《目次》

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よくオリーブオイルは、キッチンに欠かせないもの」と聞きましが、なぜ欠かせないのか? どんなところが身体に良いのか? 確認しておきたいところでしょう。そこで、スポーツ栄養学にも長けた管理栄養士のお2人に話をうかがいました。

きっとあなたのキッチンには、すでにオリーブオイルが常備されていることでしょう。いまやオリーブオイルはキッチンの必需品のひとつであり、サラダにも鶏料理にもパスタにも使えます。あなたの家でも切らすことがないよう、必ず買い置きをしているかもしれません。

ですが、オリーブオイルは結局、油の一種です。実際、本当に身体の健康増進のためにプラスであり、思っているほど健康的なのでしょうか? そう不安を抱いている人も少なくないかもしれません。

◇2人の栄養士が記事を監修

今回は理学修士で登録栄養士(R.D.)のケリー・ジョーンズさんと、理学修士で登録栄養学者(R.D.N.)のローリ・ネデスクさんに、オリーブオイルに関するひとつ通説を議題にお話をうかがい、オリーブオイルを使用してもいい頻度と量に関しても教えていただきました。

◇申し立て(確認すべき通説):

「オリーブオイルは心臓に良い脂肪からできているため、“より健康的な”オイルを代表する1つであり、料理や食事をグレードアップさせるものとしても人気の選択肢の1つです」という説は、信じていいのでしょうか?

◇証拠:

エクストラバージンオリーブオイル1杯(または大さじ1杯=15ml、オリーブオイルの場合は13g前後とされています)には、以下のものが含まれています。

  • 約120kcal(*「100gあたり894kcal」と明記されているので、オリーブオイル13gで換算すれば約116kcalが目安に)
  • 1価不飽和脂肪:10g(*「100gあたり74.04g」と明記されているので、オリーブオイル13gで換算すれば約9.6gが目安に)
  • 飽和脂肪:2g(*「100gあたり13.29g」と明記されているので、オリーブオイル13gで換算すれば約1.7gが目安に)
  • 多価不飽和脂肪:2g(*「100gあたり7.24g」と明記されているので、オリーブオイル13gで換算すれば約0.94gが目安に。これはアメリカと大きく違うのでご注意を)
  • ビタミンE(トコフェロール):1.9mg<1日の目安摂取量の10%>(*「100gあたり8.9mg」と明記されているので、オリーブオイル13gで換算すれば約1.16mgが目安に。これはアメリカと差異があるのでご注意を。<厚生労働省が出している食事摂取基準2020年版では、ビタミンEの1日の摂取目安量は成人男性6.5mg/日、成人女性6.0mg/日。ゆえに、1日の目安摂取量の17.8%>)
  • ビタミンK:8.1μg(マイクログラム=1000分の1mg)<1日の摂取量の10%>(*「100gあたり42μg」と明記されているので、オリーブオイル13gで換算すれば約5.46μgが目安に。これはアメリカと差異があるのでご注意を。<厚生労働省が出している平成 28 年国民健康・栄養調査における 20歳以上のビタミン K 摂取量は、平均値 236 µg/日、中央値 181 µg/日であり、平均値と中央値が乖離。これは多量摂取者の存在を示しており、日本人では納豆摂取の影響が大きいと判断。納豆摂取者のビタミン K 摂取は 336.2±138.2 µg/日、非摂取者は 154.1±87.8 µg/日との報告があり、納豆非摂取者においても明らかな健康障害は認められていないことから、これに基づいて150 µg/日を目安量としている。ただしこの論文は、20 歳代女性を対象としたものであり、他の性・年齢区分に対する妥当性は今後検討を要するとのこと。この 150 µg/日 から換算すれば、1日の目安摂取量の3.64%>)

*は参照として、厚生労働省が出している日本食品標準成分表2020年版による数値

◇陳述:
オリーブオイルに
期待できる健康効果

【1】心臓の健康をサポートする
「オレイン酸」

オリーブオイルの主成分は、「オレイン酸」という1価不飽和脂肪酸です(日本植物油協会資料では、75.7%を占めるとのこと)。このオメガ9(n-9)系脂肪酸は、「悪玉コレステロールを減らして、善玉コレステロールは減少させない働きが期待できる」と報告されています。

つまり、「オレイン酸」を主成分とするオリーブオイルは、心臓病予防に期待できると言っていいでしょう。

ジョーンズさんによると、「運動を頻繁に行う人は心臓に負担をかけているので、心臓を保護するためにも、オリーブオイルがおすすめです。心臓に健康上のメリットをもたらす栄養素が、食事で簡単に取り入れられるからです」とのこと。

【2】抗炎症効果への期待

また、1価不飽和脂肪には炎症を制御する効果も報告されており、つまりは筋肉の回復を助けてくれることも期待できます。

トレーニングで筋肉に負荷を掛ければ、それらの部位は傷つき、そこから炎症による筋肉痛を引き起こす可能性があります。そこでオリーブオイルに含まれる1価不飽和脂肪によって、その炎症を抑制へと導くというわけです。

【3】ビタミンEとポリフェノールによる
炎症制御への期待

さらに、オリーブオイルに含まれるビタミンE(トコフェロール)に関しては、抗酸化作用への期待がさまざまな研究によって報告されています。加えてオリーブオイルには、ポリフェノール類(キシチロソールとオレオカンタール)も含まれているので、さらに抗酸化物質としての期待は高まります。

米国の総合病院「メイヨー・クリニック」からは、「ビタミンEの栄養素は免疫力を高め、ある種の癌(がん)や心臓病から身体を守るのに役立つことが期待できます」というレポートも出されています。「そのうえ、抗酸化物質は細胞…特に筋肉や肺の細胞がダメージを受けることを制御してくれる効果も報告されている」とのことなので、スポーツにおけるパフォーマンスアップいう目標のもと、努力を重ねている人にとってはきわめて重要な存在と言えるでしょう。

【4】骨の丈夫さを導くビタミンK

ビタミンKは、血液を凝固させる働きを持つ脂溶性ビタミンであり、さらに骨に存在するオステオカルシン(カルシウム結合タンパク質)を活性化して、カルシウムの骨への沈着を促して流出を防いでくれる役割があることがさまざまな研究によって判明しています。また、コラーゲン生成を促進し、骨質を改善する効果も示されてことから、骨粗しょう症の治療薬にも使用されています。

さらにビタミンKは、オリーブオイルに含まれる1価不飽和脂肪などの脂肪を吸収するうえでも重要な働きをします。このビタミンKが不足すると、身体はその(上質な)脂肪を効果的に使えなくなることも報告されています。

◇評決:
やはりオリーブオイルは、
健康的なオイル

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MarianVejcik//Getty Images

前出の登録栄養士であるジョーンズさんは、「オリーブオイルなら、料理やドレッシングに毎日使用しても問題ないでしょう」と言います。

また、前出の登録栄養学者であるネデスクさんは、「オリーブオイルは、健康的な食のスタイルを構成するための重要な要素のひとつです」と説明し、最も健康的な食事スタイルの1つである「地中海式ダイエット」のおける重要な構成要素のひとつでもあることを指摘しています。地中海沿岸地方では、心臓病発生がきわめて低いことからこの地方で数千年受け継がれてきた、オリーブオイルを中心とした伝統的な食生活のスタイル。これは「地中海式ダイエット」と命名され、ここ数年注目されている食事法です。

「オリーブオイルをそのまま飲む方もいますが、料理での使用を含めて1日に最大4杯までと考えましょう」とネデスクさん。ただし、「地中海式ダイエット」という食事法では、食材に新鮮な野菜、果物、豆類、全粒穀物、魚、赤身の肉や乳製品に重点を置いていることにも注意が必要です。

さらに続けて、「持久力運動を行うときは、身体に燃料を供給するための健康的な脂肪が必要となります。摂取カロリーの4分の1は脂肪からとるべきで、私は全ての食事、そして間食にもオリーブオイルを少量(脂肪を)含むようにすることをおすすめしています。こうすることで、満ち足りた気分を持続させるのにも役立つでしょう」と、続けてネデスクさんは言います。

◇補足的意見:


食用オイルを避ける必要はない

そして、「脂肪のほとんどは理想を言えば自然の食物––例えば魚類やナッツ類など––から摂取するべきです」とアドバイスする一方で、「食用オイルを避ける必要はありません」とも言っています。「ただし摂り過ぎは禁物であり、食べ物からオイルがしたたり落ちるようになってはいけません」ともジョーンズさん説明します。

とは言え、最も健康的なオリーブオイルを選ぶには、いくつかのポイントがあります。まず、お店の棚に並んでいるオリーブオイルの中でも、購入するのはバージンやリファインドではなく、エキストラバージンがおすすめのようです。

これはpollの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

◇補足意見:
なぜオリーブオイルは
“エキストラバージン”に
すべきなのか?

「エキストラバージン・オリーブオイルは最も自然のままに近くて、リファインド(精製)の度合いが最も低いものです」と、ジョーンズさんは説明してくれました。「オリーブオイルは精製されればされるほど、加工の度合いの見極めが難しくなります。薬品や熱によって処理されている可能性もありますし、それによってオリーブオイルに含まれる抗酸化が期待できる成分がダメージを受けていることも考えられますので」。

また、エキストラバージン・オリーブオイルは他のオリーブオイルに比べ、食感的に粘度がより高く、緑色もより濃くて、風味が強くなっているのでおすすめです。

ガラス or プラスチック?
オリーブオイルを選ぶポイント

オリーブオイルを購入するときにもうひとつ注意しなければならないのは、入っている容器がガラスか? それともプラスチックか? という点です。

「個人的におすすめしたいのは、一般的な目安として、オイルをより安定した状態に保ってくれるガラス容器のほうが安全でしょう」と、ジョーンズさんは言います。「プラスチックのボトルは空気を通しやすく、オリーブオイルが酸化しやすいので注意が必要になります。ガラス製の瓶、または缶に入っているほうをおすすめします。光に当たるとオイルが変質するので、瓶の色はグリーンや黒など遮光の度合いが高いものがベターでしょう」とのこと。

ちなみに心配するほどのことではありませんが、オリーブオイルの発煙点(料理で過熱したときに煙が発生して分解する温度)を。北米オリーブオイル協会によれば、エキストラバージンで摂氏およそ177~210度(華氏350~410度)、それよりライトなオリーブオイルだと、およそ199~243度(華氏390~470度)で煙が出始めるそうです。

料理に使用するときの
注意点と安全性

食べ物というものは、基本的に熱を加えれば加えるほど(そして加熱時間が長くなるほど)、より多くの栄養成分が失われてしまうものです。ジョーンズさんによれば、「脂肪を含む食物が発煙点に達すると(抗酸化物質ではなく)酸化促進物質が発生して、細胞にダメージを与える可能性があります」とのこと。

「そのような理由から、オリーブオイルを調理に使用するのを控える人がたくさんいます。ですが、それらの悪影響を示した研究に関しては決定的な報告はこれまでありません」と、ジョーンズさんは付け加えています。

例えば学術誌『アクタ・サイエンティフィック・ヌートゥリショナル・ヘルス』に掲載された2018年の研究では、「オリーブオイルを摂氏240度まで加熱して、180度に6時間さらしても劣化しない」という結果も報告されています。

これを受けてネデスクさんも、次のように言っています。

「オリーブオイルは、“加熱しても安全”と言っていいでしょう。『加熱することによって心臓に良いとされる化合物が破壊され、逆に健康にさまざまな悪影響を与える化合物が生成される』と考える人も存在することは確かです。ですが、ほかのオイルと比べても、『オリーブオイルは、加熱されても安定しているオイルのひとつである』という研究結果も報告されています。キャノーラ油やココナッツオイルよりも、熱に強いのです」。

オリーブオイルを調理に使用する場合、ネデスクさんがおすすめしているのは“ピュア”か“バージン”です。そして、加熱せずに料理にかけるのがお好みなら、「エクストラバージンのものを選んでください」と言います。

◇まとめ

つまり、適量のオリーブオイル(1日に大さじ2~4杯程度)を使用することに対し、「否定的な証拠はない」ということです。

オリーブオイルには身体にいい上質な脂肪やビタミンが含まれていて、運動時のパフォーマンス向上も期待でき、「日々の健康を保つに役立ってくれる」と言えるのです。もちろん、人の身体は人それぞれ。あなたのニーズや健康状態にふさわしい適量がどのくらいになるのか? 詳しく知りたい人は、かかりつけの医師か栄養士さんに相談することをおすすめします。

Source / Bicycling
Translation / Satoru Imada
※この翻訳は抄訳です。