この日訪れたのは、山口県宇部市の住宅街に突如現れる「maison owl」。まるで洞窟の中のような摩訶不思議な空間が広がる、知る人ぞ知る完全紹介制のレストランです。住宅街の高台に位置し、敷地の大部分を掘り起こした地下(本来であれば敷地の地下に当たるスペース、ということ)に。そこはまるで、自然の力によって生み出されたかのような洞窟空間が広がっています。この設計は建築家の石上純也氏によるもので、専門誌の表紙を飾るなど建築界でも大きな話題となりました。

▼maison owlのインスタグラム

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「maison owl」の内部はまるでトルコにある世界遺産カッパドキアのよう。小さなキャンドルが赤い土壁をほのかに照らし、非日常な空間の中で会食を楽しみます。料理はフレンチをベースとしたフュージョン(多国籍・無国籍)。フグや赤ウニ、宇部牛など地元山口の名産品をふんだんに織り込んだ丁寧なつくりのコース料理。ワインのペアリングもあり、視覚と味覚と嗅覚で豊かな味わいを旅する贅沢なひとときです。

今回、ホテルとの行き帰りの移動の足となったのが、2022年5月に発表され、同年12月初頭から徐々に日本に入ってきた「レンジローバー スポーツ」です。フラッグシップモデルの「レンジローバー」をスポーティにセッティングし、オフロードをもろともしない走破性と圧倒的なラグジュアリーを兼ね備えた3代目モデルです。

後部座席で堪能するジェントルな走り、そして、まるで高級ブランドのバッグに包まれているかのような上質なインテリアのおかげでしょうか…。レストランから続く高揚感と上質な時間は、車内でも途切れることがありません。それどころか、夜の興奮はさらに反響し、同席したゲストとの料理や空間についての感想話にも花が咲きます。「レンジローバー スポーツ」を言葉にするならば、「ラグジュアリーかつ非日常の体験とシームレスにつながる移動空間」。そこに、「レンジローバー スポーツ」がかなえるラグジュアリーの正体の一端を見たような気がしました。

削ぎ落とした後には本質が残る

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JAGUAR LAND ROVER

そもそもこの日、山口県に向かった目的は「レンジローバー スポーツ」に試乗することでした。この車はシリーズの中では「レンジローバー」に次ぐラグジュアリーモデルで、走りの楽しさと贅沢さ、そして最上級の乗り心地をかなえたプレミアムSUVとされています。全長は「レンジローバー」のスタンダードホイールタイプ(5065ミリ)よりも短い4960ミリ。標準時の最低地上高は216ミリながら、見た目的にはそれ以上に低く見えるデザインが施され、「スポーツ」という名に違わぬ躍動感とアスリートのような面構えが印象的です。

全体に貫かれているのは、ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエが普及させたコンセプトのひとつ“less is more”に代表される「リダクショニズム(還元主義)」というデザイン言語。装飾的な要素を極限まで削ぎ落とすことで、モダンさを表現しながらも「レンジローバー スポーツ」としての本質が際立つデザインに仕上がっています。それは、ルーフライン、ウェストライン、シルラインという「レンジローバー スポーツ」のアイデンティティはキープしつつ、無駄な装飾や突起物さえも極力排除。ドアハンドルも不使用時は電気制御でボディに組み込まれるという徹底ぶり。それはまるで、ひとつの原石から削り出された貴石のようでもあり、要所に組み込まれた優雅な曲線から放たれる輝きによって洗練さを強く印象づけています。

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車を降りたくない…。
伸びやかな走りはクセになります

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山口宇部空港到着後すぐにステアリングを握り、向かったのは日本最大級のカルスト台地が広がる名勝 秋吉台国定公園です。試乗したのは、3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンにマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたモデル。

運転席に身を沈めると、コクピットのほどよい高さに気がつきます。前方をやや見下ろすような視線の位置は快適そのもので、ストレスフリー。ボンネットの見切りも良く、ロードクリアランス(車の、車輪を除く最も低い部分と、路面との間隔)は抜群に感じました。今回は試すことができませんでしたが、これなら、ロングドライブでも疲労はかなり軽減されることでしょう。

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いざアクセルを踏み込むと、ジェントルな走り出しと、どこまでもすーっと滑るような伸びやかな走りに思わず顔がほころびます。静粛性に優れ、途中までディーゼルであることを忘れてしまうほどでした。今回の試乗車には未搭載だったものの、アクティブノイズキャンセレーション(各ホイールアーチに搭載したマイクでノイズの源となる音を収音し、それと正反対の音波を流すことでノイズを打ち消す仕組み)を使用すれば、車内にはさらなる静寂が訪れるというのだから、これには本当に驚くばかり。

肝心の走りですが、思い描いたコースを思い描いた通りにトレースしてくれるコレクティブな走りは感動モノで、ほとんどの場面で路面に合わせてステアリングを微調整する必要はありません。こちらの呼びかけに対して、車は気品ある走りで応えてくれる。そんなステアリングが触媒となって、車と濃密なコミュニケーションを交わすことができました。

時折見せるたくましさ。
否が応でも感情が昂ぶります

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サスペンションの繊細な制御で地面からの振動もほとんど感じることなく、浮遊感を感じるようなソフトな乗り心地も特筆すべきでしょう。しかも、ただ柔らかいだけではなく、どこか芯を感じる乗り味。微妙なハンドリング操作に対しても寝ぼけることなく、シャープな反応を示すので全体的にはシャキッとした走り心地。これが「スポーツ」ならではの制御なのだと感じました。

トルクの太さも圧巻でした。秋吉台国定公園の展望台へと続く急勾配も、低回転域ながら余裕を感じさせるトルクで涼しげにスイスイと上っていきます。今回オフロードでの走破性の高さを体感する機会こそありませんでしたが、そのたくましさの片鱗を感じさせるには十分な走りぶりです。

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上質な肌触りのレザーや、所々に散りばめられたクロームのディテールなど、洗練されたモダンラグジュアリーなインテリアは言うに及びません。13.1インチという大型インフォテインメントシステムや、(水から生まれたイオンで、目に見えない空気の汚れを抑える)ナノイーX搭載の空気清浄システムをはじめ高い快適性を追求した空間づくりが目指されています。

2日間の試乗を経て、改めて感じたこと。それは「レンジローバー スポーツ」とは、それに触れることで豊かな気持ち、さらにライフスタイル全体へと導いてくれるラグジュアリープロダクトなのだという思いでした。ハイファッションの洋服や時計、宝石のように身につける物ではありませんが、流れているのは本質的には同じDNAであり、同一の地平軸で語るべき存在であると言えるでしょう。

フラッグシップモデルである「レンジローバー」の風格を継承しつつ、スポーティな感情と、よりアクティブな時間を約束してくれるラグジュアリー・パフォーマンスSUV。それこそが「レンジローバー スポーツ」のひとつの姿でもあるのかもしれません。

preview for LAND ROVER「RANGE ROVER SPORTS」登場

●お問い合わせ先
ランドローバーコール(土・日・祝除く 9:00~18:00)
TEL 0120-18-5568
公式サイト