• 「キンケード火災」、「ゲッティ火災」、「ティク火災」など、大規模な火災がカリフォルニア州を襲っています。
  • これらの大規模火災は気候変動や複雑な風況、何年にも及ぶ消防活動などの複数の原因が組み合わさり起きています。
  • ここ数年で火災は、より威力を増して長期化し、カリフォルアの広い範囲に被害をもたらすようになっています。

 カリフォルニア州北部で猛威を振るう「キンケイド火災」は、電力会社PG&E(パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー)の送電線が2019年10月23日夜に故障した後に発生し、さらに数マイル東では27日朝に別の火災が発生。29日時点ですでに7万5000エーカー(約3万350ヘクタール)を焼き尽くし、124棟の建物が消失、2人の怪我人を出しています。

 また、2019年10月28日未明に南部で起きた「ゲッティ火災」は、同州で最も交通量が多い高速道路沿いで発生し、数百万ドルの豪邸を中心とした何百もの家が危険にさらされました。

 このような大火災がカリフォルニアでは最近頻繁に起こり、威力が増して長期化しているように感じるかもしれませんが、まさにその通りなのです。

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 山火事の原因は様々です。「キンケード火災」はカリフォルニア州北部地域の天然ガス、電力供給を行うPG&Eのずさんな管理体制のインフラが原因で、複数の大規模火災が発生しました。しかし他にも、たばこの吸い殻が原因だったり、ホームレスの野営地から広がったり、花火が原因だったこともあります。自然発生する火災ももちろんありますが、大部分は人間の不注意によるものだと「サンフランシスコ・クロニクル」紙は報道しています。

 カリフォルニアは多彩な地形をしているので、鎮火が非常に困難となります。消防士は深い渓谷や傾斜のきつい坂の中で消化活動をしなければなりません。しかし、小さな火元がこれほど大規模な山火事に発展するのは容易ではなく、様々な条件がそろう必要があります。

 ではなぜ、カリフォルニア州にはこれほど大火災が多いのでしょうか?
 

理由その1:気候変動

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JOSH EDELSON//Getty Images

 火災の増加と激化に、気候変動が影響していることは明白です。

 近年、カリフォルニア州の気温は上昇し続けています。乾燥によりシエラネバダ山脈の積雪量は減り、春の雪解け水の量が減り、草木に必要な湿気が減少しています。このような環境では大火災が発生しやすく、急速に乾燥した草木に燃え広がることになります。

 「ニューヨーク・タイムズ」紙の報道によると、カリフォルニア州で史上最大の10件の火災のうち、9件が過去10年間に起きており、史上最も気温が高かった10年間のうち9年間が2000年以降に起きていることは偶然ではないでしょう。

 米海洋大気庁(NOAA)によると、史上最も気温が高かった2016年、世界の平均気温は20世紀の平均気温よりも0.99℃上昇しました。

 2016年にモントレー郡を襲った「ソベラネス火災」は、13万2000エーカー(約5万3400ヘクタール)以上を焼き尽くしました。次に気温が高かった2015年、2017年、2018年にはそれぞれ、「ヴァリー火災」(カリフォルニア州史上4番目に大規模な火災)、ベンチュラ郡の「トーマス火災」(11万4000ヘクタール消失)、そして「キャンプ火災」(同州史上最多の死者数)と「メンドシーノ・コンプレックス火災」(同州史上最大規模)が起きています。

 世界中で気温上昇が進み、生態系が乾燥していくことで、火災はより激しく頻繁となり、州の広範囲を燃やしていくことになります。ウェブメディアの「ナショナルジオグラフィック」によると、1970年代と比べて、カリフォルニア州で夏に火災が起きた土地の面積は8倍にもなっているそうです。

 また山火事シーズンも長期化しており、場合によっては75日も長引いているのだとか。「山火事シーズン」という概念自体、地球がまだ涼しかったころの古事だとも言われています。

 科学者によると、気候変動が環境にどのような影響をもたらすのか、完全には予測できないことが難しいところだそうです。
 

理由その2:強力な風

山火事 火事 山 燃えている 炎 木
JOSH EDELSON//Getty Images

 風が、火を高速で遠くまで広げる原因になっています。

 2019年10月上旬、強力な突風がカリフォルニア州に吹き荒れ、最大瞬間風速が時速128キロ(目安として、特急列車ほどの速さで、走行中のトラックの横転の可能性があるほど)にもなる可能性があると、アメリカ国立気象局が強風注意報を発表しました。この強風というのが、カリフォルニアの山火事が大規模になる大きな原因になっています。

 強風は特に、難燃剤を散布する航空機や放水するヘリコプターの飛行を妨げ、上空からの消火活動を難しくします。また、風によって火が別の場所へ運ばれ、消防隊が対処しなければならない炎が広範囲へと広がってしまうのです。

 科学ジャーナル『Environmental Letters』誌に2018年掲載された研究によると、カリフォルニア南部には2つの山火事シーズンがあるとつづっています。ひとつは6月から9月にかけてで、これは暖かく乾いた風が内陸部の火災を拡大させます。

 もうひとつは10月から4月にかけて続くシーズンで、西にあるグレートベースンとモハーヴェ砂漠からトランスバース山脈を超えて渓谷部に向かって吹く、サンタ・アナ風によって被害が拡大します。この風が要注意なのです。「ニューヨーク・タイムズ」紙によると、秋と冬に発生する火災はその他の時期の3倍の速さで拡大し、しかも人口密集地域の近くで起こっているそうです。

 南部はサンタ・アナ風が有名ですが、北部にも厄介な風がいます。これはディアブロ風と呼ばれる突風で、東からシエラネバダ山脈へ、そして海岸部へ向けて流れていきます。サンタ・アナと同様、最大瞬間風速が時速128キロになることも稀ではありません。
 

理由その3:スモーキー・ベア

熊 くま イラスト Smokey Bear
BETTMANN//Getty Images

 山火事の危険性を一般に広めるため、スモーキー・ベアというキャラクターを利用したキャンペーンはアメリカ国内で広く知られており、「Only YOU can prevent forest fires(キミだけが山火事を防ぐことができる)」というスローガンの認知度はとても高いのですが、実は逆効果となっているようです。

 アメリカ合衆国国立公園局によると、消防管理局が西部での火災を抑えすぎたせいで、生態系に火の燃料となる草木が増えすぎてしまったのだと言います。

 カリフォルニアの生態系の多くは、火災によく適応しています。在来種の植物や樹木の中には、火災によって新たな成長が促されるものもあるのです。しかしこれらはとてもデリケートなシステムで、特定のサイクルにそって行われています。例えば、チャパラル(カリフォルニア州などで見られる低木林の形態)の燃焼サイクルは30年から100年、一方ボンデローサマツはたったの数年です。強力な火災が頻繁に起こりすぎると、在来種の植物はすぐに燃えて土を固めることができない侵略的外来種の草に取って代わられてしまう可能性があるのです。

 森林火災管理チームはこの事態を改善するため、増えすぎた植物を機械的に剪定したり、何千ヘクタールもの土地を野焼きしていると、『Outside Magazine』誌は報じています。しかし国立公園局の予算の50パーセントが、西部の大火災との戦いに使われていると報告されています。そのため、そもそもその火災を防ぐために必要な森林管理に費やす人材も予算も時間も、限られてしまっているのが現状です。

 さらに、多くの人が住宅と森林が混在する「Wildland Urban Interface(WUI)」と呼ばれる地域に引っ越していることで事態が悪化しています。このような地域は火災の被害を受けたり、火災の原因を生む可能性が高いのです。しかもWUIでは火災管理チームが野焼きを実施するのも難しくなります。火が万が一制御不能になった場合、住宅が巻き添えになる危険性が高すぎるからです。

 過去数年起こっている大規模な火災には、複数の原因が絡んでいるようです。

 ひとつ確実に言えるのは、もし火災や大雨、津波、地震などの自然災害が起きてあなたのいる場所が避難区域に指定されたら、すぐに避難するのが得策だということです。そして、樹木の多い場所や乾燥した場所に訪れた際は、その場所に敬意を払い、火元の原因となるような行為はしないようにしましょう。

From POPULAR MECHANICS
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。