コーヒーがもたらす健康効果12選|研究論文から読み解く
「コーヒーを飲まずして1日を始めるということは考えられない」という人は、意外に多いのではないでしょうか。
まずは濃いコーヒーを飲むことで、朝のエンジンをかけることを常にしている人もいるでしょう。そして、朝のトレーニング、タフな会議、子どもの朝食づくりなどのトリガー役として、コーヒーを活力の源になっているはずです。2020年にThe National Coffee Associationが発表した調査によれば、「アメリカ人の10人に7人が毎週コーヒーを飲みます。そして 62%が、毎日コーヒーを飲みます」」という結果が報告されています。
さらにその効果に対して、「コーヒーは日々の活力を与えてくれるだけでなく、実は多くの健康効果ももたらしてくれる」という研究論文もあります。そこで本記事で紹介するのは、あなたがすでに飲んでいるコーヒーの健康効果について再確認しようということです。そのため、これからコーヒーを飲み始めるきっかけにしてほしいという内容でも、より多くのコーヒーを飲ませるための内容ではありませんので、ご注意ください。
ブラックコーヒーの健康効果とは?
では、これまでの研究論文で発見された12の健康効果を紹介します。ですが、覚えておいてください。さまざまな研究結果から判断した結果、現状は適量が重要です。
「カフェインを過剰に摂取した場合には、中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気等の健康被害をもたらすことがあります。 このため、食品からのカフェインの摂取に関しては、国際機関などにおいて注意喚起等がなされています」と、厚生労働省も公式サイトで述べています。そんな中、幸いにも過剰摂取をしなくても、健康上のメリットは得ることは期待できることも研究によって報告されています。では皆さん、コーヒーを愛する新たな理由を、ここで見つけてください。
【1】糖尿病のリスクを減らす可能性|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
ドイツのフーベルト・コルブ(Hubert Kolb)医学博士を中心として行われた研究論文によれば、「定期的にコーヒーを飲んでいる人は飲まない人に比べ、2型糖尿病になる確率が低い」ということが導き出されました。
そしてその効果は、「一気に飲めば飲むほど高まる」ということ。別の論文によると、「1日に4〜6杯コーヒーを飲む人は、糖尿病のリスクをさらに減らすことができる」という研究結果も出ています。
どのような因果関係があるのかというと、コーヒーにはクロロゲン酸と呼ばれるポリフェノールが多く含まれていて、血糖値の濃度を下げたり、腸での吸収を抑えたりすることがこれまでの研究によって報告されています。「それによって、この糖尿病予防効果の一部が説明できるのではないか」と考えられています。
つまり、まだ研究は続くということでもあります。
【2】居眠り運転防止に効果が期待できる|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
居眠り運転は交通事故の主要な原因のため、運転する前にエネルギーを補給することは理にかなっています。
運転前のコーヒーです。オランダのユトレヒト大学薬学科の研究者モニーク A.J. メッツ博士らの研究論文では、「退屈な4時間の運転中にカフェイン入りのコーヒーを1杯飲んだ人は、ディカフェのコーヒーを飲んだ人よりも安定した走りで速度も維持でき、信頼性の高い運転をする」という結果を導いています。
【3】腎臓結石を予防する可能性|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
「コーヒーを飲むと、腎臓結石(尿路結石)のリスクを減らすことができる可能性」を導き出した研究論文もあります。イタリアの腎臓専門医であり、ジェメリ大学病院のピエトロ・マニュエル・ファラーロ准教授らによるこの研究によれば、「コーヒーを飲む人は週に1回未満しか飲まない人よりも、腎臓結石になる確率が低かった」ということです。
「コーヒーにはカフェインが含まれているため、尿の量を増やし、腎臓結石形成の原因となる余分なカルシウムとナトリウムを体外への排出をうながす」という解説で研究者たちはその可能性に対して言及しています。
コーヒーに飽きたのであれば、紅茶やワイン、ビールを飲んでもいいまもしれません。米医学誌「Clinical Journal of American Society of Nephrology」に上記と同じピエトロ・マニュエル・ファラーロ准教授らが研究した結果として、「コーラを1日1杯以上飲んでいた人は、1週間に1杯未満の人と比べて腎結石リスクが23%高く、コーラ以外の加糖炭酸飲料では33%上昇。人工甘味料入りのコーラもリスクが上昇する傾向にあった。一方、コーヒーや紅茶、ワイン、ビール、オレンジジュースではリスクは低下」と結論づけています。これは米国の医療従事者を対象にした3つの研究(HPFS、NHS、NHSⅡ)から得た計19万4095人分のデータを検討した上での結果になります
この研究の共同研究者であるハーバード大学医学部医学部の関連医療機関であるブリガム・アンド・ウィメンズ病院にて疫学を研究するゲイリー・クルハン教授らは、「腎結石の発生に及ぼす影響は飲み物の種類によって異なることが認められ、加糖炭酸飲料の摂取量が多い人では腎結石の発生率が高かった」と結論づけています。
【4】記憶力向上の可能性|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
脳科学を専門で研究するダニエル・ボロタ博士らがまとめた2014年の研究論文によれば…、
100名以上の被験者に対し、まずは絵に描いた物体を見せ、「屋外で使うものか?」「屋内でのものか?」を問いました。その問答ののち、被験者は200ミリグラムのカフェイン(スターバックスのブロンドローストのショートに含まれている量よりわずかに多い)と、カフェインなしのプラセボ(偽薬錠剤)のいずれかを受け取り摂取してもらいます。
そして翌日再来した被験者は…、
前日と同じ画像のいくつかを、新しい画像やよく似て見える新しい画像と無作為に混ぜて再度見せます。そして、その見た画像を「古い」「新しい」「元の画像に類似」の3種類に分類するようにお願いすると、偽薬錠剤グループもカフェイン錠剤グループも画像を「新しい」か「古い」かには特定できたものの、カフェインを摂取した被験者のほうが「類似」の画像を元の画像と区別する正確さが優れていたそうです。
逆に偽薬を受け取った被験者のほうは、これら「類似」の画像を「古い」元の画像と誤って認識していたということ。また、このような類似の画像を認識する際のカフェインに誘導される記憶動作の改善は、カフェインの少量摂取や画像判定試験の1時間前での摂取では見られなかったとも言います。
とは言え、厳密にカフェインが直接的な要因になっている結論は出ていません。カフェインが「疲れた」という脳のセンサーを、正常に働かせないようにしているゆえ、脳がこの機能を正常化させるために変化しているとも考えられています。
よって、「コーヒーは戦略的に摂取することが賢明」のようです。そしてまた、その逆に「コーヒーは戦略的に摂取しないほうが賢明」とも言えるでしょう。
【5】肝臓がんのリスクを減らす可能性|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
日本における「肝臓がん」の情報として、国立研究開発法人 国立がん研究センターが発表した2020年の「がん死亡数の順位」の集計では(男女計で)5位、2019年の「がん罹患者の順位」でも(男性のみで)5位になっています。一方、世界では「死に至るがんとしては第2位であり、世界で6番目に多く診断されているがん」とされています。
この「肝臓がん」に対して、名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻 社会生命科学 講師である田村高志博士らによる研究論文によると、「1日に2杯のコーヒーを飲む人は、コーヒーを飲まない人に比べて発症する確率が低い」という結果が導き出されました。ここで研究者は、「コーヒーに含まれている化合物が、肝臓の酵素を低下させ、肝臓病の進行を遅らせるためではないか?」と考察しています。
また、前述の国立がん研究センターが行った多目的コホート研究(同じ地域に住んでいる、同じ職業を持っている、同じ年に生まれたなど共通の特性を持つ集団を追跡し、その集団からどのような疾病が発生し、また健康状態が変化したかなどを観察して各種要因との関連を明らかにしようとする研究)で、1990年と1993年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2004年現在)管内に居住する人々に、アンケート調査からの回答のうち、40~69歳の男女約9万人については2001年まで追跡調査として「コーヒー摂取と肝がんの発生率との関係について」調べました。
するとその結果、「コーヒーをほとんど飲まない人と比べ、ほぼ毎日飲む人では肝がんの発生率が約半分に減少し、1日の摂取量が増えるほど発生率が低下。1日5杯以上飲む人では、肝がんの発生率は4分の1にまで低下していた」とのこと。また、これらの発生率の低下は男女に関係なく見られたそうです。
しかしながら、「コーヒーをよく飲む人では喫煙者が多く、野菜やお茶の摂取が少ない、男性では飲酒量が少なく、女性では飲酒量が多いなどの傾向」も確認されたそうで、これらの要因もが肝がんの発生率と関連する可能性があるので、その影響も考慮することが必要です。
【6】ハードなトレーニングも可能になる|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
ジムに行く前にコーヒーを1杯飲めば、パフォーマンスが向上する可能性があるようです。
iイギリスのコベントリー大学の准教授、ニール・クラーク医学博士らによる研究論文によると、「サイクリングの1時間前にコーヒーを飲んだ男性は、他の健康系飲料を飲んだ人よりも早くトレーニングを完了した」とのことです。関連記事:コーヒーは運動前? 運動後?「ワークアウト効果を上げる」コーヒーの飲み方
【7】メラノーマ(ほくろのような皮膚がん)のリスク軽減効果の可能性|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
腫瘍学の研究を掲載している医学誌『Journal of the National Cancer Institute』で発表された研究論文によると、「1日に4杯以上コーヒーを飲む人は、全く飲まない人に比べて、皮膚がんの中でも最も致命的なメラノーマ(一般的には<ほくろのがん>と言われる非常に悪性な皮膚がんの1つ)になる可能性が20%低い」という結果が導き出されました。
ここで研究者たちは、「コーヒーに含まれるクロロゲン酸が、紫外線を浴びることで発生するCOX-2という酵素の発現を阻止する可能性がある」という考察しています。
【8】気分転換・うつ病リスクの軽減|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、人間の心の健康にはとても大切なことです。そんな中でコーヒーは、「幸せをもたらす薬」のようなものとも言えるかもしれません(つまり、その逆もありうることも考慮しましょう。あとは自己判断です)。
スペインのナバーラ大学医学部の研究チームが発表した研究論文によると、「1日に最低4杯のコーヒーを飲む男性は、飲まない男性よりも『うつ病』になるリスクが低い」という結果が報告されました。
さらに、ハーバード大学の研究者たちによる研究論文によれば、「1日に2〜3杯のコーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて自殺で死亡する確率も約50%低い」という結果も発表しています。
このことから研究者たちは、「カフェインが気分を調整するドーパミンの伝達を促進することで、穏やかな抗うつ剤として作用する可能性があるのではないか?」と考察しています。
【9】多発性硬化症のリスクを軽減する可能性|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
ドイツにあるレーゲンスブルク大学病院のインターンであったレナ・ハーデン氏とレーゲンスブルク大学の教授ロベルト・ウィンザード医学博士との共同研究として2018年に発表した論文によると、「コーヒーは、20歳~40歳の間に最も多く発症する神経疾患である多発性硬化症の発症リスクを低減する可能性がある」という結果が導き出されたそうです。
その他のいくつかの研究の中には、「1日に4杯以上コーヒーを飲む人は全く飲まない人に比べて、1年間に病気になる確率が33%低い」という研究結果もあります。
これらのことから、「カフェインには神経保護作用があり、病気の発症の原因となる炎症性タンパク質の産生を止めることができるのでは」と考えられ、さらなる研究が進められています。
【10】歯を守る可能性|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
コーヒーは、光り輝く白い歯を少し…くすませてしまうかもしれません。ですが、その一方で歯を守ってくれる可能性も示唆されています。
ボストン大学の研究者たちによる研究論文では、「毎日1杯以上のコーヒーを飲む人は、あまり飲まない人に比べて、歯周病の特徴である骨の喪失を伴う歯が少なく、歯が抜ける可能性が少ない」という結果を報告しています。
この研究の著者によれば、「コーヒーに含まれる抗酸化物質が、歯茎や顎(あご)の骨に害を与える体内の炎症プロセスを抑制する可能性がある」と結論づけています。
【11】脳と心臓を守る可能性|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
「1日に1杯のコーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて脳卒中になる確率が20〜30%低い」という結果が、大阪吹田の国立循環器病研究センター病院健診部で医長を務める小久保喜弘医学博士を中心に、国立がん研究センターと共同で発表した研究論文で明らかになっています。また、「1日1杯のコーヒーを飲む人は、心臓病のリスクも低下させる結果も出た」とのこと。
小久保医学博士らは、コーヒーには何故これほど保護作用があるのかは不明としながら、「コーヒーにはカフェインなどの生物学的に活性な化合物がいくつか含まれていて、これらがコレステロール値や血圧値の低下につながることが以前から指摘されている」とも述べています。
【12】長生きの可能性|コーヒーがもたらすメリットと健康効果
米国内科学会が発行している医学誌『Annals of Internal Medicine』の掲載された2022年の研究論文によると、「1日1杯半から3杯半のコーヒーを飲む人は、たとえ少量の砂糖を加えていても、飲まない人に比べて研究期間中に死亡する確率が最大で30%低い」という結果が報告されました。関連記事:人生150年時代の到来を科学者が予想
Source / Men’s Health US
Translation / Kazuhiro Uchida
※この翻訳は抄訳です。