海底
SEAN GLADWELL//Getty Images


記事のポイント

  • 深海を研究しているチームが、熱水噴出孔の下に全く新しい生態系を発見しました。
  • 熱水噴出孔は長い間、研究者にとって生態学の観点から見て刺激的な環境でした。それは海底には、奇妙で極端な生物がたくさん生息しているからです。
  • 調査結果の分析はまだ進行中ですが、研究者たちは近々この発見の詳細について発表することを楽しみにしています。

熱水噴出孔の下で
見つかった生態系とは

新しいものを探しに世界へと出かけてみると、時に新しい生物種を見つけることがあります。またあるときは、新しい行動パターンや新しい動物群集構造を見つけることも…。信じられないような幸運を味方につければ、全く新しい生態系を発見できることもあります。

ある研究チームが最近、熱水噴出孔(地質学的に活発な海底に見られる、地熱で熱せられた熱水が噴出するスポット)の下を調査したところ、全く新しい海洋生態系を発見しました。熱水噴出孔は地球上でも極めて特異な生物の生息地であることは何年も前から知られていますが、それでもまだ謎があったとしても不思議ではないでしょう。

「陸上では地下の空洞に、海洋では砂や泥の中に生息する動物がいることは長い間知られていましたが、今回研究チームは初めて熱水噴出孔の下に生息する動物を探しました」

プレスリリースでそう語るのは、調査船を提供したシュミット海洋研究所のエグゼクティブ ディレクターであるジョティカ・ヴィルマーニ氏です。彼女は次のようにも述べています。

「『一つの生態系の下に、別の生態系が存在している』という実に驚くべきこの発見は、『生命は信じられないような場所にも存在する』という新たなエビデンスを示しています」

研究者たちは1カ月に及ぶ調査で、水中遠隔操作ロボットを使い熱水噴出孔周辺の地殻をこじ開け、その下の洞窟やトンネルに何が隠れているか? を調べました。そこで彼らが発見したのは、チューブワームから巻き貝など、そして化学合成細菌(光を利用することなく、無機物を処理してエネルギーを生成する細菌のこと)に至るまで…。さまざまな生命体が大量に生息していたことが確認されました。

熱水噴出孔の下は
生物たちが移動する
道にもなっている

研究チームは、「これらの生物はこのトンネル網に生息しているだけでなく、トンネル網を使って海底の下を安全に移動している」と考えています。

中でも興味深いのが、チューブワームです。チューブワームは熱水噴出孔周辺では長い間目撃されていますが、幼生を見つけるのは難しいとされています。そこで研究者たちは、「チューブワームが新しいコロニーをつくるために、地下のトンネルを通って他の場所に移動できるかどうか?」をテストすることにしました。

今のところ研究チームは、「チューブワームの幼生が地下を移動して育ち、成長すると地表に飛び出してくる可能性はかなり高い」と考えています。ですが、このテスト結果はまだ出ていません。研究者たちは海底にいる生物のサンプルを採取するために、海底にできた地殻の亀裂上にいくつかメッシュボックスを置きました。そうして手に入れたサンプルについては、まだ研究中という状況です。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Trans-Habitats (ft. Max Hooper Schneider) | Artist-at-Sea
Trans-Habitats (ft. Max Hooper Schneider) | Artist-at-Sea thumnail
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ですが、このトンネルを利用した移動とは関係なく、今回の発見は深海の生命を研究している人々にとって、重大かつエキサイティングな発見となる可能性を秘めています。分析はまだ進行中であり、研究結果はまだ発表されていません。が、研究チームは「近々、今回の発見について発表したい」と考えているようです。発見の全容を世界と共有する準備が着実に整いつつあります。

調査の主任研究者であるモニカ・ブライト氏は、プレスリリースでこのように述べました。

「熱水噴出孔には、二つのダイナミックな生態系が存在します。そして、下から流れてくる熱水と上から供給される海水中の酸素によって、熱水噴出孔周辺とその下に生息する動物たちは一体となって繁栄しているのです。今回の発見によって、深海の熱水噴出孔に生息する動物の生態についての理解が大きく広がりました」

source / POPULAR MECHANICS
Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です