《概要》

  • ドナルド・トランプ氏は「自分の父親はドイツ人だ」と言っていますが、それは真っ赤な嘘
  • ドナルドの父、フレッド・トランプ氏はニューヨーク生まれ
  • ニューヨーク市はドイツの一部ではない

◇「自分の父親はドイツ人だ」と誇るドナルド・トランプ

ドナルド・トランプ氏は記者たちに、「自分の父親はドイツ人だ」と語りましたが、それは本当のことではありません。トランプの父親フレッド・トランプ氏はニューヨークの出身で、ニューヨークはドイツの西側の国境から3800マイル(約6115.5キロメートル)しか離れていませんが、それは(その距離と同じくらいかそれ以上)真実とは程遠いことなのです。

トランプ氏のこの主張は、アメリカが加盟する「NATO(北大西洋条約機構)同盟国からの財政的な負担」という彼の大嫌いな問題について、「それはゴミ同然のレベルではないか」と主張しているときに出てきた会話になります。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Donald Trump wrongly states his father was born in Germany
Donald Trump wrongly states his father was born in Germany thumnail
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「私が言いたいことは、正直に言ってドイツは分相応の負担はしていないということ…」と、トランプ氏はホワイトハウスで行った記者会見の中でこの嘘を持ち出しましたのです。

「アンジェラ・メルケルにもドイツという国にも、私は大きな敬意を抱いている。私の父親はドイツ人だ、いいかね? 正確にはドイツ人だったといったほうがいい。彼はドイツの素晴らしいエリアの生まれだ。だから私は、ドイツに対してとても好感を持っている」とトランプ氏は話していました。

◇トランプの父フレッド・トランプってどんな人?

ドナルド氏の父親であるフレデリック・クライスト・トランプ氏は、1905年にニューヨークのブロンクスで生まれています。当時のブロンクスは、ドイツに併合されてなどおらず、ドイツの管理下でもありません。そして、そんな状態は今日も続いています。

フレッド・トランプ氏が、ニューヨークにあるドイツの大使館で生まれていたのであれば話は別ですが…。そうでなければ、彼は生粋のアメリカ人ののです。また実際に、フレッド・トランプ氏は友人たちに、「自分はスウェーデン人の両親の間に生まれた、だから自分が保有する建物からユダヤ人の店子を追い出さなかったのだ」と、友人たちには話していたようです。

ですが、歴史的に知識を忘れ、地理的な位置関係だけを見れば、フレデリック・クライスト・トランプ氏の両親はドイツ人とも言えなくもありません。

なぜならドナルド・トランプ氏の祖父母のあたるフレデリック・クライスト・トランプ氏の祖父母が生まれ育ったのは、現ドイツ南西部にあったバイエルン王国(ババリア)のカルシュタットという村だったのです。しかしながら父親フレデリック・クライスト・トランプ氏は1869年生まれ、そして母親のエリザベス・クライスト・トランプさんは1880年生まれです。

ババリアが共和制になり、同時にドイツ連邦を形成する州のひとつになったのは1918年のこと。ということで、歴史的見地から言えば、両親は私たちが考えるドイツ人ではまったくないのです。

そしてその後、フレデリック・クライスト・トランプ氏は16歳の時(ドイツ帝国が徴兵制を導入する可能性が浮上したのとほぼ同じ時期)にアメリカに移住。そして彼はカナダのブリティッシュコロンビアに開いたレストラン兼ホテルの事業で大儲けし、お金持ちになったわけです。

それから16年後、フレデリック・クライスト・トランプ氏はカルシュタットに戻るのですが、妻を娶(めと)ったあと、再びその地からとんずらすることになります。それに関しては彼が以前、徴兵逃れしたことを軍部が忘れておらず…彼を国外追放にしようとしたからということです。

このような一族の歴史を知ってしまうと、ドナルド・トランプ氏の不可解な発言や行動も理解の範囲内とし、中には同情の余地すら浮上する方もいるかもしれません…いやいや、それはありませんよね⁉

Source / Esquire US 
Translation / Hayashi Sakawa 
※この翻訳は抄訳です。