2年前、「ESQUIRE」US版では2020年を「メニキュア元年」と名づけました。当時は懐疑的でもありましたが、そのトレンド予測やネーミングは結果的に間違っていなかったと言えます。舞台は2022年に変わり、「メニキュア」はいまだ健在どころか、勢いを増しています。今日では、マニキュアを楽しむ男性専用のインスタグラムアカウントが存在し、TikTokでは「#boynails」というハッシュタグがついた投稿が1230万回再生されています。

コメディアンのピート・デヴィッドソン、ラッパーのリル・ナズ・X、ラテン系ラッパーのバッド・バニーといった男性著名人に関して言えば、マニキュアを施していない姿を見ることはほとんどありません。今では、バーで男性2人がネイルアート談義に花を咲かせていてもおかしくない、「メニキュア黄金時代」になったのです。

進化したセレブのネイルポリッシュの数々を見れば、それは明らかです。

※ここで、「ネイルポリッシュ」と「マニキュア」との違いを説明しておきましよう。この2つのワードは同様の意味で使われていることも多いようですが、実は意味の異なるものです。「ネイルポリッシュ」とは、爪に使う塗料自体のこと。一方、「マニキュア」は、手のお手入れ全般を指す言葉で爪を塗装するまでを指しています。つまり、「ネイルポリッシュ」は爪に使用するラッカーを指す固有名詞であり、「マニキュア」は手のお手入れを指す動詞であることが違いと言えます。

ちなみに「ジェルネイル」は、合成樹脂を爪に塗りライトなどで固める手法であり、マニキュアの1つの方法となります。また新たに「ジェルネイルポリッシュ」という言葉も一般的な存在となっていますが、これはいわば「ジェルネイル」と「ネイルポリッシュ」の中間のような位置づけになります。
bad bunny nails
PHOTO ILLUSTRATION BY ELAINE CHUNG / GETTY IMAGES

このトレンドは、もちろんハリー・スタイルズから始まりました。

男性がマニキュアをするという概念を生み出したのは、彼ではないかもしれません。ですが、そんな彼の嗜好がきっかとなり、おかげで男性のネイル愛用者がここまで増えたことは間違いないでしょう。ハリー・スタイルズが何年も前から披露してきたハッピーで茶目っ気のある明るいカラーのネイルアートは、今や彼のスタイルを語る上で欠かせないものになっています。

そんな彼は2021年11月、ネイルポリッシュを含めたビューティーブランド「Pleasing(プリージング)」を立ち上げています。ネイビー、ピンク、ホワイト、半透明パールの4色で、価格はネイル単品で2500円、ネイル4色セットで7900円で販売されています。ブランドのマーケティングイメージ通り、ジェンダーレスに使われることを意図したものですが、これは気の利いたやり方です。

「素肌にレザースーツ」や「チュールスカート」は男性誰もが真似できるものではありませんが、ネイルポリッシュなら、ハリーのスタイルを低リスクで取り入れることができます。

harry styles and tyler the creator
photo illustration by Elaine Chung//Getty Images
男性ネイルファッションの先駆け、ハリー・スタイルズとタイラー・ザ・クリエイター

一方、ラッパーのマシン・ガン・ケリーも、「Don't Huff The Paint(ネイルペイントを侮るな)」というキャッチコピーで自身のポリッシュコレクション「UNDN/LAQR」を発表しています。「Mary Jane」(グリーン)や「Twenty Five To Life」(オレンジ)などの名前がついた10色展開で、単品(18ドル)もしくは「Wet Dream」や「Put Me On Top」などのカラーが入ったセットで購入できます。価格は3色セットが52ドル、6色セットが86ドル。

ネイルポリッシュにこだわりを持つマシン・ガン・ケリーがこのラインを立ち上げたのは、「自己を表現することで、失われつつあるインディビジュアリズムを維持することができるから」と、このブランドの広報担当者からメールで説明を受けました。

「ネイルは人々が自分自身を表現するためのキャンバスであり、完璧でなくてはならないというプレッシャーを感じずに楽しめるものであるべきです」とのこと。彼のポリッシュは各色、混ぜたり、色の組み合わせを楽しんだり、重ねづけができるようになっています。例えば、まるで指先に小さなジャクソン・ポロックの抽象画を飾るように、さまざまな色を重ね合わせてまだら模様を描くことができる絵の具のようなものです。

machine gun kelly and his undn laqr polish
Photo illustration by Elaine Chung/Courtesy
マシン・ガン・ケリーと彼が手掛ける「UNDN/LAQR」

同じくラッパーのタイラー・ザ・クリエイターも負けじと、自身の「Golf le Fleur」コレクションの製品ラインにもフレグランスとネイルポリッシュを加え、拡大しています。

タイラーは早くからの「メニキュア」派であり、彼のブランドがライフスタイル全体への広がりを見せる中で、ネイルポリッシュに行き着いたことは不思議ではありません。カラー展開はジェネバブルー、ジョージアピーチ、グリッターのジェンダーニュートラルな3色(各20ドル、3色セットで55ドル)。彼は、これが「ビューティおよびグルーミング分野への進出のスタートに過ぎない」と予告しています。

pete davidson
photo illustration by Elaine Chung//Getty Images
キム・カーダシアンとの甘い噂があるピート・デヴィッドソンと彼のネイル(こちらもかなりスイート)

正直なところ、男性向けのネイルポリッシュコレクションは全く新しいものというわけではありません。「Faculty」や「To Be Frank」といった著名人の名前が出ていないブランドでも、男性向けのカラーやより男性的な(少なくともユニセックスな)パッケージのポリッシュ・コレクションが既に発売されているのです。

現実的な話をすれば、ネイルカラーをしたいだけならどんなボトルであろうとかまわないのです。

彼らのネイルポリッシュ商品への期待感が高いのは、「ホンモノ」を感じるからです。ハリー・スタイルズ、マシン・ガン・ケリー、タイラー・ザ・クリエイターなどは、実際に堂々とネイルカラーをしている著名人です。彼らのブランドは、単なる商業目的のセレブブランドとは性質が異なります。この3人はそれぞれ全く異なった個性を持ちながら、自身が世に送り出した商品を実際に愛用しているという点で共通しており、買い手である私たちにもそれが理解できるからこそ、「自分も塗ってみたい」と思えるのです。

もしあなたが、ネイルを始めるタイミングを見計らっているなら、彼らの新しいブランドにインスピレーションを求めてみてはいかがでしょうか? 彼らはまずこう言うでしょう、「一体、何を今さら待っているんだい?」と。

Source / ESQUIRE US
Translation / Keiko Tanaka
※この翻訳は抄訳です。