商品名はできるだけ短く。シンプルで覚えやすいものを選ぶように…。

 これは、マーケティングの専門家によるアドバイスの基本中の基本です(ウェブ上のタイトルにとっても…)。しかし、デンマークにある蒸留所「エンピリカル(Empirical)」は、その基本ルールを完全に無視。「Fu*k Trump and his Stupid F*cking Wall(トランプのク●野郎と馬鹿げた国境の壁)」という、独創的なネーミングのスピリットを発表しました。まぁ、確かに長い商品名ではありますが、多くの人にとってはこれなら覚えるのは簡単かもしれません(エスクァイア日本版もこれに学びます…)。

 ドナルド・トランプ米国前大統領が、不法移民対策強化という名目で、メキシコとの国境に壁を建設しようと取り組んだのは記憶に新しいところでしょう。ちなみに就任からの4年間で、約618キロの壁が建設されました。が、その9割は、既存の壁の建て替えに過ぎませんでした。まっさらな状態から新たに建設した壁は、4年間でわずか約64キロとのことです。

 その“偉(詑)業”を受けて、トランプ前大統領の名前を冠したこのお酒は、メキシコ・ユカタン州産の激辛唐辛子のハバネロを発酵させてつくられています。なんと、皮肉なことでしょうか…。さらに、醸造用の混合物の名前だけを見ると、刺激的な材料ばかりが並びます。しかし、最終的にできあがるハバネロ・スピリットの味わいは刺激的とはほど遠く、赤唐辛子のフルーティーな味わいが広がります。ハードな味わいしかなかった前大統領とは実に対照的です。

 
EMPIRICAL SPIRITS

 となると、このお酒の唯一のスパイシーな点は、その物議を醸す名前だけと言えるでしょう。発案者はエンピリカル社の創業者であるラース・ウィリアムさん。シャワーを浴びているときに、突然この名前を思いついたそうです。いわく、「政治的な動機はありませんでした」とのこと。政治的な動機と言うよりも、ふとした瞬間に沸き上がった、単なる心の叫びだったのかもしれません…。

 最初は仲間内でのジョークと、米国前大統領への不満を表現した他愛のないものでした。ところが、そのボトルが店頭に並んで1日も経たないうちに、インターネット上ではあっという間に大騒ぎに。ウェブショップではすぐに完売に…。

instagramView full post on Instagram

 ところが、ウィリアムズさんの心境としてはいささか複雑です。

 実際、今回の件を受けて、「Fu*k Brexit」や「F*ck Boris Johnson」と書かれたラベルのお酒を求めるお客は、後を絶たなかったそうです。ですが、話題性よりも味で勝負したいと考えるからこそ、彼はそういったお客の要望に対しては、毅然とした態度で「ノー」の姿勢を貫きました(その要望を聞いていたら、エンピリカル社はあっという間に世界ナンバーワンの酒造メーカーになっていたかもしれないわけですが…)。

 冗談はさておき、お酒は憎しみではなく、平和をつくるためのものです。同社は今回のお酒で得られた多額の収益の大部分を、テキサス州の南米系移民や難民に法的支援を提供する非営利団体であるRAICES(レイシーズ)に寄付することにしたそうです。

Source /Esquire NL
この翻訳は抄訳です。