走行中のパンクはどんなときであれ、うれしくないものです。しっかりと準備ができていなければ、1日のスケジュールが台無しになるかもしれませんし、危険な目に遭う可能性さえあります。ですが、車内にスペアタイヤがあってその交換方法を知っていれば、おそらく1時間もかからずに運転を再開することもできるでしょう。

 米クルマ専門メディア「Road&Track」編集部は今回、マクラーレン・ブランドの最大のマーケットである北米における「北米ディーラー・オブ・ザ・イヤー」として表彰した名門ディーラー、「マクラーレン・フィラデルフィア」の上級技術者であるケヴィン・ハインズ氏に、パンクしたタイヤを道路脇で素早く安全に交換するための適切な方法を教えてもらいました。ハインズ氏は北米で唯一の「マクラーレン・F1」工場認定技術者であり、約2億円のスーパーカーのメンテンナンスに日常的に携わっています。つまり、パンクしたタイヤの適切な交換方法について誰よりも理解している人物というわけです。

※ここから先を読む前に、まずは自分のクルマの取扱説明書に目を通し、タイヤの交換方法についての的確な指示を参考にしましょう。なぜなら、メーカーの指示はこれからご紹介するアドバイスと異なる可能性があります。

タイヤのパンクに備える

 最も重要なことは、日頃からタイヤのパンクに備えておくことです。ハインズ氏は「手持ちのスペアタイヤには、常に適切な量の空気を入れておきましょう。オイル交換をするときには、タイヤの空気圧もチェックすべきです。そしてこの際は、スペアタイヤについてもチェックが必要となります」と指摘します。

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 パンク時のタイヤ交換で絶対に避けたいのは、スペアタイヤまで空気が抜けているという状況です。また、タイヤ交換に必要なその他の工具についても、定期的にチェックしておきましょう。「通常は緊急用の油圧ジャッキと自分のクルマに合ったラグレンチ(クロスレンチ)、その他必要な細々としたツールを準備しておくべきです」とハインズ氏。「ジャッキスタンド(ウマ)」「軍手」「車輪止め」あたりも用意すべきです。そして、工具をそろえるだけで終わりではありません。一式そろっているか? どれも壊れていないか?も定期的に確認しておくべきです。

パンクの際にどこに駐車するか

 高速道路を走行中にパンクした場合、「すぐに路肩に寄せて他のドライバーの邪魔にならないようにする」と考えるのが普通かもしれません。自分のクルマが自力では動くことができないほど故障しているという場合には、これが唯一の選択肢となるでしょう。ですが、徐行しながらでも最寄りの出口や安全な場所に動かせるという場合には、そのようにしたほうが賢明でしょう。

 「パンクしたまま安全な場所まで運転し、それから路肩でタイヤ交換に臨むのが賢明です。ご存じのとおり夜間や雨天時など、高速道路で本線車道の近くに立つことは極めてリスクが高い行為です」と、ハインズ氏はコメントしています。

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 自分のクルマが路肩で動けなくなり、周囲をクルマが通過する中でタイヤ交換をすることに不安を感じる場合は、レッカー車を呼んでください。このような状況では、三角表示板や発煙筒を持っておくことが重要となります。

 タイヤ交換ができる安全な駐車場所を見つけた場合、そこが平坦であることをしっかり確認してください。また、柔らかい土や砂、雪の上、草地などに駐車をするのはやめましょう。緊急用のジャッキでクルマを安全に持ち上げるためには、硬い地面で作業を行うべきです。

タイヤ交換の方法

 安全な場所に駐車ができたら、ようやくタイヤ交換の準備完了です。交換に必要なすべての工具をクルマから出し、現在の状況を把握しましょう。故障した部分がタイヤだけなのかどうか、確認する必要がありますので。タイヤ交換を終えた後、プラスチックの部品や緩んだホースがボディの下部からぶら下がっているのを発見するような事態に遭遇したくはないでしょうから…。

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 クルマをジャッキで持ち上げる前には、タイヤが前や後ろに転がらないように固定すべきです。まずはサイドブレーキをかけ、マニュアル車ならギアを1速に(エンジンはもちろん切っておきます)、オートマ車ならパーキングに入れてください。また、念のため交換するタイヤから最も遠いタイヤをしっかりと輪留めします。

 次に、ジャッキアップの前に交換するホイールのナットをラグレンチで緩めておきます。先にクルマを持ち上げてしまうと、タイヤが自由に動いてしまうので、なかなかナットを緩めることができない可能性があるからです。

 ですがジャッキアップ後、緩めるのを忘れたという場合には、リヤであればパーキングブレーキを使用してロックしてレンチで緩めればOKです。ですがフロントは、クルクル回ってしまいます。そんなときはレンチをナットに挿しながらタイヤを時計周りに回転させるようにします、その回転惰性を利用してレンチを反時計回りに回転させる秘技もあります。ですが、これにはコツが必要なので、やり方が悪いとナットやホイールを破損する可能性があるので気をつけてください。
  

 次にジャッキアップです。ジャッキは基本的に安全なツールですが、欠点がないというわけではありません。取扱説明書で指定されたジャッキアップポイントで使用する必要があるのはこのためです。この指定に従わなかった場合、クルマを痛めてしまったり、作業者を危険にさらす可能性がありますので、こちらも細心の注意を払ってくだい。

 そうしてクルマがジャッキアップできたら、ジャッキ側の車体の下にスペアタイヤを置きます。これは交換するタイヤを外しているときに、ジャッキが外れたり壊れたりしたときにクッションとして利用するためです。その後、レンチでナットを完全に緩めてタイヤを外し、スペアタイヤを取り付けます。このとき、外したタイヤは同じ安全上の理由でジャッキ側の車体の下に置きます。

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 スペアタイヤを取り付けたらナットをできるだけ締め、車体をゆっくりと地面に降ろします。ジャッキを降ろしたら、もう一度ナットをしっかりと締めます。あとは工具をすべてクルマの中に入れるだけです。これらのプロセスを適切に行えば、運転を再開できるはずです。できれば数km走行してから、いずれかのナットが緩んでいないかチェックしてみることをおすすめします。

 スペアタイヤで運転する際の注意点は、取扱説明書を参照しましょう。一部のクルマはスピード制限のあるスペースセイバー(サイドウォールを折りたたんだ状態で収納できる仕組みのスペアタイヤ)を採用していますが、通常通り使用できるフルサイズのタイヤを採用しているクルマもあります。長期間使用していないスペースセイバーで運転する場合、タイヤが不均等に摩耗(まもう)することもあり、スペースセイバーが非駆動輪の場合、差動装置に余計な負担をかけることさえあるので気をつけてください。

Source /Road & Track
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。