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サイクリングの魅力を伝える世界有数の自転車メディア「Bycycling(バイシクリング)」から、サイクリストにとって重要な筋肉群となる「身体の背面」のトレーニング方法をピックアップしました。なぜなら、このトレーニングはサイクリストばかりでなく、一般の人にとっても姿勢を健康的に保つために重要な筋肉群となるからです。

さらに、ここで紹介しているトレーニングはダンベル1セットがあれば効果的なトレーニングの実現が可能であり、(日本的に言うなら)タタミ2畳ほどの広さがあれば十分できるので自宅トレーニングとしてもおすすめできます。

筋肉のアンバランスを解消し、パワーアップする「ポステリアチェーン(身体の背面の筋群)」トレーニング

デスクワークや自転車に乗っているときの姿勢を考えてみてください。かなり前傾姿勢になっていて、肩は丸くなり、背骨、腰、膝が曲がった姿勢ではないでしょうか。

自転車に乗っているときには、大腿四頭筋や胸筋、腹筋など、身体を安定させ、自転車をコントロールするために筋肉にも大きな負荷がかかっています。つまり1日中、身体の前面にある筋肉を主に使っていることになります。このような前面の筋肉中心の生活スタイルに対する見事な解毒剤となるのが、「ポステリアチェーントレーニング」…つまり、身体の背面の筋群を鍛える筋トレなのです。

ポステリアチェーン(posterior chain)とは何か?

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Deagreez//Getty Images

ジムのトレーナーやサイクリングコーチが、この筋肉群のことを「身体の後ろ側全体の筋肉」という意味でポステリアチェーン(Posterior Chain)*と呼んでいるのを聞いたことがあるかもしれません。

ポステリアチェーンとは、首の後ろから胴体の後ろ側(背骨を支える広背筋、菱形筋、大腰筋、脊柱起立筋)から、大臀筋、ハムストリングス(3つの筋肉の総称で内側に半腱様筋・半膜様筋、外側に大腿二頭筋)、ふくらはぎ…までを指しています」と、米国ペンシルベニア州にあるクロスフィットジムのオーナーであり、ウエイトリフティングとクロスフィットの公認コーチであるイアン・フィネスタイン氏は説明してくれました。

※補足:運動学における「運動連鎖」の一種で、“Posterior(ポステリア)”とは「後方(背面)」を意味し、そこに環状の部品をつなげて線状にしたもの…つまり“Chain(チェーン)”のように人体における背面に付着する筋肉の運動連鎖のことを指します。 これらの筋肉による運動連鎖により、姿勢や動作中のバランスを適切に保ちケガの予防や強い力の発揮など、効率の良い動作へと導いてくれます。逆に、これらの運動連鎖がうまく働かないと、腰痛や猫背、肩こりの原因にもつながるでしょう。特に年齢を重ねていくると、背筋、殿筋群やハムストリングスの筋肉が衰えやすくなるので注意が必要です。

なぜサイクリストやデスクワークの人にとって、ポステリアチェーンを鍛えることは重要なのか?

簡単に言うなら、「日常生活や効率的でパワフルなサイクリングのためには、ポステリアチェーンを強化する必要がある」のです。

「床から何かを持ち上げるとき、『足を使え』とよく言われるかと思います。そのため、そのようなパフォーマンスの向上を願う人はスクワットに注力するでしょう。でですが、本当はヒンジ*やデッドリフトも必要となるのです。そこで、ポステリアチェーンに焦点を当てたトレーニングの代表的種目である“デッドリフト”の正しいフォームを学ぶことが大切なのです。効率的にデッドリフトを行うことは身体のバランスを整え、機能的に健康であるために非常に重要なことだと思っています」と、フィネスタイン氏は話しています。

※ヒンジ(hinge)とは、「蝶番(ちょうつがい)」という意味になります。例えば「ヒップヒンジ」という種目であれば、股関節を扉の蝶番のように曲げ伸ばしするトレーニングのことを指します。

「首の後ろから胴体の後ろ側」の筋肉を鍛えるメリット

「身体のバランスを整える」とは、まさにこのことを指していると言っていいでしょう。日常的な動作や姿勢は身体の前面を縮めたり、酷使してしまうことが多い。なので反対側の筋肉群、つまりポステリアチェーンを強化するトレーニングが必要というわけです。強化することで怪我を防ぐことが期待でき、同時に身体をパワフルで効率的なマシンのように機能させるために主役だけでなく脇役の筋肉も含め絶妙なコンビネーションで身体を動かすことができるようになる…という考え方になります。

さらにフィネスタイン氏が話してくれたように、デッドリフトのようなポステリアチェーンを意識したヒンジ動作は背中を平らにして体幹を鍛えるので、「強い姿勢を保つのに役立つ」と彼は説明しているのです。

そのことで背中を丸めて猫背になるような姿勢から解放され、呼吸が妨げられる可能性や、身体全体の痛みから守ってくれるのです。つまり、ポステリアチェーンを鍛える筋トレメニューは、自転車に乗るときのフォームを改善するだけでなく、乗り心地を改善し、より快適にすることにもつながるのです。

身体の「背面筋肉群」を鍛える効果的なトレーニング4種類|動画解説

フィネスタイン氏がサイクリスト向けのポステリアチェーントレーニングを監修してくれました。これで身体のバランスを整え、パワーを供給する筋肉を鍛え、ペダリングの効率を高め、姿勢を改善するための体幹を鍛えることを目指します。

この筋トレメニューの実施方法:下記のトレーニングの説明に記載されているレップ数を実行してください。2~3セット行い、トレーニングやセットの間は必要に応じて休息してください。フィネスタイン氏が各トレーニングを実演していますので、正しいフォームを真似することができます。

ダンベル一式が必要になります。また必要に応じて、エクササイズマットもしくはヨガマットを用意するといいでしょう。

【1】ダンベルを使った「デッドリフト」の効果的なやり方

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動画解説|「デッドリフト(Deadlift)」
  1. 両足を腰幅に開き、両手にダンベルを持ちます。
  2. 肩を落とし、背中を平らにして体幹に力を入れ、お尻をまっすぐ後ろに突き出し腰を「ヒンジ(お尻を引き、股関節を中心に、お腹と太もも前を近づけていく動作 )」します。
  3. 膝を少し曲げ、胴体とウエイトを床に向かって下げます。
  4. ハムストリングス(3つの筋肉の総称:内側に半腱様筋・半膜様筋、外側に大腿二頭筋)が引っ張られることを感じたり、または床とほぼ平行になったら停止します。
  5. それから、大臀筋に力を入れながら足を動かし、立ち上がります。これを繰り返します。6〜10レップ数(回数)繰り返しましょう。

【2】ダンベルを使った「ベントオーバーロー」の効果的なやり方

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動画解説|「ベントオーバーロー(Bent-Over Row)」
  1. 足を腰幅に開いて立ち、両手にダンベルを持ち、手のひらを向かい合わせにして前に出します。
  2. 肩を落とし、背中を平らにして体幹に力を入れ、お尻をまっすぐ後ろに突き出し腰を(上述のように)「ヒンジ」します。
  3. 腕は前にまっすぐ下ろします。これがスタートポジションです。
  4. 肘(ひじ)を脇に寄せながら、ダンベルを後ろに引いて、ローを行います。肩は耳から離すようにし、体幹をしっかりと鍛えましょう。
  5. ダンベルが胸郭(きょうかく )に届いたら、腕をまっすぐ伸ばし、スタートポジションに戻します。これを6〜10レップ数(回数)繰り返しましょう。

【3】ダンベルを使った「スモウデッドリフトハイプル」の効果的なやり方

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動画解説|「スモウデッドリフトハイプル(Sumo Deadlift High Pull)」
  1. 足を肩幅よりやや広めに開き、つま先をやや外側に向けて立ち、両手でダンベル1個(またはケトルベル1個を持ち)、手のひらを自分に向けます。
  2. 肩を落とし、背中を平らにして体幹に力を入れ、お尻をまっすぐ後ろに突き出し腰を「ヒンジ」します。
  3. 膝をわずかに曲げ、下半身とウエイトを床に向かって下げます。ハムストリングスが引っ張られるのを感じたり、または床とほぼ平行になったら停止します。
  4. それから、足を動かし立ち上がります。立ち上がるときには、肘を上げ、少し後ろに引いて、ダンベル(かケトルベル)が胸に届くようにします。ウエイトを下げ、繰り返します。6〜10レップ数(回数)繰り返しましょう。

【4】ダンベルを使った「ダンベルスナッチ」の効果的なやり方

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動画解説|「ダンベルスナッチ(Dumbbell Snatch)」
  1. 足を腰幅よりやや広めに開いて立ち、左手でダンベルを前に持ち、手のひらを自分に向けます。
  2. 肩を落とし、背中を平らにして体幹に力を入れ、お尻をまっすぐ後ろに突き出し腰を「ヒンジ」します。
  3. 胴体とダンベルを床に向かって下げ、膝を少し曲げます。その後、足を駆動し立ち上がると同時に肘を高く上げて、肩も上げて後ろに引き、ウエイトを肩に乗せてから、肘を反転させ…ダンベルをまっすぐ頭上に押し上げるようにします。
  4. このとき、下半身に力を入れて一気に行う必要があります。
  5. ダンベルを前に下ろし、繰り返します。5〜10レップ数(回数)繰り返しましょう。片手が終わったら左右入れ替えて行いましょう。

Source / Bicycling
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。