• 「サイエンス・アドバンス」誌に掲載された新たな研究が、恐竜が実は温かな血液が流れている生物であった可能性を示唆しています。
  • イェール大学の研究チームは、恐竜の卵の殻の原子配列を研究することで、卵を産む母恐竜の体内温度が周囲の環境より高かったどうかを測定しました。
  • この研究は、恐竜が進化して羽毛を持つようになった理由を知るための新たなヒントとなる可能性があります。

 古代史には、人類がまだまだ発見していない多くの謎があります。そして時には、こういった秘密が化石化した恐竜の卵の殻から明らかになることもあります。イェール大学の研究チームは2020年2月14日、7500万年前の卵の殻の原子配列を研究することで、「恐竜の血液が実は周囲の環境よりも高いものであった」という新たな事実(?)を発見しました。

 この研究チームは、「凝集同位体古温度測定(clumped isotope paleothermometry)」と呼ばれる方法で、卵の殻の原子構造を分析。化石化した卵の殻の酸素と炭素の原子の順序を研究することで、母恐竜の体内温度を割り出すことに成功しました。

 とは言え今回の研究は、「あらゆる恐竜の血液が温かなものであった」ということを決定的に証明するものではありません。実際にこの問題については、長年議論が続けられており、研究者たちは恐竜の血液の温度を把握しようと試みてきました。

 イェール大学の古生物学者で地質学と地球物理学の教鞭を執るピンチェッリ・ハル(Pincelli Hull)教授は、今回の研究の共著者の一人です。彼女によれば、「卵は母恐竜の体内で成長するため、古代の温度計のような役割を果たす」と言います。

 ハル教授らの研究チームは、鳥に近い恐竜、鳥から遠い恐竜を含む3つの異なる恐竜グループの卵を研究。その結果、「トロオドン」では27度、28度、38度と、体温に幅があったことが算出できたのです。

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トロオドンは、8630万〜6600万年前頃に生息していた小型の鳥のような恐竜です。

 また、マイアサウラ(白亜紀後期に生息していた大型の草食恐竜)の卵の殻の化石は、その母恐竜の体内温度が44度であったことを示唆しており、別のある卵化石からは36度という体温が算出されました。

 一方、研究チームは、これらの卵の化石が発見された場所と同じ地域で見つかった無脊椎動物の貝殻の化石も分析。現地の当時の気温を把握し、これらの恐竜の体温との比較に活用しました。

 この結果、「トロオドン」の体温は周囲の環境より10度高く、「マイアサウラ」は15度、別の卵化石の恐竜は3度〜6度高かったことが算出できたのです。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Could Dinosaurs Have Been Warm-Blooded?
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 今回の研究の筆頭著者であるロビン・ドーソン氏は、「進化論的な観点から言うと、恐竜は鳥(恒温動物)と爬虫類(変温動物)の間に位置づけられます」と説明し、「われわれの研究結果は、あらゆる主な恐竜グループが周囲の環境よりも高い体温を持っていたことを示唆するものです」と付け加えています。このため、恐竜が温血であった可能性は十分にありそうに思えます。が、確信を得るためにはさらなる証拠が必要となるでしょう。

 加えて恐竜については、温血でも冷血でもなく、「中温動物と呼ばれるこれらの中間にある」とする研究もあります。「ネイチャー」誌は2014年、恐竜が現代のマグロや大亀のように恒温動物と変温動物の間に位置づけられる可能性を伝えていました。

 とは言え今回の研究は、「恐竜が進化して、羽毛を持つようになったのはなぜか?」という別の謎を解き明かすために役立つ可能性があります。ドーソン氏は部分的な体温調節を行う能力について、「恐竜が初期に発達させた特徴であった」とし、熱を逃さないためのものと考えられる羽毛のような身体的特徴が、後に鳥が空を飛んだり、求愛行動で見せるための手段となった可能性を指摘しています。


Source /Popular Mechanics
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。