジェンタ氏が時計デザインに残した功績の中でも、あまり知られていないラインかもしれません。今年はその「パシャ」に、美しいコントラストのサーモンピンクの文字盤を備えたスティール製の3針モデルという、人目を引くモデルが加えられました。

私たちは、この41mmの自動巻きモデルにおける二つの金属のシンプルなコントラスト、そしてクラシックなブルー針が気に入っています。


タグ・ホイヤー|カレラ スキッパー

2023年に発表された15本の名作時計、タグホイヤー
Courtesy of Tag-Heuer

1963年にジャック・ホイヤー氏が家業を継いで初めて製作した「ホイヤー・カレラ・クロノグラフ」。その誕生60周年となる2023年に向けて、タグ・ホイヤーは親しみやすさと新しさを併せ持つ時計を製作するため、あらゆる手段を講じてきました。

そうして今年の春にデビューした多くの新型「カレラ」は、この時計と古くからつながりのある自動車からインスピレーションを得たデザイン言語を特徴としています。そんな従来のデザインの進め方と並行して、新たなる工夫も進められていました。ケース全体を包み込み、ディスプレイの視認性を最大限に高める「グラスボックス」サファイアクリスタルなどはその最たる例です。

私たちにとっての最高傑作は、今年7月に発表された「スキッパー」でした。このモデルは、1967年のアメリカズカップでのヨット「イントレピッド」の勝利にインスパイアされたもの。1968年に初めて製作され、1983年まで販売されました。今回登場した「スキッパー」は、当時のレプリカではなく全く新しい新作、そして限定モデルではないレギュラーモデルとなります。


ロンジン|レジェンド ダイバー

2023年に発表された15本の名作時計、ロンジン
Courtesy of Longines

「ダイバーズウォッチとは、ずっしりとした重量と逆回転防止ベゼルがあって然るべし」とお思いであれば、一度このロンジンの新作「レジェンドダイバー」に目を向けてみてはいかがでしょうか。

多くの場合、ダイバーズウォッチはアウターにベゼルが取りつけられ、それによってタフでスポーティな印象を獲得しています。ところがこの「レジェンドダイバー」は、ダイヤルを囲うようなインナーベゼル式を採用することによって、ベゼルが細く繊細な印象に見えるように仕上げられています。それによってダイバーズウォッチでありながら、洗練された印象が生まれているのです。リュウズは二つとなり、2時位置のリュウズでインナーベゼルを回転させ、4時位置のリュウズでは針やカレンダーを調整します。

大きめの針とインデックスは視認性に優れるとともに、インナーベゼルによってエレガントな雰囲気も漂う。さらに今年登場した39mmというサイズ感もまたヴィンテージ気分を高めてくれます。


パテック フィリップ|カラトラバ・トラベルタイム 5224

2023年に発表された15本の名作時計、パテックフィリップ
Courtesy of Patek Philippe

パテック フィリップは本格的な機能性と目を見張るような美しさの両方で、私たちを驚かせる特殊な能力を持っているようです。今年発表されたローズゴールドのトラベルタイムウォッチ「カラトラバ・トラベルタイム 5224」は、12時間表示ではなく24時間表示。さらにローカルタイムを示す時針とホームタイムを示す時針を備え、デュアルタイムゾーンウォッチとして機能します。

それだけの機能を、パテック・フィリップならではのエレガントでドレッシーなデザインコードを保ったうえで、ケース径42mmという現代的なスポーツウォッチほどの大きさの中に表現しているのですから驚く他ありません。


ベル&ロス|BR 03 ミリタリー セラミック

2023年に発表された15本の名作時計、ベル&ロス
Courtesy of Bell & Ross

最高の時計とは、時として見かけによらずシンプルなものです。ベル&ロスの時計は、ジェット戦闘機のコックピットの計器に由来するケースデザインという特徴を持ち、四角の中に丸を取り入れたフェイスはこのブランドのトレードマークとも言えるほどおなじみの存在です。

そんなベル&ロスですが、今年はミリタリーにインスパイアされたブラックのセラミックケースにマットなオリーブグリーンの文字盤、ブラックのインデックスと針を備えたバージョンが発表されました。自社製自動巻きムーブメントBR 03を搭載し、パワーリザーブは54時間です。


オメガ|シーマスター プロプロフ 1200M

2023年に発表された15本の名作時計、オメガ
Courtesy of Omega

1948年に誕生したオメガ「シーマスター」。豊かな歴史を持つこのシリーズの75周年を祝うことは、その長い歴史における重要なことを思い返すためにも、改めて海の中に思いをはせる必要があったのかもしれません。

その中にあって、オメガは新たな色合いのライトブルーを採用し、複数のスペシャルエディションのカラーリングに採用しました。中でも私たちの一押しは、巨大な「シーマスタープロプロフ1200M」です。

オリジナルモデルは、深海で作業を行うダイバーたちにかかる強烈な水圧に耐え得る時計として、1971年に製造が開始されました。55mm × 48mmという巨大なモノブロックスティール製ケースを備え、水深600mまで対応。9時位置には埋め込み式リュウズ、2時位置にはセキュリティプッシュボタンが付きます。


ゼニス|クロノマスター スポーツ アーロン・ロジャース

2023年に発表された15本の名作時計、ゼニス
Courtesy of Zenith

NFLの名QBアーロン・ロジャース選手とゼニスのコラボモデルで、名機「クロノマスター・スポーツ」がベースです。この41mmSS製クロノグラフは、他のクロノマスター・スポーツ同様、1969年にデビューした伝説の自動巻きクロノグラフムーブメント、エル・プリメロのアップデート版を搭載しています。

もちろん、今作で最も目を引くのは、ロジャースが所属するニューヨーク・ジェッツのユニフォームにちなんで選ばれたエレクトリックグリーンのベゼルと文字盤でしょう。言うまでもなく、チームのファンである必要はありません…。


グランドセイコー|44GS USA EXCLUSIVE

2023年に発表された15本の名作時計、グランドセイコー
Courtesy of Grand Seiko

間違いなく日本を代表する時計ブランドであり、アメリカでも熱狂的なファンを獲得しているグランドセイコー。機能的なデイウォッチとカンバセーションピースの間をうまく行き来するような、ハイエンドで精巧な仕上げの時計で人々を魅了し続けています。

この新作「44GS」は、1967年のデザインをベースにした手巻き式時計で、サイズは今をときめく36mm径のアメリカ限定モデルです。豊かな質感のグリーンの文字盤は、グランドセイコースタジオ雫石から見える岩手山の紅葉にインスパイアされたもの。


チューダー|ぺラゴス FXD

2023年に発表された15本の名作時計、チューダー
Courtesy of Tudor

セーリングとは、華やかな世界観があると同時に、タイムキーピングの重要性が問われる競技。新たなコンテクストやストーリー性の創出に励み、この世界へのアプローチを強めている時計ブランドも少なくありません。

チューダーの「ぺラゴスFXDクロノ」は、アメリカズカップ2023に出艇したアリンギ・レッドブル・レーシング・チームのために製作したモデル。カーボンコンポジット製ケースにチタン製ベゼルをはめ込み、カラフルでスポーティな雰囲気を醸し出しています。

ブルーの文字盤と特徴的な雪の結晶を思わせる時針が、ひと味違うペラゴス・ダイバーズであることを物語っています。


パネライ|ラジオミール トレ ジョルニ

2023年に発表された15本の名作時計、パネライ
Courtesy of Panerai

これまで慣れ親しみ、愛されているデザインの時計であっても、思いがけない文字盤の色によってさまざまな古き良き思いがよみがえることがあります。

私たちにとって、2023年のパネライの傑出した作品の一つは、そのダイヤルの見た目から、“ラテ”というニックネームで愛されるこのSS製の「ラジオミール」でした。正式名称は「ラジオミール トレ・ジョルニ」と言い、サイズは47mm、72時間のパワーリザーブを備えています。

およそ3日間という数字も結構なことですが、そんなタフさも霞んでしまうほどに、グラデーションのかかったコーヒー色の文字盤は魅力的に映ります。


ジャガー・ルクルト|レベルソ・トリビュート・スモールセコンド

2023年に発表された15本の名作時計、ジャガー・ルクルト
Courtesy of Jaeger-LeCoultre

ジャガー・ルクルトのアイコニックなタイムピースと言えば、「レベルソ」です。ジャガー・ルクルトは、メゾンの真髄とも言えるこのアールデコデザインを21世紀に向けて改良する努力を続けてきました。

多くの人がご存知のとおり、1931年にポロ競技のマレットやメレのボールから時計を守りたいというスポーツ愛好家のためにオーダーメイドされたこのシンプルなデザインは、文字どおり時の試練に耐えてきました。

ピンクゴールドのケースと漆黒の文字盤のコントラストが、フリップオーバーケースという機能性を備えた究極のドレスウォッチに仕上がっています。

Source / Esquire US
Edit & Translation / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です